米の反収激減の突破口に……兼業農家が導入できそうな「環境モニタリングシステム」を調べてみた【藤本一志の就農コラム 第26回】

こんにちは。岡山県真庭市の兼業農家、藤本一志です。

今年も稲刈りが終わりました。現在ヒノヒカリの籾摺りを終えたところですが、反収がここ数年では最悪です。正直、とてもショックでした。今後農業を続けていくためには、ここで何か対策を講じる必要があります。

そこで今回は、今年のような厳しい状況を解決する方法として、生育環境を正確に把握できる稲作用の「環境モニタリングシステム」について調べてみました。突破口の1つになればいいのですが……。


昨年より10反減。驚くほど少なかった収穫量



今年は10月上旬の高温で稲の成熟が一気に進んだため、稲刈りは例年より1週間早く始まりました。ヒノヒカリの収穫量は昨年より10俵も少ない43.5俵。反収にすると7.5俵です。私が農業に関わり始めてからは最低でした。

原因として考えられることはいくつかありますが、主なものは「夏場の低温と日照不足」でしょう。

しかし、「これが大きな要因だ」という自信は持てません。理由は“根拠となる数字”がないから。そこで、試しに岡山地方気象台のデータをチェックしてみました。すると、今年は以下のような気候変化があったことがわかりました。

  • 8月の平均気温は、2020年から2.5℃低下(29.9℃→27.4℃:平年は28.1℃)
  • 8〜9月の日照時間は、2020年から140時間減少(平年より85時間少ない)

気温の変化は予想していましたが、日照時間が100時間以上も減少しているとは……。

このような不安定な気候は今後も続くでしょう。環境がどんどん変化していくということは、今までのように“何となく”農業を続けるだけでは成果に結びつかないということでもあります。

まずは、稲が育つ環境を把握しよう。そう思い、今回「環境モニタリングシステム」を調べてみました。


環境データを蓄積できるシステムを調べてみた


現在の理想の環境モニタリングシステムは、気温や日照時間といったデータを蓄積できるというもの。土壌成分も測れるといいですが、現在の状況では土壌成分がわかっても対処する余裕がないと思うので、優先度は低めです。

田んぼは全部で7カ所ありますが、それほど距離も離れていないので、導入は1台で十分でしょう。

と、あれこれ条件を踏まえて調べてみると、以下の3製品が候補に挙がりました。

  • web-Watcher(株式会社NPシステム開発)
  • e-kakashi(ソフトバンク株式会社)
  • Paddy Watch(ベジタリア株式会社)

1つずつ、詳しく見てみようと思います。

1. web-Watcher


引用:NPSystem(https://www.npsystem.co.jp/products/new/)
「web-Watcher」は、稲作にも畑作にも対応している環境モニタリングシステムです。

圃場に設置したセンサー「i-Node」で環境データを集積し、中継器「i-Gateway」を経由してクラウドサーバーにデータを蓄積します。主な機能は以下の通りです。

  • データ入力による作業日誌の作成
  • 環境モニタリング(大気温度、湿度、土壌水分・EC、 日射量、雨量など)
  • データ分析
  • 遠隔潅水操作(オプション)

これらに加え、データに異常があると警告メールを送信し、被害を未然に防ぐ仕組みもあります。私が必要だと思う機能はすべてそろっていますが、「センサー→中継器→クラウド」とデータを集積する流れを見ると、圃場をたくさん持つ大規模農家さん向けの製品といえそうです。

2. e-kakashi


引用:e-kakashiホームページ(https://www.e-kakashi.com/service/sensor-network)
「e-kakashi」の特徴は、データを元にAIが栽培をサポートしてくれるというもの。今やるべき作業や収穫予測ができるのが魅力的ですね。

e-kakashiは、独自サービスと連携することで、以下のことが可能となります。

  • 複数人で環境データを閲覧できる(無料)
  • データ分析(月額1万円)
  • 作業日誌の作成(無料)
  • 栽培ごよみの作成(無料)

本体価格は約10万円。機能面では問題ありませんが、私のような兼業農家が導入するのは、予算面ではあまり現実的とはいえません。

3. Paddy Watch PW-2300


引用:vegetaliaホームページ(https://field-server.jp/paddywatch/index.html)
「Paddy Watch」は、水位・水温の計測が基本で、オプションで気温・湿度・照度を計れる水田センサーです。

こちらの製品の特徴は、購入ではなく“レンタル制”であるということ。もし、環境モニタリングシステムを導入したとしても、主に使用するのは農繁期の6月中旬~10月中旬の約4カ月のみ。

このような季節性のある器具はいざ使おうというとき、錆びていたりうまく動かなかったりということが多々起こります。レンタルなら、そういった問題は解決できそうですよね。

レンタル料金は1台あたり月5900円。「お試しで使ってみる」という感覚で利用できそうなのがいいと思います。


現状は「Paddy Watch PW-2300」のレンタル制度が魅力


3つの環境モニタリングシステムを調べてみて、以下のような感想を持ちました。

  • web-Watcher:機能は魅力的だが、たくさんあって逆に持て余しそう
  • e-kakashi:価格が高いので、兼業農家にはハードルが高い
  • Paddy Watch PW-2300:レンタル制度が魅力

まずは環境モニタリングシステムがどんなものか、どの程度私が使いこなせるのかを把握するために、「Paddy Watch PW-2300」のレンタルから始めてみたいと思いました。しかし、残念ながらウェブサイトには「新規申し込み一時停止中」という文字が……。すぐに導入するわけではないので、少し様子を見ていきたいと思います。

また、調べる中で「来年からは作業日誌を書こう」とも思いました。正直、毎年当たり前の作業を繰り返しているため、“記録をつけることの重要さ”を軽く見ていました。

作業日誌を「書く」ことで、生育状況や環境も頭にしっかりと入るでしょうし、環境のデータを蓄積しつつ、今後の環境変化にも対応できる解決策を見つけていきたいです。


さて、約1年半にわたってお届けしてきた私のコラムも次回でいったん最終回とさせていただこうと思います。

2020年、2021年と2シーズン、兼業農家として稲作に取り組んで感じた厳しさや課題、そして今後の展開についてお伝えします!


web-Watcher 新規事業 - 製品案内 - 株式会社 NPシステム開発
https://www.npsystem.co.jp/products/new/
e-kakashi
https://www.e-kakashi.com/
PaddyWatch | ベジタリア株式会社 vegetalia, inc.
https://www.vegetalia.co.jp/our-solution/iot/paddywatch/

【農家コラム】地域づくり×農業ライター 藤本一志の就農コラム
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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。