水田の均平化、レベラーだけでいい? プラウ・ハローが必要な圃場の見分け方

稲刈り後の水田で高低差が気になったとき、選択肢のひとつになるのがレベラーによる均平化です。田面を平らにすることで、水深をそろえやすくなり、特に代かきを行わない乾田直播では播種後の水管理や苗立ちにも関わります。また、ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)対策としての浅水管理にも効果的と言われています。

参考記事
水田の均平化でジャンボタニシ被害はどれくらい減る? 作業委託で実現した均平化の成果 【千葉県長生村・木島さんの事例・前編】
水田の均平化を“委託”してわかったこと──浅水管理と作業負担、ジャンボタニシ被害はどう変わった? 【千葉県長生村・木島さんの事例・後編】
薬剤に頼らないジャンボタニシ対策──「均平化」で初期生育を守ろう

ただし、硬い田面や大きな土塊が残った圃場に、そのままレベラーを掛ければいいとは限りません。圃場の状態によっては、その前後にプラウやチゼル、ハローといった農機による耕起・整地も必要になります。

プラウやバーチカルハローは畑作で使われる場面も多い作業機で、水稲でいつでも使うものではありません。

今回の記事では、水田を均平化するとき、どんな場合にこうした作業機が必要になるのかを整理します。


「この水田に均平が必要か」を検討する指標とは?


水田でレベラーを使う目的は、高い場所の土を低い場所へ移し、田面の高低差を小さくすることです。

高低差が大きいと、同じ水位まで入水しても場所によって水深が変わります。特に乾田直播では、低い場所に水が集まることが苗立ちに影響する場合があります。農研機構でも、乾田直播の圃場準備では均平を重要な工程として位置づけています。

だからといって、すべての水田で毎年レベラーを掛ける必要はありません。

  • 「毎年同じ場所だけ水が深い」
  • 「雨後に特定の場所だけ水が残る」
  • 「合筆後に高低差が気になる」

といった場合は、均平を検討する材料になります。

一方、圃場全体がなかなか乾かない場合は、高低差ではなく排水口、明渠・暗渠などが原因になっていることもあります。まず、高さの問題なのか、水が抜けない問題なのかを切り分けることが先決です。
圃場を整えるための主な農機。トラクターなどに接続して利用する(イラスト原案:SMART AGRI編集部、作成:ChatGPT)

硬い田面や残渣があるなら「プラウ・チゼルプラウ」で土を動かす


レベラーは土を移動させて高低差を整える機械です。そのため、地表が硬く締まっていたり、残渣が多く残っていたりする圃場では、先に耕起して土を動かせる状態にする必要があります。

そこで使われる選択肢が、プラウ・チゼルプラウです。


プラウには土を反転させる機能があり、前作の残渣を土中へすき込むこともできます。一方、チゼルプラウは土を大きく反転はさせず、土壌を破砕してほぐす役割を果たします。

農研機構の「プラウ耕乾田直播体系」でも、前年秋から冬にプラウやチゼルプラウなどで耕起し、圃場を乾かしてから次の圃場準備へ進む方法が示されています。

つまり、“水稲だからプラウを使う”のではなく、均平や乾田直播に向けた圃場準備として、耕起する必要があるときに使うと考える方がわかりやすいでしょう。


大きな土塊が残っているなら「ハロー」で整える


プラウなどで耕起すると、大きな土塊や凹凸が残ります。そのままではレベラーで土を動かしにくかったり、その後の播種床づくりに影響したりするため、ハローなどで砕土・整地するのが有効です。


バーチカルハローは、その選択肢のひとつ。縦軸で爪を回転させ、表層の土塊を砕く作業に使われます。

ここでも、「プラウの次は必ずバーチカルハロー、その次はレベラー」と決まっているわけではありません。

例えば、農研機構が紹介する乾田直播の体系には、「プラウ耕→整地→均平」と進む例がある一方、栽培体系によっては均平後にさらに砕土・鎮圧して播種床を仕上げています。

見るべきなのは農機の使用順ではなく、次の作業に進める圃場になっているかどうか。均平前なら「レベラーで土を動かせるか」、均平後なら「播種に適した表面になっているか」という点です。

圃場の状態に応じて、必要な整地作業を加えるために、適切な農機が使われています。


「レベラー前のプラウ・ハロー」は必要な圃場だけ


ここまでを整理すると、水田の均平化ではレベラーだけを使えばいいのではなく、その時点の田面がどんな状態かに応じて準備することが大切です。

実際に、畑作後の圃場を水田へ戻す際の農研機構の作業例には、「水田プラウによる耕起→パワーハローによる砕土→レーザー均平機(レベラー)による均平」といった流れがあります。



一方で、すでに土が動かせる状態で高低差だけを直したいなら、同じ前工程が必要とは限りません。

圃場ごとに考えると、次のようなケースがあります。

圃場・作業の状態 考えたい作業
高低差があり、水管理などに支障が出ている レベラーによる均平化
均平したいが、田面が硬く土を動かしにくい プラウ・チゼルなどによる耕起
耕起後に大きな土塊が残っている ハロー・バーチカルハローなどによる
砕土・整地
均平後、そのままでは播種しにくい 播種体系に合わせて砕土・鎮圧などを追加
圃場全体が乾きにくい レベラーより先に排水条件を確認
高低差や次作への支障がない 無理に作業を追加しない

均平したい圃場を見て、その前後に何が必要なのかを判断し、必要な機械だけ使う。 これが基本です。


農機を使うことを目的にせず、次作に必要な圃場をつくる


稲刈り後に確認しておきたいのは、「どの機械を掛けようか」ではなく、「来作までにこの水田のどこをどう直したいか」です。

高低差を直す必要があるならレベラー、均平化するために耕起が必要ならプラウやチゼル、大きな土塊を砕く必要があればハローなどを活用します。

逆に、今の圃場で次作に支障がないなら、「無闇に作業を増やさない」という判断もできます。すべての圃場を完璧な状態に保つことは至難の業です。課題がある圃場にだけ、必要な作業を行えばいいのです。

とはいえ、その作業のためだけに新しい農機を購入する必要はありません。利用頻度や作業面積によっては、共同利用やレンタル、作業自体を丸ごと委託してしまうことも選択肢になります。

圃場の整備は、防除や収穫のように時間に追われたり、突発的な作業が発生したりするものではありません。だからこそ、機械ありきではなく、圃場の状態から必要な作業を選ぶ。

そう考えると、水田均平のためにどこまで準備すべきかも判断しやすくなるでしょう。


必要な圃場だけ、均平や耕起を委託する選択肢も
「均平したい圃場はあるが、レベラーを持っていない」
「必要な年だけ作業を頼みたい」という場合は、農作業委託という方法もあります。

スマート農作業代行サービス「アグリポン」では、水稲圃場の均平化や耕起などの作業を依頼できます。
機械を購入する前に、必要な圃場・必要な工程だけ外部へ任せる方法も含めて比較してみてください。
▶ アグリポンの農作業代行サービスを確認する相談・問い合わせ(フォーム)


参考資料
農研機構「乾田直播栽培技術マニュアル-プラウ耕・グレーンドリル播種体系-」
農研機構「プラウ耕・グレーンドリル播種方式の寒冷地向け水稲乾田直播体系」
農研機構「水稲乾田直播栽培の目標均平度とレーザー均平機の作業法」


【特集】水稲栽培のノウハウ集
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。