最新の「側条施肥田植機」のコストパフォーマンスを考えてみた【藤本一志の就農コラム 第23回】

こんにちは。岡山県真庭市の兼業農家、藤本一志です。

前回前々回と、地方移住をテーマに取り上げ、移住して就農する方法や、移住で気を付けることを紹介しました。

さて、今回は新しく導入した「側条施肥田植機」を使ってみた感想を記します。

我が家にとっては15年ぶりの新車。その機能の多さ・便利さに驚きました。


旧車が壊れたので、新しく側条施肥田植機を導入

新車です。旧車より少し大きめ。
昨年、15年使っていた田植機が壊れてしまいました。原因は操作ミスです。座席後ろの植付部を降ろしたままバックしてしまい、ローターが壊れました。JAに修理を依頼するも、古い田植機なので部品が見つからず……泣く泣く廃車に。

私たちのような小規模な兼業農家にとって、田植機のような大型機械の購入には大きなエネルギーが必要です。それは、「収益に対して購入額がとても大きいから」。そのため田植機が壊れた時は、「来年は田植えができるだろうか」という不安がありました。

しかし、以下の3つの理由から新車を購入することになりました。

1. 利便性の面から、機械のリースに抵抗があった


私の地域でも、機械の貸し借りができる環境はあります。しかし、農繁期になると当然ニーズが増えるため、予約が取りにくくなってしまいます。仮に予約を取れたとしても、天候不順で作業ができなかったら次に予約を入れた日まで待つ必要があり、自由が利きません。こういった利便性の面から、我が家だけの田植機が必要でした。

2. 代車の作業効率の良さに感動した


2つ目は、代車でやってきた田植機の「Zターン」という機能に感動したこと。後ほど詳しく書きますが、この機能により作業効率がグンと向上しました。この体験から、新車を買うならZターンを含め、今までにない機能を搭載したものにしようと決めました。

3. 父と私の農業への姿勢


3つ目は、父と私が祖父の跡を継ごうと、積極的に農業に取り組んでいるため。購入について悩んでいる時に、祖母が「2人が頑張っているから、今後のために買おう」と背中を押してくれたのです。これまでの私たちの姿勢を買ってくれているんだな、と正直うれしかったです。


作業を効率化する新しい機能


耕耘はただ耕すだけになり、とても楽になりました。
新車には今までになかった機能がたくさん搭載されています。その中でも、作業の効率化につながったものを2つ紹介します。

側条施肥(そくじょうせひ):田植えと一緒に肥料を撒くことで、耕耘の時の手間を省く


「側条施肥」という機能により、田植えの前にトラクターで耕耘(こうき)する時に、田んぼに肥料を撒く必要がなくなりました。

側条施肥とは苗の株元に肥料を撒く作業のことで、田植え・基肥・除草剤散布を1回で済ますことができます。耕耘する時はトラクターで“ただ耕すだけ”になったので、作業時間が短縮しました。

また、耕耘の時は“面”に施肥していたのに対し、側条施肥は“点”に施肥。そのため肥料の使用量を抑えることもできます。

Zターン:旋回時のレバー操作を不要して、旋回にかかる時間を削減


旧車では、旋回の時のレバー操作で地味に時間を浪費していました。端まで植え付けたら、レバーで植付部を持ち上げてぐるっと旋回して、植付部を降ろして、植え始める。操作するレバーも2つあったので、余計に時間がかかっていました。

しかし、「Zターン」はハンドルの動きに連動して植付部が上下します。端まで植え付けて、ハンドルを回すと植付部が自動的に持ち上がり、ハンドルを真っすぐに戻せば、今度は植付部が自動的に降ります。これまではレバーをガチャガチャしていたのが、ハンドル操作1つに変わりました! この機能により、旋回にかかる時間が大幅に減少。個人的には、一番好きな機能です。

他にも、旧車では植付部と連動して動いていたマーカーがボタン操作もできるようになっていたり、ボタンやレバーの位置がまとまっていたりと、うれしい機能・設計がたくさんありました。


肥料の使用量・コストはどう変化したか


肥料を入れるところ。45kg(3袋分)入ります。
田植機の買い替えと同時に肥料も変えてみました。今までは1袋20kgのものを使用していましたが、田植えをしながら肥料を補給するのは重労働なので、軽めの15kgのものに変更。成分はほとんど変わっていません。

この5kgの軽量化は、意外にも大きく現れたように感じました。例えば、20kgの肥料は両手でないと持てなかったのに対し、15kg袋であれば片手でも抱えられるため、体力的な負担が減りました。

補給作業もイメージしたよりも回数が少なく、それほど手間だと思いません。補給作業に割かれる時間もZターンによる旋回時間の短縮と相殺されたために、全体的な作業時間も大きく変わることはありませんでした。

作業の負荷や効率という面では、肥料袋の軽量化と新機能はよかったと実感しています。

次に、コスト面を考えてみます。

3haのうち、側条施肥をした面積はヒノヒカリ0.5ha、アケボノ2haの計2.5ha(残りの0.5haは昨年余った肥料を耕耘の時に使いました)。

なので、ヒノヒカリ0.5ha、アケボノ2haとして、昨年と今年の肥料代を比べてみます。

●使用量の変化

ヒノヒカリ:
2020年 270kg
2021年 180kg
→90kg減少=18kg/10a減少

アケボノ:
2020年 860kg
2021年 535kg
→325kg減少=16.25kg/10a減少

合計 415kg 使用量削減

●コストの変化
※購入量を元に試算。

ヒノヒカリ:
2020年 3450円×16袋=5万5200円
2021年 2910円×15袋=4万3650円
→1万1550円削減

アケボノ:
2020年 3450円×60袋=20万7000円
2021年 2910円×46袋=13万3860円
→7万3140円削減

合計 8万4690円コスト削減

作業中ぼんやりと「肥料代は減っただろう」と思っていましたが、実際に目に見えて減っていたのでびっくりしました。

次に、田植機の購入価格も含めて計算してみます。減価償却期間は7年です。

●田植機の購入価格
※年額は7年償却を想定

旧車:155万円(年22.1万円)
新車:217万円(年31万円)
→62万円アップ

購入価格の差は62万円。しかし、肥料代を年間8万5000円削減できるとすれば、7年間で約60万円の肥料代の削減が可能です。これを新車の購入価格から差し引くと、157万円。ほとんど変わらないことがわかります。

購入前は「217万円か。高いな……」と思っていましたが、肥料代の削減効果を考えると、無駄な肥料を減らせる上に、労働時間も詳しく分析すると、新車の方が経営的にいいのかもしれません。

こうしてきちんと数字を分析するとさまざまなことが見えてきますね。今後もしっかりと記録をつけていこうと思います。


次回は使ってみた感想を


今年も無事に田植えが終わりました。
今回は側条施肥田植機の機能に関する感想や、コスト分析をしました。新しい機能がたくさんあるので、使ってみた感想はほかにもまたまだたくさんあります。

次回は引き続き感想を述べつつ、良かった点、改善してほしい点を紹介していこうと思います。


【農家コラム】地域づくり×農業ライター 藤本一志の就農コラム
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  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。