転職、移住に至った理由と目指す農業像【地域づくり×農業ライター 藤本一志の就農コラム 第2回】

こんにちは、岡山県真庭市の藤本一志です。今年で26歳、社会人2年目です。


前回は私の経歴を踏まえて、自己紹介をさせていただきました。

今回は私が転職、移住に至った理由と、今後私が目指す農業についてお話しします。


自分なりに目的を達成できた前職

私は大学院を修了して1年間、食品や生活用品の配送業者に勤めていました。

大学を出てすぐに農業・地域に関わる仕事をしたいと思っていましたが、「1度は社会を見ておいたほうがいい」と多くの方から助言をいただき、就職の道を選びました。

私が就職した会社は、契約している消費者の元に直接食品や生活用品をお届けするという事業を行っていました。

この仕事に決めた理由は、消費者の反応を直接見ることができるということ、そして私がネックに思っていたコミュニケーション能力を磨けるということに魅力を感じたからです。

消費者の方と直接会話ができるなら、そこで生産者の物語を伝えて、良いものを積極的に買ってもらえるようにしようと考えていました。

そのような目標を掲げながらのお客さまとの会話の中で意識していたのは、「どういった条件が購買行動を決定するのか」ということです。値段・味・見た目・産地・安全性といった要素を中心に、お客さんのニーズを探りました。

私が受け持っていたお客さまは400人ほどで、多くの方が重視していたのは値段と味でした。その次に安全性です。産地は日本国内で作られたものなら安心できるという方が多かったため、国産か海外産かということが重視されていました。

また、前回の記事でもご紹介したような生産現場での苦労なども伝えていこうと考えていました。

年に数回、会社が生産者とふれ合う機会を設けてくれたので、積極的に参加していき、そこで聞いた物語をきちんと消費者に伝えることを心がけていきました。また、商品学習会にも参加し、積極的に知識も取り入れました。

前職での生産現場視察時の写真。この時は岡山県内の大型酪農施設を見学した(写真:藤本一志)
ありがたいことに、そうして商品の特徴や物語を中心にお話ししていくうちに、購入してくださるお客さまが増えていきました。会話の中で特に気を付けていたのは、自分自身で体験した味を伝えるということ、生産段階での工夫や生産者の想いをわかりやすく伝えるということです。

こうした経験を繰り返しているうちに、自然と「自分の中でこの会社に入った目的は達成したし、転職しよう」と考えるようになりました。


大好きな地域に導かれ、転職・移住へ

転職をするにしても、まずは2、3年働いてからという意見も多いでしょう。しかし、私は「それでは遅い」と思いました。

なぜなら、「若いうちの方が圧倒的に動きやすいから」です。

2、3年経ったら私は30歳手前になってしまいます。この段階で移住したいと考えても、今より動きにくくなっているだろうと感じました。それに、まだ独身なので比較的自由に動くことができます。今のうちに行動に移すべきだと思い、転職活動を始めました。

幸運なことに、私が学生時代から活動していた岡山県真庭市で仕事をいただけることになりました。

転職に伴って、実家・農場のある岡山市から真庭市に移住し、現在は真庭市の情報発信・移住支援に関わる仕事に就いています。

2020年4月現在、残念ながら新型コロナウイルス感染症によってイベントや移住相談会が中止になっていますが、家でできることやオンライン移住相談の開設など、今できる情報発信に取り組んでいます。

大好きな地域で、地域に関わる仕事ができているため、ノーストレスで楽しい日々を送っています。

現在は真庭のコンテンツをいかして、家の中でできることを発信中(写真:藤本一志)

将来は第1種兼業農家に

ここからは、私が目指す農業像についてお話しします。

現在は真庭市に暮らしていますが、将来的には岡山市に戻り、農業を仕事の軸にしたいと考えています。「仕事の軸」という表現をしたのは、あくまで他の仕事もする、兼業農家でありたいと考えているからです。

現在は地域に関わる仕事が軸で、副業として農業とWebライターをしています。将来的にはこの立場が逆転して、農業が軸で、地域づくりとWebライターが副業になるというのが理想です。

農業収入が兼業収入より多い、第1種兼業農家になること。それが私の目標です。

どうして専業じゃないのか、と思うかもしれません。それは、3つの理由があります。

まず、「リスクが大きいこと」。

近年日本では自然災害が多発していることは、多くの方がご存じでしょう。ニュースなどで被害を受けた農家の話が、毎年のように取り上げられます。正直、今の日本に安全な場所はないと感じています。いつ大きな地震や台風がくるかわからない、そんな世の中です。

農業1本でやっていく場合、もしも自分の農園が被害にあったら、収入がなくなってしまうというリスクがあります。つまり、リスクヘッジのためにも、専業ではなく兼業でやったほうが良いと考えています。

2つ目の理由は、「複数の仕事をかけ持つ生き方が楽しいと感じているから」。

私は学生時代から地域づくり・農業という2本の軸で活動してきました。2つの分野は深くつながっていますし、活動を通してさまざまなご縁にも巡り合えます。

どんな仕事をするにも、人とのつながりは大切だと思います。今後も地域づくりの活動に参加しつつ、農業にも取り組んでいきたいと考えています。

3つ目は、「専業でやっていくためには多額の設備投資が必要な点」です。

私の家の農場は、現在3haとなっています。専業になるため、農地の拡大をするにしても現在の設備では、5haが限界です。専業になるためには、機械一式を買い替えるだけでなく、作業場を大型機械に対応できるよう建て替えなければなりません。

そんな巨額な資金はありませんし、貯められる自信もありません。そして、1つ目の理由に書いたように、仮にできたとしても、自然災害などで被害を受けたときのことを考えると怖い。それなら、現在の設備規模のままで農業ができる、兼業農家がいいだろうという考えに至りました。

兼業農家として、現在の規模の農地で作付けをしつつ、可能な範囲で地域の農地を請け負えたらいい、そう考えています。幸いにも私の農場がある地域は兼業農家が多いため、設備規模に関しては農家同士の協力体制が整えば問題ないと考えています。例えば、私が専業になるときの一番のネックだと感じた乾燥機については、次のように考えています。

今後、農地を請け負う場合、依頼先の農家さん(仮にAさんとします)に乾燥機を貸してくれるようにお願いします。そして私の農場で獲れた米は私の家の乾燥機で、Aさんの農場で獲れた米はAさんの家の乾燥機で乾燥させる。変更した点は、Aさんの農場の耕作者が私になったということだけです。

このように、やり方次第では、兼業農家でも規模拡大ができると考えています。しかし、広げ過ぎると必ず無理が生じてくるので、自分でできる範囲でということは忘れずに進めていきたいと思っています。

もちろん、今後の流れによっては、専業農家になることもあるかもしれません。ただ、現状では専業農家になった自分がイメージできないということ、そして兼業という生き方が自分には合っていると感じています。

この実りを、この風景を、次世代につなげたい
第2種から第1種になろうと思うのは、生活の拠点の問題です。

現在は農場から離れた真庭市に暮らしているため、地域づくりの仕事がメインになっています。しかし、農場がある岡山市で暮らすようになったら、次第に農業の割合を増やしていきたいと考えています。

世間的にはあまり注目されていませんが、『兼業農家』という生き方も、十分魅力的でおもしろい生き方だと私は思います。

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WRITER LIST

  1. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  2. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX(現在登記準備中)を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  3. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。
  4. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  5. 藤本一志
    ふじもとかずし。大学・大学院の6年間を通して地域づくりと農業の活動に関わる。1年間のサラリーマン生活の後、学生時代から活動していた地域に移住し、2拠点居住を開始する。移住支援を通じた地域づくり活動に取り組む傍ら、兼業農家として稲作に取り組む。