“地域の宝”をAI画像分析や収穫ロボットで存続させる ~山形大学・片平光彦教授(前編)
地域課題の解決にスマート農業を応用する動きが全国で広がっている。山形県鶴岡市に拠点を置く山形大学農学部は、そんな研究機関の一つ。ドローンやロボットによる生育診断や可変施肥、AIを使った枝豆の選別やニワトリの個体管理など、多彩な研究がなされている。
そのなかで、今回は食料生命環境学科の片平光彦教授に、地域密着型の研究についてうかがった。
片平光彦(かたひら みつひこ)
山形大学 農学部 食料生命環境学科 教授

私はもともと秋田県農業試験場で研究員をしていたのですが、そこで枝豆の選別に手間がかかることを知りました。
枝豆の栽培は播種(はしゅ)から収穫まですべて機械化されていますが、収穫後の着色や割れ、奇形、身の入りが悪いといったさやを取り除く作業は人がしています。10kgの枝豆を選別するのに8時間かかるんです。
そこで、画像処理を使って機械で選別できないかと、2004~2007年に農水省の予算をいただいて、メーカーと一緒に画像処理の技術を使って選別する選別機の開発をしました。傷の緑色と黒色を分離して、それぞれの色の割合で傷物かどうかを判断し、さやのわきから光を当てて影の量を測り、厚みと粒の入っている数をカウントしました。
ただ、2007年の時点では能率と精度に課題があり、商品化には至りませんでした。豆をきれいに整列して流さなければならず、かつ良品と不良品の判断の精度が人に比べてずいぶん劣っていたんです。
その後、2009年に山形大学に移り、鶴岡市で高性能な枝豆の選別機を作っている株式会社ガオチャオエンジニアリングと連携し、開発を進めています。画像処理に加え、AIを使えば反応が良くなるのではないかと考えています。選別率は、80%程度に引き上げる見込みです。
10年前はまだ人がいたので、人力で選別できたんですね。でも10年経って選別してくれる人がいなくなったから、選別機が売れるようになったのだと感じます。庄内地方の特産であるだだちゃ豆は、香りも味もいい。ずっと地元で作られてきたそういう食材がなくなることは避けたいと思っています。
“地域の宝”をなくしたくない。そういう問題意識で研究しているものに、枝豆の選別機のほかに、鶴岡市の温海(あつみ)地域の「温海かぶ」があります。
そのなかで、今回は食料生命環境学科の片平光彦教授に、地域密着型の研究についてうかがった。
片平光彦(かたひら みつひこ)
山形大学 農学部 食料生命環境学科 教授

枝豆10kgに8時間かかる選別を、画像処理とAIで自動化
――まず、片平教授が農業ICT、農業IoTを研究するようになったきっかけは何でしょう。私はもともと秋田県農業試験場で研究員をしていたのですが、そこで枝豆の選別に手間がかかることを知りました。
枝豆の栽培は播種(はしゅ)から収穫まですべて機械化されていますが、収穫後の着色や割れ、奇形、身の入りが悪いといったさやを取り除く作業は人がしています。10kgの枝豆を選別するのに8時間かかるんです。
そこで、画像処理を使って機械で選別できないかと、2004~2007年に農水省の予算をいただいて、メーカーと一緒に画像処理の技術を使って選別する選別機の開発をしました。傷の緑色と黒色を分離して、それぞれの色の割合で傷物かどうかを判断し、さやのわきから光を当てて影の量を測り、厚みと粒の入っている数をカウントしました。
ただ、2007年の時点では能率と精度に課題があり、商品化には至りませんでした。豆をきれいに整列して流さなければならず、かつ良品と不良品の判断の精度が人に比べてずいぶん劣っていたんです。
その後、2009年に山形大学に移り、鶴岡市で高性能な枝豆の選別機を作っている株式会社ガオチャオエンジニアリングと連携し、開発を進めています。画像処理に加え、AIを使えば反応が良くなるのではないかと考えています。選別率は、80%程度に引き上げる見込みです。
10年前はまだ人がいたので、人力で選別できたんですね。でも10年経って選別してくれる人がいなくなったから、選別機が売れるようになったのだと感じます。庄内地方の特産であるだだちゃ豆は、香りも味もいい。ずっと地元で作られてきたそういう食材がなくなることは避けたいと思っています。
焼畑農法で作る温海カブを、収穫ロボットで省力化
――地方にいるからこそ見えるニーズや、感じることがあるのですね。“地域の宝”をなくしたくない。そういう問題意識で研究しているものに、枝豆の選別機のほかに、鶴岡市の温海(あつみ)地域の「温海かぶ」があります。
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【コラム】スマート農業研究第一人者に聞く「スマート農業最前線」
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