再生二期作に「早植え+自脱型コンバイン」で挑戦! 何俵を上乗せできたのか? 【千葉県東庄町・いなさくたかやすの事例・後編】

米の「再生二期作」について、耳にしたことのある方も多いでしょう。稲の“ひこばえ”を育てて二度収穫する、省力型の栽培技術です。

米農家を取り巻く環境は、年々厳しさを増しています。既存のコスト削減や大規模化だけでは、未来を切り拓くことは難しい……そんな閉塞感を打ち破る「攻めの一手」として意欲的な農家が注目しているのが「再生二期作」です。前編では、2025年の実際の農作業と収穫した米の品質についてうかがいました。

前編はこちら
二度目のお米はおいしい? 農家自身が語る「再生二期作」の食味と成果 【千葉県東庄町・いなさくたかやすの事例・前編】

収穫後の株から“ひこばえ”を育てて二度目の収穫を得るこの技術は、育苗・移植の手間がなく、収穫物を上乗せできる可能性があります。農研機構の試験圃場では、「にじのきらめき」を用いて10aあたり約1tを達成したと報告されています。

しかし、それはあくまで試験圃場での話。「自分の地域で、やり方で、本当にうまくいくのか?」「自脱型コンバインでやったらどうなる?」などなど、再生二期作に期待しつつも、実践するには不安があるという農家も多いのではないでしょうか。

そんな今、千葉県香取郡東庄町(とうのしょうまち)で株式会社いなさくたかやすを経営する髙安さんが自、脱型コンバインと最先端の技術を融合させて再生二期作に挑戦し、最小限の手間で収穫量を上乗せすることに成功しました。

後編では、千葉県の篤農家オプティムと協力して初めて再生二期作に挑んだ、具体的な内容と栽培の様子、そして気になる“どれだけ上乗せできたのか”をレポートします。

株式会社いなさく たかやす 代表取締役の髙安敏郎さん

早場米産地で挑戦 ──東庄町という条件


髙安さんが営農している東庄町は、利根川水系の豊かな水に恵まれた、県内有数の米どころ。関東でいち早く収穫期を迎える「早場米地帯」としても知られ、「コシヒカリ」を中心に、千葉県産品種の「ふさおとめ」や「ふさこがね」が作付けされています。

「いなさく たかやす」の圃場面積は約60ha。従業員3名と家族で運営しています。今回再生二期作に挑戦したのは、早場米として8月頃には収穫できる「ふさおとめ」の圃場でした。

2026年産(令和8年産)では、農研機構が開発した多収品種「にじのきらめき」を35ha作付けしており、これは髙安さんが知る限り県内最大規模だといいます。そのほか、「ふさこがね」を15ha、自家消費用の「コシヒカリ」を7ha、さらに「ふさこがね」の湛水直播(リゾケア使用)を3haで栽培しています。

いなさくたかやすが管理している圃場の地図(© アグリノート株式会社)。全体で約60haだが270の圃場に分散しており、まとめることは難しいのが現状だ(写真:SMART AGRI編集部)


再生二期作の成立条件は「早植え」と「高刈り」


髙安さんの取り組みを見ていく前に、まずは農研機構が示している再生二期作の「二つのポイント」をあらためて整理しておきましょう。

ポイント1:早植え(目安は4月下旬まで)
早く植えることで一期作目の収穫が早まり、二期作目の生育期間を十分に確保できます。また、収穫時の株にデンプンなどの栄養が多く蓄積されるため、ひこばえ(収穫後の株から伸びる芽)の生育を後押しします。

ポイント2:高刈り(刈取高40cm程度)
より多くの葉や栄養分を株に残すことで、二期作目の生育を促します。

ただし、これらの条件を実際の現場で満たすことは簡単ではありません。この二つのポイントは、裏を返せば4月の早植えが可能な気候条件と、40cm程度の高刈りを実現できる収穫体系が求められることを意味します。

同農場で使用しているコンバインも一般的な水稲用です。こうした条件をオプティムの支援により乗り越えようと、早場米産地での「早植え」と「自脱型コンバイン」での挑戦に踏み切ったのです。

とはいえ、試験圃場と実際の営農現場では条件が異なります。再生二期作の実践にあたっては、いくつもの課題に直面しました。


理論通りにはいかない「早植え」と「自脱型コンバイン」での実践


髙安さんが再生二期作に初挑戦したのは2025年のこと。面積は10ha、品種は「ふさおとめ」でした。早植えという大きな挑戦に加え、実証では追肥のタイミングによる違いを探る検証も行われました。

一期作目の収穫日を8月12日に設定し、下記の3つのパターンで追肥を実施しました。

再生二期作 施肥量比較

品種:ふさおとめ
圃場・追肥量:異なる区画に異なるタイミング・施肥量で比較
A区:収穫前(一期作中)のみ追肥(収穫13日前に窒素3kg/10a)
B区:収穫後(二期作中)のみ追肥(収穫8日後に窒素3kg/10a)
C区:収穫前後に追肥(収穫13日前に 1.5kg/10a、収穫8日後に 1.5kg/10a)

(イラスト:SMART AGRI編集部、作成:Gemini)

「再生二期作に挑戦したとはいえ、それだけに時間を割くわけにはいきません。一期作目の収穫の時期は、他の圃場の稲刈りで一番忙しい時期と重なってしまうからです。そのため、追肥はオプティムさんにドローンでやってもらいました。一番助けてほしいタイミングで手伝ってもらえた。それが大きかったですね」

再生二期作の取り組みでは、この時期の施肥は追肥の効果を検証するための重要な工程でもあります。今回の実証では、オプティムがドローンによる追肥を担ったことで、施肥時期や施肥量を正確に管理しながらデータを取得することができました。

一方で、大きな課題となったのが、自脱型コンバインによる「高刈り」でした。再生二期作では、収穫後の株から伸びる芽の生育を促すため、通常より高い位置で稲を刈り取ります。しかし、自脱型コンバインでの高刈りは未経験の作業でした。

「正直、怖かったですね。自脱型コンバインで高刈りをすると、藁が短くなって機械の中で詰まるリスクがあります。それに、高く刈ろうとすると収穫できるはずの穂まで残してしまうかもしれません。40cmほど残すのがいいとわかってはいたのですが、現実的にそこまで長く残すことは無理でした。

できる限り高く刈ったつもりでも25cmくらいでしたし、今回の圃場のうち最後に高刈りしたところで思い切って攻めても、30cmが限界でした」

高刈り後の茎の比較。缶コーヒーは約10cm。自脱型コンバインで40cmを残すことの難しさは米農家ならわかるだろう(写真:いなさくたかやす)
この言葉には、現場で判断することの難しさが率直に現れています。手持ちの設備と現実的なリスクのなかで、どこまで実践できるのか。その試行錯誤が伝わってきます。

そこで、高刈り後の管理についても聞いてみました。前述のとおり、防除については行わず、雑草が出てもそのままにしていましたが、実は水管理もしていなかったといいます。

二期作目の水管理と除草はしていません。当地では収穫前後にはもう地域の水が止まってしまうんです。再生二期作を実施した圃場の場所は、仮に許可を得られたとしても、ポンプで水を汲み上げることもできないような場所にあり、水管理はやりたくてもできないのです。

そして、今回は除草も見送りました。コストと作業負担を抑えた状態で、まず収量を確認することを優先したためです。肥料代と作業委託費を考えると、最低でも一定の収量を上乗せできないと赤字になってしまいます。まず追加の費用をかけず、最低限の作業だけで収量を確認する方針でした」


二期作目で得られた約79俵は「十分に満足できる結果」


こうして大きな手間をかけないまま、11月10日、二期作目を収穫しました。一期作目で30cmの高刈りをしたため、二期作目は短稈の稲を刈ることになりましたが、順調に生育した圃場での収穫はスムーズにできたといいます。

最終的に、再生二期作を実施した面積は10ha、追肥を実施した区画では合計78.7俵を収穫しました。一方、一期作目の収穫量は1564俵でした。

「驚いたことに、今回再生二期作を実施したどの区画からも収穫できました。ただ、一期作目に倒伏した場所では収量が特に低くなりました。それでも、収量を上乗せできるなら採算が合います。再生二期作は、やる価値がある、そう判断しました。正直、安心しました」

ちなみに、追肥のタイミングを変えた3つの区画(A〜C区)では、収量に大きな差は見られなかったとのこと。しかし、生育の様子については違いを感じたといいます。

「収穫前に追肥したA区は、一期作目の稲が最後に少し暴れたというか……。品質に影響が出そうなばらつきが見られました。それに比べて収穫後に追肥したB区では、二期作目の稲が素直にキレイに育ってくれた印象です。初回を終えた段階では、収穫直後の施肥の方がいいのかな、と感じました。品質については、二期作目は少し小粒ではありましたが、普通に良くできたお米です」

今回の実証では、早植え、自脱型コンバインによる30cm前後の高刈り、水管理・追加除草なしという条件で再生二期作を成立させることができました。また、追肥のタイミングによる収量差は大きくなかったものの、生育の様子からは収穫後の追肥に手応えを感じる結果となりました。

これらは、実際の営農現場で試行錯誤を重ねたからこそ得られた貴重な知見といえるでしょう。


再生二期作は飼料用米への拡大も視野に


初挑戦を終えた髙安さんは、安堵しつつも、すでに2026年の再生二期作の挑戦を見すえています。

農研機構の実証データでは、再生二期作による収量は全体で1.5倍と言われていますが、僕の初挑戦ではそこまでは届きませんでした。それでも、水管理や追加の除草を行わず、追肥だけで収穫量を上乗せできたのは大きかったですね。十分満足できる結果でした。

もちろん、まだまだ改善の余地はあります。2026年は追肥の量やタイミングをさらに検証したいですね。また、倒伏に強く、農研機構の実証でも使われている『にじのきらめき』での再生二期作にも挑戦してみたいと思っています。面積も拡大して取り組む予定です」

2026年の種籾を前に語る髙安さん。2度目の再生二期作には農研機構と同じ「にじのきらめき」を使う(写真:SMART AGRI編集部)

さらに、再生二期作の可能性についても聞いてみました。話は主食用米だけでなく、かつて栽培していた飼料用米にもおよびます。

「再生二期作という技術は将来、飼料用米にも応用できると考えています。

主食用米の米価が高騰するまで、当地では飼料用米向け品種の『アキヒカリ』も栽培していました。その補助金を上限まで受けるには、10a当たり13俵という高い収量目標があったんです。

もし再生二期作で収量をさらに上乗せできれば、品質よりも収量が重視される飼料用米では、大きな武器になるかもしれません。実務的な課題はありますが、可能性を探りたいですね」

今回、手間を抑えながら再生二期作に挑戦できた背景には、オプティムの支援があったと振り返ります。

スマート米のような安定的な販売先があるからこそ、今回安心して再生二期作に挑戦できました。それに、普通ならば踏みとどまるところでしたが、オプティムが販売のリスクを共有してくれたことは、スマート米基準の管理と追肥の施肥を含めて、本当に心強かったです」

今回の取り組みからは、農家が単独で課題に向き合うだけでなく、技術や販売面で支援するパートナーと連携することの価値もうかがえます。

東庄町で始まった再生二期作の挑戦は、まだ始まったばかりです。しかし、髙安さんが示したように、再生二期作は決して特別な技術ではなく、既存の水稲栽培の延長線上で検討できる選択肢でもあります。

この事例が、再生二期作に関心を持ちながらも一歩を踏み出せずにいる生産者にとって、新たな挑戦のきっかけとなれば幸いです。

ちょうど2026年米の育苗も進んでいた。苗の良し悪しも再生二期作にとって重要になる(写真:SMART AGRI編集部)

参考資料
(研究成果)良食味多収水稲品種「にじのきらめき」を活用した 再生二期作による画期的多収生産の実現
【特集】水稲栽培のノウハウ集
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。