兼業農家でも使える水管理システムがないか、調べたり聞いたりしてみた【藤本一志の就農コラム 第25回】

こんにちは。岡山県真庭市の兼業農家、藤本一志です。

今年の稲はお盆から続いた長雨の影響で生育が少し遅れています。それでも、高温や害虫に見舞われた去年に比べると順調に育っていると思います。

さて、今回は水管理がテーマです。

2拠点居住で農業をしている私は、将来的に水管理の負担を減らしたいと思っています。でも、実際にどんな水管理システムがあるか知りません。

そこで、兼業農家でも使える水管理システムはないか、調べたり聞いたりしてみました。


どんな水管理システムがほしいのか

現在、我が家の田んぼの水管理は、ほとんど祖父が担っています。私と父は仕事をしているため毎日見ることができず、仕事が休みの日に少し手伝う程度です。

しかし、祖父も80歳。祖父に任せきりというわけにもいきません。そこで、スマート農業の力で、私と父が働きながらでも水管理ができないかと考えました。祖父の負担を減らし、先祖代々の田んぼを次世代に繋ぐためにも、水管理の負担減は必要だと思ったのです。

私が欲しい水管理システムは、スマホやPCで遠隔で操作が可能なもの。で、さらに給水・排水両方の操作もできると理想的です。遠隔での操作ができれば、田んぼに行かなくても家や職場からの水管理が可能となり、労力と時間が大きく削減できます。

しかし、そんなハイテクなシステムが兼業農家向けに開発されているのでしょうか。1カ所あたり5~10万円ほどのものがあればいいのですが……。


現在の田んぼの給水・排水方法

現在の我が家の田んぼの給水方法は2種類、排水方法はゲートを開け閉めする1種類です。まず、現状を写真付きでご紹介します。

給水方法1. モーターによるくみ上げ


スイッチを入れると写真中央の回転軸が回って水をくみ上げる
7カ所ある田んぼのうち、5カ所ではモーターを使って用水路から水をくみ上げています。回転軸とモーターをベルトでつなぎ、スイッチを入れると稼働します。潅漑期でも田んぼと用水路に水位差があるので、この方法がメインとなっています。

給水方法2. パイプライン



残りの2カ所の田んぼはパイプライン化されています。水位センサーも付いており、設定すれば自動的に給水が停止します。電動モーターに比べて水の勢いは弱いですが、自動的に止まる点は便利です。


どんな製品があるのか調べてみた

実際に調べてみると、水管理システムには主に以下の4種類があるとわかりました。

  1. WATARAS(クボタ)
  2. 水田ファーモ(株式会社ファーモ)
  3. 水まわりくん・エアダズバルブ(積水化学)
  4. paditch(株式会社笑農和)

1. WATARAS(クボタ)


ほ場水管理システム WATARAS(ワタラス)|農業ソリューション製品サイト|株式会社クボタ | 水田水管理省力化システム | 多機能型自動給水栓
給水と排水をスマホやPCで遠隔操作できるシステムです。給水はパイプラインに取り付ける方式とゲート式の2種類、排水はゲート式です。まさに、私の理想通りの製品です。しかし、ネックなのが価格。昨年真庭市内の農家さんに見せていただきましたが、とても兼業農家の手が届く価格ではありませんでした。

2. 水田ファーモ(株式会社ファーモ)


水田ファーモ|スマホでらくらく水管理
給水ゲートのみの製品ですが、1台52,800円と安く、設置費や通信費も不要です。排水はできませんが、安さと設置の手軽さがとにかく魅力です。また、水位センサー(1台19,800円)も別売りされています。

しかし、ホームページやYouTubeに載っているものは、どれも水位差のない開水路からの給水ばかり。水位差のある水路では使えないか電話で問い合わせてみたところ、基本的に水位差のない田んぼでの使用を想定しているとのこと。価格は希望通りですが、水路の構造上導入できない製品でした。

3. 水まわりくん・エアダズバルブ(積水化学)


水まわりくん+エアダスバルブ(多機能型自動給水栓 水田水管理省力化システム) | 積水化学工業-エスロンタイムズ
WATARASと似た製品で、給水・排水の両方の遠隔での管理が可能です。システム自体は理想的ですが、パイプラインへの取り付けが前提で価格も高いため、導入は現実的とはいえません。

4. paditch(株式会社笑農和)


スマホでかんたん水管理 paditch(パディッチ)  - 収量アップ・労力削減に貢献します
こちらもWATARASと似た製品で、給水・排水を遠隔で管理できます。しかし、やはり価格がネック。ゲート式で17万円、パイプライン取り付け式で65万円となっています。


違うやり方で水管理の負担を減らせないか

今回4つの製品を調べてみましたが、値段の高さや落差のある水路での使用を想定していないため、我が家の田んぼへのは導入は叶いそうにありませんでした。念のため農業関連の会社に勤めている友人にも聞いてみましたが、兼業農家向けの水管理システムは今のところ開発されていないようです。

私の理想も高すぎるみたいです。田植機と同じように、兼業農家向けのやり方をする必要がありますね。そこで、これまでとは違ったやり方で水管理の負担を減すことはできないか考えてみました。

1. 水位センサーを設置して必要な時だけ見に行く


パイプラインの水位センサーは現在も活用中
水位センサーを設置すれば、離れていてもリアルタイムで水位を把握することができます。給水・排水の方法は従来のままとなりますが、給水・排水が必要なタイミングがわかるので、田んぼに行ったけど給水・排水が不要だったというロスタイムの削減が叶います。

2. 排水ゲートのみ取り付ける


排水ゲートのみであれば、すべての田んぼに取り付けることが可能です。コストはかかるものの、給水設備と排水ゲートを同時に取り付けるよりも、コストの面から見ても現実的です。排水の遠隔操作ができるようになれば、普段の労力削減はもちろん、大雨や台風の時も安全に排水できます。ここ数年は「晴れの国」といわれている岡山県でも大雨が増えているため、今後のことを考えると排水のみ自動化というのもいいかもしれません。

8月下旬のヒノヒカリ。いよいよ穂が実ってきた。
今回調べてみて、私の理想とする水管理システムはかなり先進的な技術で、大規模農家向けであるとわかりました。

「水管理」と特定の作業にこだわるのではなく、既存のスマート農業機器の中で自分に合うものはないかと考えるほうがいいのかもしれません。環境データの蓄積や食味センサーなど、今までアンテナを張っていなかった機器も調べてみようと思います。作業の負担削減も必要ですが、品質の向上も大切ですからね。

とりあえず水管理については、1、2の方法を検討しつつ、家族と協力してやっていこうと思います。


ほ場水管理システム WATARAS(ワタラス)|農業ソリューション製品サイト|株式会社クボタ | 水田水管理省力化システム | 多機能型自動給水栓
https://agriculture.kubota.co.jp/product/kanren/wataras/index.html
水田ファーモ|スマホでらくらく水管理
https://farmo.info/paddy.php
水まわりくん+エアダスバルブ(多機能型自動給水栓 水田水管理省力化システム) | 積水化学工業-エスロンタイムズ
https://www.eslontimes.com/system/items-view/243/
スマホでかんたん水管理 paditch(パディッチ) - 収量アップ・労力削減に貢献します
https://paditch.com/

【農家コラム】地域づくり×農業ライター 藤本一志の就農コラム
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  1. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
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    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  5. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
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