麦を作りたいから調べてみた・その1【藤本一志の就農コラム 第17回】

こんにちは。岡山県真庭市の兼業農家、藤本一志です。

2021年もどうぞよろしくお願いします。


さて、2021年最初のコラムは「麦」について書こうと思います。

冬の間、米農家は特に作業がないため、しばらく農作業はお休み。私はその空いた時間を使って、今後自分がやりたいことを整理したり考えたりしているところです。

その中でふと、麦を作りたいなと思いました。

もっと言うと、「小麦」を作りたい。

そこで今回は、どうして麦を作ろうと思ったか、そして岡山県南部でどんな麦が育てられるのか私なりに調べた結果を記そうと思います。


麦栽培に興味を持ったきっかけ

私を知っている人からすれば、あれだけ「米! 米! 」と言っていた人が、急に「麦を作りたい」と言い出したことに驚く人もいるでしょう。

麦栽培に興味をもったきっかけは2つあります。

1つは、冬の間も何か栽培したいと思ったことです。11月から4月下旬にかけて、米農家は作業がほとんどありません。そのため、私は農繁期ほど真庭市と岡山市を行ったり来たりの生活をしていません。ほとんどを真庭市で過ごし、米の注文が入れば岡山市に出向くといったスタイルです。

繁忙期と閑散期とのメリハリがつくのは良いことですが、それ以上に身体を動かしたい欲求にかられています。20代だから感じることかもしれませんが、要は時間が余っているから農業したいということです。

そして2つ目のきっかけは、米の需給の問題です。個人的な感情から一転、日本全体というスケールの大きな話になってしまいますね。

多くの方がご存じのように、日本国内の米需要は年々減少傾向にあります。下のグラフは、1人あたりの米の年間消費量と販売価格の推移を表したグラフです。

【出典】農林水産省 「米をめぐる関係資料」2018.7 P7
ピーク時には1年間に1人2俵もの米を食べていたのに対し、近年では1俵にも満たない消費量となっています。

和食だけでなく洋食、中華、エスニックなど、豊かな食を選べる現代ですから、米の消費量が落ちるのは納得です。さらに、農水省の別のデータによると、主食用米の需要量は毎年8万t程度減少しているようです。

おそらく、今後もこの流れは続くでしょう。

また、米の価格も下落しており、かつ不安定です。平成初期と比べると、1俵あたり8000円~1万円ほど落ちています。加えて、ここ数年の価格変動も不安定ですね。小規模な農家ほど経営が苦しくなって、離農するのも頷けます。

おそらく、米需要の減少と価格の不安定さは、当分このままでしょう。農業を続けていくうえで、米だけ作っていればよいという時代ではないのかもしれません。食生活が変化しているように、農家も変化する必要があると思うのです。


農家も作物を選択する必要がある

米が苦境に立たされている一方で、麦、中でも小麦の需要は増えています。「朝食にはパンを食べる」という方が増えていることがその代表的な要因でしょう。

私は、朝食は米派ですが、パンも好きです。おいしそうなパン屋さんを見つけると、ついつい入ってたくさん買ってしまいます。いろんな種類があっておいしいですからね。私が作った小麦でパンを作ってもらえたら、どれだけうれしいだろうかと、考えることもあります。

少し話がそれてしまいましたが、そんな感じで小麦需要は増えています。

この世の中の流れに対し、水田の多角的な利用が必要だと、学生時代に学びました。米を作るだけでなく、小麦や大麦、大豆など、日本国内での生産が足りていない作物の栽培を促進しようという動きです。また、米も食用米だけでなく、牛や豚が食べる飼料米に切り替える動きが一部地域では出始めています。

これまで食べてきたパンの写真米農家ですがパンも食べます。
仮に需要があるとすれば、祖父から私、または父親に経営権が変わるときが、作付体系を変えられるチャンスではないかと考えました。


岡山県南部で育てられている麦について調べてみた

まずは小規模、田んぼ1枚からやってみたい。そう思い、岡山県南部での麦栽培について調べてみました。

「岡山県良質麦生産振興方針」(岡山県良質麦生産振興推進協議会 2015年(平成27年)9月)によると、岡山県で栽培されている麦は小麦・二条大麦・はだか麦の3種類でした。それぞれにどんな特徴があるのか、簡単にまとめてみます。

小麦


一般的な小麦の画像
  • 長らく「シラサギコムギ」という品種が栽培されていたが、近年は早生・多収の「ふくほのか」が主流
  • 主にうどんや菓子に使われ、JAを通して地元の製粉業者に卸されている
  • 岡山県の栽培面積の約8割が岡山市
  • 課題は水稲との作業競合による播種の遅れと、収穫期の梅雨の影響で収量・品質が不安定なこと(播種期:11月中旬、収穫:6月上旬)

二条大麦


二条大麦
  • 岡山県は全国トップクラスの反収と作付面積を誇る。中でも岡山市は大きな産地
  • 品種は「おうみゆたか」「ミハルゴールド」「スカイゴールデン」
→スカイゴールデンは、おうみゆたかとミハルゴールドの良い点をとった新品種
  • 主な用途はビールだが、みそや焼酎にも利用されている
  • 課題は水稲との作業競合による播種の遅れと、収穫期の梅雨の影響で収量・品質が不安定なこと(播種期:11月中旬、収穫:5月下旬)

はだか麦


はだか麦
  • 岡山県内での栽培面積はわずか30ha(2014年(平成26年))
  • 岡山市と笠岡市で栽培されている
  • 麦類の中で最も湿害に弱く、反収が低い
  • 健康志向の高まりで需要は増えている

こんな感じでした。

はだか麦は栽培が難しそうなのでいったん置いておくとして、小麦は収穫期が見事に田植えと重なっていますね。

二条大麦にも同様のことが指摘されていましたが、5月下旬の収穫であれば、田植え・代掻きとはギリギリ被りません。二条大麦であれば、作業スケジュール的には栽培できそうです。

実は、もう10年以上前のことになりますが、私の家では以前二条大麦を栽培していました。だから、おそらく作れると思うのです。

ただ、私はお酒が飲めない体質なので、できれば小麦を作りたいと考えています。食べることが好きなので、自分で作ったものを自分で食べたいと思うからです。もちろん、経営面や作業面を考えると、そんなことは言っていられません。そこは一工夫する必要がありそうです。


次回は、経営面でのシミュレーションや栽培スケジュールについて、調べて記せられればと思っています。


米をめぐる関係資料 - 農林水産省 2018.7 P6,7【PDF】
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/180727/attach/re_data3.pdf
岡山県良質麦生産振興方針 - 岡山県良質麦生産振興方針推進協議会 【PDF】
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/attach/pdf/oka03-1.pdf

【農家コラム】地域づくり×農業ライター 藤本一志の就農コラム
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WRITER LIST

  1. 堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
  2. 大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  3. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 田中克樹
    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  5. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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