秋冬だいこんの又根・腐敗を防ぐには? 圃場の排水対策と均平化・傾斜均平の効果

秋冬だいこんは、8月後半〜9月にかけて種まき・栽培が始まり、10〜11月に収穫を迎える、まさにこれから最盛期を迎える野菜です。

そんなだいこんを育てる上で気をつけたいのが、まとまった雨の後になかなか水が引かない圃場。水が長く残れば土壌中の酸素が不足し、根の呼吸が弱って、根腐れや茎葉のしおれを招くことがあります。

だいこんは、主根がまっすぐ伸びながら肥大する作物です。そのため、水はけだけでなく、根が伸びる先の土が十分にほぐれているかも商品性に関わります。

この記事では、だいこんの品質を左右する又根・腐敗を防ぐための排水対策についてご紹介します。



又根と腐敗はなぜ起きる?根の周りで起きていること


近畿農政局の「だいこん栽培暦(秋まき)」では、耕土が深く、排水のよい圃場を選び、排水不良地では排水に手を入れるよう示されています。

いきなり大掛かりな工事をする必要はありません。まずは根が育つ範囲の土をほぐし、高畝や明渠で表面の水を逃がす。それでも乾きが遅ければ、さらに下の硬い層や暗渠へ目を向ける、という順序です。

二股、三股にわかれる「又根」という現象は、排水不良だけで起きるわけではありません。根が伸びる途中に大きな土塊や石があったり、土が硬く締まっていたりすると、主根がまっすぐ下へ伸びにくくなります。その結果、規格外品とされてしまい、商品化率を落とす原因になります。

農林水産省近畿農政局の「だいこん栽培暦(秋まき)」では、十分に腐熟していない有機物や肥料濃度が高い場所も岐根などの原因になるとして、堆肥を十分に腐熟させた完熟堆肥を使うこと、表土を細かく砕き、主根の先端がしっかり伸びていく環境を整えることを示しています。播種前の土づくりは、水はけだけを見ればよいわけではないということです。

一方、水が抜けにくい圃場などで発生する「腐敗」は、より直接的に収穫物を失うというリスクであり、最悪食べることもできなくなってしまいます。高温・多湿な環境そのものが根の負担になりますし、長く滞水すると土の中の酸素が減り、根の生育が鈍ったり、根腐れを起こしたりすることがあります。

ただし、だいこんの腐敗をすべて水はけの悪さだけで説明することはできません。例えば軟腐病では、根などにできた傷から病原菌が入り込み、根部を腐敗させます。近畿農政局の栽培暦でも、土寄せが遅れて細根を傷めると、軟腐病菌の侵入を助長するとしています。

又根や腐敗が目立った圃場では、まずは土の硬さ、砕土、堆肥、施肥、根の傷、病害を一つずつ見直していきます。そのうえで、雨のたびに同じ場所へ水が残っているようなら、水の抜け方にも目を向けたいところです。


最初に確認したい表面排水|明渠・高畝・排水口


圃場の水の動きを見るには、まとまった雨が降った後がわかりやすいでしょう。畝間や枕地、農機のわだちなどを歩くと、水が集まりやすい場所が見えてきます。

表面に水が残っている場合は、最初に見るのは明渠と排水口です。

明渠は、圃場にたまった水を集めて外へ逃がすための溝のこと。土が入り込んだり、降雨で崩れたりすると、水の流れは鈍くなります。排水口だけでなく、その先の排水路まで水が抜けていることが前提です。

水はけが悪い圃場であれば、十分に耕して土をほぐしたうえで畝を高くする「高畝」という方法も使えます。根が育つ位置を周囲より上げられるため、過湿の影響を受けにくい根域を確保しやすくなります。

ただし、高畝にしただけで水の影響が消えるわけではありません。畝から落ちた水は畝間へ集まるため、その水を明渠や排水口まで流す道も必要になります。「根を高い位置に置くこと」と「余分な水を外へ出すこと」はセットと考えるとわかりやすいでしょう。

さらに、明渠から水が流れていても、一部だけに水が残る圃場では、圃場の高低差が原因になっていることもあります。周囲より低い部分へ水が集まるようなら、凹凸をならす、排水路へ向かう勾配をつけるなど、表面の水が流れる向きを整える方法もあります。

まずは通常の耕起で根が伸びられる土をつくり、高畝にして、畝間の水を圃場外へ逃がす。そこで雨後の乾き方が変わるのであれば、地下まで大きく手を入れなくても済むかもしれません。

同じ圃場でも、水の残り方は一様ではありません。雨のたびに同じ場所へ水がたまるなら、スマートフォンで位置や水のたまり方を撮影しておくのも一案です。播種後に生育がそろわなかった場所や、収穫時に又根などの形状不良が目立った場所と照らし合わせれば、次作で手を入れたい場所も絞りやすくなります。



水が抜けない原因が地下にある場合の改善方法


十分に耕して高畝にし、明渠や排水口も整えた。それでも雨の後になかなか圃場が乾かないなら、普段耕している土より下に硬い層ができている可能性が疑われます。

長年の耕うんや大型農機の走行などによって土が締まると、硬い「耕盤層」ができることがあります。そこで水の浸透が止まれば、雨水が下へ抜けにくくなるだけでなく、だいこんの根も下へ伸びにくくなります。

実際のだいこん産地でも、こうした例が報告されています。千葉県の「安定した露地野菜の栽培に向けて~農業機械による物理性改善の実施~」では、市原市深城のだいこんを中心とする露地野菜産地で、一部の圃場に長時間の滞水や根部の形状不良が発生し、収量・品質の低下が問題になっていました。

排水の悪い圃場を調べたところ、地表から20~30cmの位置に、土壌硬度1500kPa以上の硬い層が続いていました。同資料では、1500kPa以上になると根の伸長や水の浸透を妨げるおそれがあるとしており、この圃場はほかの圃場より降雨後の排水にも時間を要していました。

この例は「排水不良になると収量が何%減る」というものではありません。ただ、長時間の滞水や形状不良による収量・品質低下が問題になっていた圃場で、根と水の動きを妨げる硬い層が実際に測定された例です。

このように高畝や表面排水を整えても毎回乾きが遅いなら、普段耕している範囲より下も見てみます。土を一部掘って断面を見る、硬さを測るなど、どの深さで水が止まりやすいのかがわかれば、その後の作業も選びやすくなります。

硬い耕盤層が見つかった場合は、深耕やサブソイラー、パラソイラーなどでその層を破砕する方法があります。同事例では、パラソイラー施工後に土壌硬度が低下し、降雨後の滞水時間が以前より短くなったとの報告がありました。

とはいえ、硬い層を壊せば、それだけで水が抜けるとは限りません。下へ通った水の行き先がなければ、圃場内に残ったままです。地中に排水管などの暗渠が入っている圃場なら、実際に水が流れているかも見ておきます。補助暗渠を入れるときも、既存の暗渠や明渠へ水を落とせる配置が前提になります。

また、パラソイラーなどで土の透水性を高めると、その後の作付けにも影響します。翌年に水田へ戻す圃場などでは、かえって漏水が増えるおそれがあるため、畑作中の水はけだけを見て施工を決めるのは避けたいところです。

通常の耕起と高畝、明渠の整備で水が早く抜けるようになったなら、心土破砕(しんどはさい)まで行わなくてもよいケースもあります。表面だけで直せるのか、それとも地下まで手を入れるのか。 その違いを見分けれられば、余分な作業やコストも抑えられます。



排水不良は、収穫してから気づく前に見直す


又根や腐敗は収穫して初めて発覚することが多いですが、収穫する前から圃場には変化が表れています。例えば、雨の後にいつまでも水が残る、毎回同じ場所だけ乾きが遅い、といった様子も手掛かりの一つです。

目指したいのは、圃場を必要以上に乾かすことではありません。だいこんの根が伸びられる土をつくり、余分な水が長く居座らない圃場に近づけることです。

まずは耕起、高畝、明渠で根域と水の出口を整える。それでも乾きが遅ければ、地下の硬い層や暗渠へ目を向ける。雨後の圃場と収穫した根を照らし合わせながら、その圃場にどこまで手を入れるかを決めていくことが、収量と品質を守る一歩になります。

雨のたびに圃場のくぼみに水が残る、明渠や排水口まで水が流れにくいといった場合には、圃場面の高低差を整える「均平化」や、排水先に向かって緩やかな勾配をつける「傾斜均平」も選択肢になります。レーザーレベラーやGPSレベラーなどを使えば、圃場全体の凹凸を整えながら、水が流れる方向をつくることができます。

ただし、どこへ水を流すのか、どの程度の勾配をつけるのかは、圃場の形状や排水路の位置によって異なります。専用機械を自前で用意したり施工したりすることが難しい場合には、圃場の状況を確認したうえで、均平化・傾斜均平の作業を専門事業者へ委託する方法も検討してみてはいかがでしょうか。

圃場の水たまり・高低差が気になる方へ
雨のたびに同じ場所へ水がたまる、圃場の凹凸によって排水しにくい――。
そんな場合は、圃場表面の水の流れを整えることも選択肢の一つです。
専用機械を使った均平化・傾斜均平は、委託することもできます。
▶「アグリポン」 均平化・傾斜均平の作業委託について詳しく見る相談・問い合わせ(フォーム)


参考資料
農林水産省 近畿農政局「だいこん栽培暦(秋まき)」
千葉県「露地野菜における排水対策について」
千葉県「安定した露地野菜の栽培に向けて~農業機械による物理性改善の実施~」


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。