移住支援員が紹介する、地方移住を成功させるための3つのポイント【藤本一志の就農コラム 第22回】

こんにちは。岡山県真庭市の兼業農家、藤本一志です。

前回は私の本業である移住支援員の仕事内容や、コロナ禍での地方移住の現状について紹介しました。また、移住して農業を始めるには3つの方法があることも解説しました。

さて、今回は移住の際に気をつけていただきたいポイントを3つ紹介します。

地方に移住して就農したい方、少し広めの家庭菜園で週末農業したい方に参考にしていただけると幸いです。


ポイント1. 理想の暮らしをイメージする

1つ目のポイントは、「移住してどんな暮らしがしたいのか」を具体的にイメージしておくこと。これは、「移住の目標を立てる」ということです。

新型コロナウイルスの影響により「なんとなく田舎に移住したい」という方が増えました。

そのような“ふんわり移住”ももちろん問題ありませんが、達成したい目標があった方が移住前も移住後もスムーズに行動できます。

また、目標ややりたいことを周りの人に言っておくのもポイントです。

特に真庭市の場合、目標に向かって進んでいる姿を、周りの方が応援してくれる風土があります。そのため、目標を持っていた方が充実した移住ライフにつながりやすいと思います。

例えば、私の経験上、移住の目標で多いのは以下の3つです。

  • 源流に近い水のきれいな環境で有機農業に取り組みながら、自然の中で子育てしたい
  • 農業法人に就職して、自然や作物にふれる日々を過ごしたい
  • 平日は会社に勤めて、休日は家族で家庭菜園を楽しみたい

有機農業をしたい方の多くは、すでに有機農業に関する研修を受けて、実践経験を持って移住される方が多く、数年後に田舎で独立することを目指して、計画的に動かれている印象です。

真庭市北部の蒜山地域。豊かな自然と広大な高原地帯で、真庭市の中でも特に農業が盛ん。

ポイント2. 移住前に移住先の人と知り合いになる

2つ目のポイントは、「移住する前に移住先の人と知り合いになっておく」ということです。

これは、移住において最も大切なポイントだと思っています。

まず、移住先の地域に通って、気軽に相談できるような関係性を築いておきましょう。できれば春夏秋冬、それぞれの季節に1回ずつ足を運ぶのが理想です。これは「夏は思っていたより暑い」「冬は雪が降るけど、除雪が入るから想像よりは大丈夫そう」など、移住先の季節ごとの暮らしを知ることができるという意味もあります。

そして、訪問をしていくなかで地域の人としっかりとコミュニケーションをとりましょう。

地域の人と知り合いになっておくと、以下のメリットがあります。

  • 暮らしについて質問できる
  • 住まいや仕事、農地(家庭菜園用)を紹介してもらえることがある
  • 就農希望の場合、先輩農家や便利な制度を紹介してもらえることがある

私の周りの移住者も「家庭菜園用に空いている農地ないかな? 」「草刈りした後の草ってどう処理してる? 」などと、周りの方によく相談をしています。

しかし、知らない土地で、知らない人と知り合うのは至難の技です。よほどコミュニケーションに自信がない限り、「そんなことは無理だ」と感じる方が多いのではないでしょうか。

そこで私たち、移住支援員の出番です。

私の勤務する真庭市交流定住センターでは、移住の際の“人つなぎ”のサポートをしています。具体的には、移住希望者一人一人の希望に合った「真庭暮らし体験ツアー」を提供しており、真庭市に来てくれた移住希望者さんに興味のある地域や仕事、住まいを案内しています。

その際、事前にお聞きした希望や興味関心に合わせて「つながっておくと良さそうな人」も紹介します。

例えば就農希望者であれば、実際に移住して就農した人や農業法人を経営している人を、週末農業など農にふれる暮らしがしたい人であれば、移住候補地のキーパーソンや繁忙期にアルバイトを募集する農業法人・農家を……といったように、少しでも移住後の生活を充実させられるような方とつなげてみます。

実際に案内するときに意識しているのは「どれだけ多くの人に会えるか」ということ。「思っていたよりもたくさんの人に会えた」と言ってもらえることもあり、その時は達成感を覚えます。


移住支援員を通してその土地のキーパーソンとつながっておくと、新しい土地での新しい暮らしへの不安が和らぎます。移住候補地が決まっている方は、ぜひ移住支援員に現地の人を紹介してもらってください。

真庭市でしたら、移住ポータルサイト「COCO真庭」よりお申込みいただけます。


ポイント3. 移住後1カ月で人との距離感をつかむ

3つ目は、移住後のポイントです。

移住前に地域の人とつながっておくと、そのつながりは移住後にさらに広がります。特に移住して1カ月はたくさんの人と会うことになります。仕事のつながりやご近所さんなど、知り合いが増えると移住後の生活に対する不安も和らぎます。

しかし、あまりにたくさんの人に出会うとキャパオーバーしてしまうことがあります。実際に私も経験しましたし、私の周りの移住者の多くが経験していました。

移住して1カ月経った頃は、環境が大きく変化したことで心身ともに疲れている時期です。そのため、移住後の生活をいったん整理してみてください。少し休んで、自分にとって心地よい人付き合いの距離感を見つけましょう。

田舎の人は、都市部の人よりも距離感が近く、親身になってくれる人が多いという特徴があります。最初は戸惑うこともありますが、1~2カ月ほどすると慣れると思います。

しかし「思っていたのと違う」となっていけないので、予防線を張っておくことも大切です。例えば「いきなり物件を購入するのではなく、まずは賃貸に住んでみる」「相談できる先輩移住者とつながっておく」ことです。

真庭市の場合、真庭市交流定住センターによく来ている人の多くが移住者です。スタッフも7人中6人が移住者です。そのような移住者コミュニティとつながっておくと、移住後の不安も和らぐでしょう。


農業も移住も目標を持つこと・人との関わりを大切にすることが大切

マルシェなど、真庭市では人がつながるイベントがたくさんあります。
紹介してきた移住のポイントをまとめると、「目標を持って、そこに向かう過程で良い人間関係を築くこと」が大切です。

新しい土地で思い描いた暮らしをしたいのであれば、自分なりの理想を持ってそれに向かって進むことが一番の近道です。そうして過ごせば、その目標を応援してくれる人も自然と周りに集まってきます。

1人でも移住はできますが、人間関係の濃い地方では、1人での生活は移住後の生活が息苦しくなってしまいます。その土地の人とつながりながら、助け合いながら生活していくことが、移住後の充実した暮らしにつながるのです。

これは、農業も同じではないでしょうか。

目標を持っていかに周りと協力しながら進んでいくかという過程は、移住と似ています。特に、最近はその傾向が強いと思います。

今までは、農業はただ作って出荷するだけでした。私のような小規模兼業農家だと、特にその傾向が強くありました。

しかし、これからの農業は、販売先や地域社会と一体となって取り組み必要があると思います。農家にもコミュニケーション能力や経営力が求められているのです。

農業と移住支援、2つの仕事を通して、私は「目標を持つことの大切さ」を学びました。これは、よりよいこれからの暮らしのために大切にしたい志しの一つです。そのことを知っているから、私たちは移住希望者に「理想の暮らしを教えてください」と必ず聞いているのです。

私も今一度自分の目標・やりたいことを整理して、これからの2拠点生活を楽しみたいと思います。


真庭市交流定住センターホームページ
https://i-maniwa.com/area/koryu/
真庭市の移住・定住のポータルサイト「COCO真庭」
https://cocomaniwa.com/
藤本の執筆するコラム一覧
https://cocomaniwa.com/author/fujimoto/
真庭市のイベント情報サイト「ManiColle」
https://manicolle.cocomaniwa.com/

【農家コラム】地域づくり×農業ライター 藤本一志の就農コラム
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WRITER LIST

  1. 堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
  2. 大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  3. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 田中克樹
    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  5. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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