スマート農業で病気にならない健康な体に!【渡邊智之のスマート農業コラム 第10回】

現在世間を騒がせている新型コロナウイルスなどによる感染症は、「手洗い」や「マスクの着用」が予防の数少ない手段であるが、生活習慣病など慢性疾患を含むその他多くの疾患は、日々の食事の積み重ねが発症原因の一つになっているのは容易に想像がつく。

そう考えると、スマート農業の実践は、農業分野だけでなく、医療・福祉といった異業種との連携に関係する事例についても考えられる。

「食べる」という行為は、人の生活を営む上で欠かせないことである。単に活動に必要なエネルギーを得るだけではなく、病気にならない体、病状を緩和し回復につなげるという力も持っているからだ。


「医食同源」という言葉がある。小学館の「大辞泉」によると「病気を治療するのも日常の食事をするのも、ともに生命を養い健康を保つために欠くことができないもので、源は同じだという考え。」と記載されており、「食べ物が毒にも薬にもなる」と解釈できる。

日頃皆さんは、食事を摂る際に何に気を使われているだろうか? 特に男性は、コストや、スピードを優先し「お腹に入ればなんでも良い」という感覚で、一食一食を意識して食事を選択している方はほとんどいないのではないだろうか? 結果的に健康によくないものを食べては体調を崩し、薬を飲んで治すというサイクルを生んでいる可能性がある。

昨今「高リコピントマト」のように、野菜のある成分を高めた機能性野菜が市場に出ている。リコピンの効果・効能は血糖値を下げる、動脈硬化の予防、喘息の改善、美白効果、ダイエット効果などがあると言われている。カゴメ株式会社が長年のトマト生産のデータ元に研究され作り上げたのである。

今まで「食べ物は薬にもなる」という話は「迷信」のレベルを打開できずにいたが、将来的には、農業生産物それぞれの品種の特性をAIを活用したゲノム編集などによって高め、今までになかった薬の代替にもなりえる農業生産物が作られる可能性も出てきている。このように農が科学されることによるメリットは無限にある。

これらの研究がさらに進み、個々の食事のデータと病気の発症データを結びつけたり、ある食べ物を食べ続けることにより病気の症状が緩和したりすることが証明されれば 、食品が薬の変わりになるということを裏付けることができる。その上で、知見がデータベースに蓄積されることで、効用が明らかになり、新薬として許認可にかかる期間中に食事として摂取することで助かる命も増え、さらには大幅に薬を減らすことにもなる。結果的に国家としての医療費の削減にも貢献することを願う。


「スマート農業×バイオテクノロジー」により、飢餓をもなくす

最近、多くの企業が何かの判断をする時に、SDGsに寄与できるかどうかによって、各種判断をし始めている。

SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択された、開発途上国のみならず、先進国自身も取り組む2016年から2030年までの国際目標「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」のことであり、持続可能な世界を実現するための17のゴール、169のターゲットから構成されている。これは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載されている。

この中で、食・農業に関係するものは、世界から飢餓をなくす「ゼロハンガー」として設定されている。

今後、世界の総人口は爆発的に増加し、2050年には98億人になると予想されている(国連経済社会局 人口部の統計データより)。現時点においても、世界で飢餓に苦しむ人口は8億1500万人(世界人口の11%)であり、今後さらなる増加が強いられるのである。

さらに、わが国も含めた先進国が先端技術を使った生活を営むことが、地球温暖化の原因になっていることは間違いない。結果的に途上国の農村では、農業生産物を育てるのには劣悪な環境が増加し、農業生産物の不作が発生する。不作が続くことにより、深刻な食糧不足に陥り、飢餓が生まれる。そして農業生産者は、良い土地を求め、その地を離れて行くという状況が発生している。

特に戦火の中にある国々においては、移民として国外に流出している。この状況が続くことによって、途上国の食料安全保障自体が悪化し、さらなる飢餓人口を増加させるという負のスパイラルが発生しているのである。


したがって、この負のスパイラルを断ち切り、途上国の飢餓を救うのは先進国の義務である。世界的な農薬関連企業であるモンサントやシンジェンタは、本課題の解決に向けたビジネスを展開すべく、バイオテクノロジーの世界にも早々に足を踏み入れてきている。海外のベンチャー企業では、レアプラント栽培や昆虫を培養できる装置、植物原料の人工肉を作るような装置を開発し、製品化すべく日々研究を進めている。

日本としては人口が減る傾向にあるため、この点を意識されている人や企業は非常に少ないかもしれない。しかし今後、日本の安心・安全で高クオリティな食材を大量生産するノウハウや技術を活かし、今まで農業生産物の生産が困難であった極寒エリアや熱帯エリア、宇宙ステーションや船上といった、あらゆる環境で栽培できる農業生産物の創造を、世界各国から求められてくるのは間違いない。

世界の食料安全保障のためにも、スマート農業の実現により、日本の種苗メーカー、食品メーカー及び農業生産者は日本国民の胃袋だけではなく、世界各国の人々の胃袋を満たすことを今後意識して、開発や生産をしていかなければならないと、筆者は思う。


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WRITER LIST

  1. かくやさゆり
    サンマルツァーノトマトに出会い家庭菜園を始めた半農半ライター。農業、食、アウトドアを中心にライターとして活動中。主に固定種の野菜を育てています。
  2. 川島礼二郎
    川島礼二郎(かわしまれいじろう)。1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  3. 蒼井ネコ
    農学系の兼業ライター。某大学農学部、某農業レストラン、某飲料会社商品企画を経て、現在は某マルシェアプリでwebマガジン編集として働きながら、猫様のお世話をしている。
  4. 杉山直生
    すぎやまなおき。1988年生まれ。愛知県で有機農業を本業として営む。「伝えられる農家」を目指して執筆業を勉強中。目標は、ひとりでも多くの人に「畑にあそびに行く」という選択肢を持ってもらうこと。「とるたべる」という屋号で、日々畑と奮闘中。
  5. 柴田真希
    管理栄養士。㈱エミッシュ代表取締役。Love Table Labo.代表。27年間悩み続けた便秘を3日で治した雑穀や米食の素晴らしさを広めるべく、雑穀のブランド「美穀小町」を立ち上げる。現在はお料理コーナーの番組出演をはじめ、各種出版・WEB媒体にレシピ・コラムを掲載する他、食品メー カーや飲食店のメニュー開発やプロデュースなどを手がける。『私は「炭水化物」を食べてキレイにやせました。』(世界文化社)、『はじめての酵素玄米』(キラジェンヌ)など著書多数。