最新の「側条施肥田植機」のいいところ・気になったところ【藤本一志の就農コラム 第24回】

こんにちは。岡山県真庭市の兼業農家、藤本一志です。

前回は新しく導入した側条施肥田植機の機能の紹介と、経営的観点からの分析をしてみました。旧車に比べると田植機自体の価格は高くなりましたが、肥料代の削減や労働時間を考慮するとコスト的にはあまり変化がないという結果に驚きました。これからも分析を続けてみなければわかりませんが、経営的には新車の購入は成功といえるかもしれません。

さて、今回は実際に側条施肥田植機を使ってみた感想と、良かった点・改善してほしい点を書いていきます。

前回も載せましたが、こちらが新車です!

側条施肥田植機を実際に使ってみた感想・気づき


Zターン頼りだと植え付け位置がバラバラになる


前回、個人的に一番好きな機能と紹介した「Zターン」ですが、うまく使うには工夫が必要でした。

Zターンでは、旋回してハンドルを真っすぐに戻すと、自動的に植付が始まります。しかし、これでは植付を始める位置が隣の列とずれて、全体的にバラバラになってしまうのです。そのため、植付位置を合わせようと止まったり、後ろに下がったりと、無駄な動作が出てしまいました。機械のように「同じタイミングでハンドルを回して、同じタイミングで真っすぐに戻す」ことはできませんからね。

感覚を掴んでからは、「ハンドルを真っすぐに戻して植付部が下がったら、植付ボタンを操作して植付位置を合わせ」て操作するように。こうすることで植付位置がそろい、苗の補給以外で止まることがなくなりました。

Zターンという自動機能があっても、きれいに植えるためには自分なりの工夫が必要でした。隣の列を自動で感知して植付を始める機能があると、もっときれいに効率的に植えられるようになるかもしれませんね。

マルチモニターで状況確認が簡単になった


マルチモニターの画面(カタログ「ISEKI さなえPR SERIES」より)
新車にはマルチモニターが付いています。旧車にもモニターは付いていましたが、表示される項目が少なかったので、マーカーの出す方向などは目視で確認する必要がありました。そのため、マーカーを逆に出したまま気づかず進んでしまうことも……。

新車のマルチモニターで確認できる項目は以下の通りです。

  • 植付のON/OFF
  • マーカーの出す方向
  • ZターンのON/OFF
  • ピタよせのON/OFF
  • スピード
  • 肥料切れ

これだけの項目を一目で確認できるので、マーカーを逆に出すなどのミスが減りました。

また、マルチモニターの横にあるボタンで、あぜクラッチの操作も可能です。ボタンを押すと緑色に光り、植付を止めている列がわかりやすくなります。さらに、植付部を上昇させると自動であぜクラッチが切れるので、戻し忘れによる欠株もなくなりました。

確認したいポイントが集約されているので、導入したばかりの私でもとても操作しやすく、本当に助かりました。

旧車より大きいので、田んぼの出入りは要注意


さまざまな機能が付いているためか、新車は旧車に比べてひと回り大きく、運転席の位置も高くなっていました。そのため、田んぼの出入りは特に注意が必要でした。

私が慣れていなかったことも原因の1つですが、1度田んぼから出るときに後ろ向きにひっくり返りそうになってしまいました。幸いにも事故にはつながりませんでしたが、とても怖かったです。後から調べてみると、田んぼに出入りする際の事故は多いようです……。

このような事故を減らすためにも、誰でも安全に田んぼに出入りできる設計・操作性が必要ではないでしょうか。例えば、簡単なリモコン操作ができるなど、人が乗らずに田んぼの出入りができる機能があれば、高齢の農家さんでもこれまで以上に安全に作業が進められるようになると思います。

早い段階で「肥料切れ」と出るのが気になってしまう


最も気になったのが、肥料が半分ほど残っているのに「肥料切れ」のランプが点灯することです。

「ピー!ピー!」と警告音も鳴るので、作業中とても気になりました。まだ補充しなくても大丈夫だと認識していても、音が鳴る度に心配になり速度を緩めて肥料ボックスの中を確認、という作業が発生してしまうので作業効率が下がってしまいます。

「肥料切れ」の警報については「アリ・ナシ」の2択ではなく、ガソリンのようにメーターで表示されるとわかりやすいと感じました。


データ分析機能は必要なし。ヒトがやれば十分


いくつか気になった点はあるものの、総合的に考えると新車によって作業の効率化に成功しています。田植えにかかる時間はあまり変わりませんでしたが、側条施肥によって耕起の時間は大幅に減少しました。これは作業時間が限られる兼業農家である私にはうれしいポイントです。

ちなみに、新車には最新の農機に付いているデータの蓄積・分析機能は付いていません。作業時間や作業軌跡などのデータを自動で蓄積してくれる機能があるとうれしいと思う反面、我が家程度の規模ならわざわざ機械に頼る必要もありません。作業時間や施肥量は田んぼごとにスマホのメモ機能に記録・管理が可能ですし、作業軌跡は覚えておくことができます。データ量自体も少ないので、スマホに記録したデータを作業後にExcelに入力することも、あまり手間ではありません。

食味や収量は細かく把握したいですが、そんな高性能の農機を導入すると経営的に圧迫されることが予想できます。うち程度の規模では、データの収集・蓄積・分析は、人ができる範囲でやる。そして必要だと思う部分に導入できる農機がないか考えることが重要だと思いました。

ただ、きちんとデータを記録するクセすらついていないので、次の稲刈りからはできる範囲で記録していこうと思います。


最先端の機能も魅力だが、経営規模やニーズに合う農機を選ぶことが大切

多少ムラがあるものの、生育は順調です。
初めて農機を買い替えるという体験を通して、「経営規模や必要な機能を考えて選ぶこと」がいかに大切かを学ぶことができました。GPS搭載などの最先端技術にも大きな魅力を感じますが、それは規模の大きい専業農家さん・農業法人さん向けであり、おそらく私のような兼業農家にとっては持て余す機能です。

実際に農機のカタログを見ていると、田植機と一口でいってもさまざまなタイプがあることがわかります。日頃から情報にふれてさまざまな農機について知っておくこと、そして自分が作業するときに「こんな機能があるとうれしい」「こんな設計だと作業しやすい」と考えておくことが重要だと感じました。

【農家コラム】地域づくり×農業ライター 藤本一志の就農コラム
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WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
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    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  5. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
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