大雪の前だけでは遅い? 10~11月に見ておきたい農業用ハウスの冬前点検ポイント
10月に入り、北国ではそろそろ積雪に対するハウス対策を……という時期。「雪が降る前に補強する」「寒くなる前に暖房機を点検する」といった作業を思い浮かべる人が多いでしょう。
ただし、雪による被害は一つの原因だけで起きるとは限りません。風で雪が片側に吹き寄せられる、融雪水がハウス周辺にたまる、停電によって暖房が止まる──といった複数の条件が重なることもあります。
そこで今回の記事では、農業用ハウスの冬前点検ポイントと題して、「何を補強するか」だけでなく、「自分のハウスでどこが最初に弱点になりそうか」という視点で、点検箇所とポイントを4つ紹介します。雪国はもちろん、雪が降る可能性のある地域の方もチェックしてみてください。

最初に見たいのは、ハウスの補強材の本数以前に、現在のハウスの状態です。
農林水産省の風害対策資料では、点検箇所として、基礎部や谷樋の腐食・さび、ブレースや筋交いの留め金具の緩み、被覆材の破れやたるみなどが挙げられています。冬前にハウスの周囲を見回り、地際、接続部、妻面や側面、谷部、被覆材や留め具を順番にチェックし、必要があれば補修しましょう。
ここで気を付けたいのが、「補強材を入れてあるから大丈夫」と過信しすぎないことです。
雪は雨と違って屋根全体に均等に積もるとは限らず、風やハウスの配置によって一部分に集中してしまうことがあります。強風時にも、被覆材のばたつきや留め具の緩みなど、弱い部分から負荷がかかります。
そのため、補強のための中柱や筋交いを追加する前に、「以前直した場所」「さびが進んでいる場所」「風を直接受けやすい面」などを把握しておく方が、補強すべき場所を決めやすくなります。
また、譲り受けたハウスや他の農家さんのハウスを管理しているなど、設置時の耐雪・耐風性能がわからない古いハウスなどの場合、施工業者やメーカーの対応が難しい場合もあります。ハウスの仕様が不明な場合は、JAや普及指導センター、専門業者などに強度診断を相談するのも一つの手です。
雪害対策では、重さが心配な屋根に目が向きやすいですが、冬前だからこそハウスの足元も見ておきたいところです。
足元に水がたまると、融雪水が凍結して基礎を持ち上げる「凍上」によるハウスの歪みが起きたり、過湿環境による病害の発生などの可能性が出てきます。
その対策として農林水産省は、ハウス周辺に雨水が滞留しないよう地面を整備し、谷樋や排水溝を清掃することを挙げています。また、主に雪国の融雪期にはハウスの周囲で排水し、融雪水の侵入を防ぐことも紹介されています。
冬支度で考えておきたいのは「雪をどう落とすか」だけではありません。落ちた雪がどこで溶け、その水がどこへ流れるのかまでを一連の対策として、排水経路をチェックしておきましょう。
もしハウス間に雪がたまりやすい、排水溝が残渣や土で埋まっている、軒下が周囲より低くなっている、といった場所があれば、降雪前に水や雪が通るように清掃しておきましょう。
特に複数棟が並んでいる場合は、除雪する場所だけでなく、雪をためてしまうことで排水経路がふさがれないかも見ておくとよいでしょう。

暖房機は、スイッチを入れて動けば点検終了、とは限りません。
冬前にはまず、暖房機本体、燃料タンク、吸排気口を確認します。積雪によって排気口がふさがれると不完全燃焼につながるおそれもあるため、周囲の資材や雪の積もり方、たまり方も確認しておきます。
さらに雪害時には、暖房が作物を保温するだけでなく、ハウス内の温度を確保して屋根雪を溶かし、 滑落を促す役割を持つ場合もあります。加温ハウスでは、降雪時に内張カーテンを開放して熱を屋根面へ伝えるといった対応ができるかどうかのチェックもしておきたいところです。
一方、冬の間も水を作物に届けるためのかん水設備では、凍結への備えが最も重要です。使用しない配管の水抜き、水栓の保温に加え、特にポンプの凍結に注意しましょう。
そしてもう一つ確認したいのが停電時の対応です。非常用発電機などが敷設されていても、実際に暖房機や必要な設備へ接続して動かせなければ緊急時には使えません。
そのため、バッテリーの電圧はあるか、燃料・LPガスなどは十分補充されているか、オイルや冷却水などは問題ないか、停電時の自動始動テストで動作するかなど、本格的な冬に入る前にしっかり確認しましょう。
もしテスト方法がわからない場合は、取扱説明書を確認したり、メーカーや専門業者に点検を依頼することもできます。
「設備があるから安心」とせず、「もし停電したら、トラブルが起きたら、誰が、何を、どう動かすか」まで準備しておくことが冬前の点検で重要になります。
冬前のハウス整備を済ませていても、想定以上の大雪や強風などが予想されるときは、改めて確認が必要です。
中柱や筋交いなど準備していた補強材を設置し、被覆材、マイカー線、出入口、暖房機、燃料、非常用電源などもしっかり確認します。周囲に飛散しそうな資材があれば片付けておくことで、近隣への被害を防ぎ、二次災害を防止できます。
積雪が多い時などは、「雪を早く下ろしたい」と思う気持ちはやまやまですが、ハウス内へ入ること自体が危険になる場合もあります。屋根に大量の雪が乗ってしまったりして倒壊のおそれがある場合には、むやみに内部へ入らず、施設の安全が確保されてから点検・除雪するようにしましょう。
被覆材を切断して倒壊を回避するような緊急対応もできますが、ハウスの構造や積雪状況によっても判断は異なります。特に、園芸施設共済に加入している場合、自己判断で被覆材を切断すると補償の対象外になる可能性もあります。この機会に、どんな状態であれば補償されるのか、どんな対策ならできるのか、事前に農業共済組合等にも確認しておくといいでしょう。
ハウスそのものの主なチェック項目もまとめてみました。問題が見つかったところがあれば、大雪や強風の予報が出てからではなく、播種や収穫がひと段落した9月〜11月くらいの時期に、できる範囲で対応しておきましょう。
ハウスの構造や設置年、地域の気象条件によって必要な対策は異なります。特に構造部分の補強は、自己判断で部材を増やすのではなく、設計時の耐雪・耐風性能も踏まえて判断します(参考::
以上のように、最低限押さえておきたい4つのポイントをご紹介しましたが、事前に準備するというと、どこまで確認すればいいのか身構えてしまいます。
ですが、冬前の点検ポイントの重要な点は、完璧に準備することではなく、いざという時に困らない心構えができているかどうか。事前にチェックしておくだけで、気持ちの余裕が生まれます。
まずは、自分が管理している各ハウスについて最低限のチェックとして、
この3点を書き出してみましょう。
同じ農場の中にあっても、ハウスの建設時期や構造、立地、暖房設備が違えば、それぞれの弱点も変わります。「大雪の予報が出てから」ではなく、冬前にハウスごとの弱点と対応を決めておくことが、降雪や強風への備えになります。
大きな損害に見舞われる前に、できることから準備しておきましょう。
参考資料
農林水産省「農業用ハウスの予防減災情報」
農林水産省「園芸用施設の風害・雪害対策」
農林水産省「園芸施設(ハウス)の融雪出水期の備え」
農研機構「寡雪(かせつ)地域における温室の雪害対策簡易手引き」
福岡県「寒害・雪害対策」
千葉県「農業用ハウス災害被害防止対策について」
ただし、雪による被害は一つの原因だけで起きるとは限りません。風で雪が片側に吹き寄せられる、融雪水がハウス周辺にたまる、停電によって暖房が止まる──といった複数の条件が重なることもあります。
そこで今回の記事では、農業用ハウスの冬前点検ポイントと題して、「何を補強するか」だけでなく、「自分のハウスでどこが最初に弱点になりそうか」という視点で、点検箇所とポイントを4つ紹介します。雪国はもちろん、雪が降る可能性のある地域の方もチェックしてみてください。
1.ハウスの補強|「壊れやすい場所」を対策する
最初に見たいのは、ハウスの補強材の本数以前に、現在のハウスの状態です。
農林水産省の風害対策資料では、点検箇所として、基礎部や谷樋の腐食・さび、ブレースや筋交いの留め金具の緩み、被覆材の破れやたるみなどが挙げられています。冬前にハウスの周囲を見回り、地際、接続部、妻面や側面、谷部、被覆材や留め具を順番にチェックし、必要があれば補修しましょう。
ここで気を付けたいのが、「補強材を入れてあるから大丈夫」と過信しすぎないことです。
雪は雨と違って屋根全体に均等に積もるとは限らず、風やハウスの配置によって一部分に集中してしまうことがあります。強風時にも、被覆材のばたつきや留め具の緩みなど、弱い部分から負荷がかかります。
そのため、補強のための中柱や筋交いを追加する前に、「以前直した場所」「さびが進んでいる場所」「風を直接受けやすい面」などを把握しておく方が、補強すべき場所を決めやすくなります。
また、譲り受けたハウスや他の農家さんのハウスを管理しているなど、設置時の耐雪・耐風性能がわからない古いハウスなどの場合、施工業者やメーカーの対応が難しい場合もあります。ハウスの仕様が不明な場合は、JAや普及指導センター、専門業者などに強度診断を相談するのも一つの手です。
2.排水対策|雪が溶けた後の「水の逃げ道」を確保する
雪害対策では、重さが心配な屋根に目が向きやすいですが、冬前だからこそハウスの足元も見ておきたいところです。
足元に水がたまると、融雪水が凍結して基礎を持ち上げる「凍上」によるハウスの歪みが起きたり、過湿環境による病害の発生などの可能性が出てきます。
その対策として農林水産省は、ハウス周辺に雨水が滞留しないよう地面を整備し、谷樋や排水溝を清掃することを挙げています。また、主に雪国の融雪期にはハウスの周囲で排水し、融雪水の侵入を防ぐことも紹介されています。
冬支度で考えておきたいのは「雪をどう落とすか」だけではありません。落ちた雪がどこで溶け、その水がどこへ流れるのかまでを一連の対策として、排水経路をチェックしておきましょう。
もしハウス間に雪がたまりやすい、排水溝が残渣や土で埋まっている、軒下が周囲より低くなっている、といった場所があれば、降雪前に水や雪が通るように清掃しておきましょう。
特に複数棟が並んでいる場合は、除雪する場所だけでなく、雪をためてしまうことで排水経路がふさがれないかも見ておくとよいでしょう。
3.暖房・かん水設備|停電・凍結で「止まる場所」を確認する
暖房機は、スイッチを入れて動けば点検終了、とは限りません。
冬前にはまず、暖房機本体、燃料タンク、吸排気口を確認します。積雪によって排気口がふさがれると不完全燃焼につながるおそれもあるため、周囲の資材や雪の積もり方、たまり方も確認しておきます。
さらに雪害時には、暖房が作物を保温するだけでなく、ハウス内の温度を確保して屋根雪を溶かし、 滑落を促す役割を持つ場合もあります。加温ハウスでは、降雪時に内張カーテンを開放して熱を屋根面へ伝えるといった対応ができるかどうかのチェックもしておきたいところです。
一方、冬の間も水を作物に届けるためのかん水設備では、凍結への備えが最も重要です。使用しない配管の水抜き、水栓の保温に加え、特にポンプの凍結に注意しましょう。
そしてもう一つ確認したいのが停電時の対応です。非常用発電機などが敷設されていても、実際に暖房機や必要な設備へ接続して動かせなければ緊急時には使えません。
そのため、バッテリーの電圧はあるか、燃料・LPガスなどは十分補充されているか、オイルや冷却水などは問題ないか、停電時の自動始動テストで動作するかなど、本格的な冬に入る前にしっかり確認しましょう。
もしテスト方法がわからない場合は、取扱説明書を確認したり、メーカーや専門業者に点検を依頼することもできます。
「設備があるから安心」とせず、「もし停電したら、トラブルが起きたら、誰が、何を、どう動かすか」まで準備しておくことが冬前の点検で重要になります。
4.大雪・強風の直前|いつもの点検から「緊急対応」に切り替える
冬前のハウス整備を済ませていても、想定以上の大雪や強風などが予想されるときは、改めて確認が必要です。
中柱や筋交いなど準備していた補強材を設置し、被覆材、マイカー線、出入口、暖房機、燃料、非常用電源などもしっかり確認します。周囲に飛散しそうな資材があれば片付けておくことで、近隣への被害を防ぎ、二次災害を防止できます。
積雪が多い時などは、「雪を早く下ろしたい」と思う気持ちはやまやまですが、ハウス内へ入ること自体が危険になる場合もあります。屋根に大量の雪が乗ってしまったりして倒壊のおそれがある場合には、むやみに内部へ入らず、施設の安全が確保されてから点検・除雪するようにしましょう。
被覆材を切断して倒壊を回避するような緊急対応もできますが、ハウスの構造や積雪状況によっても判断は異なります。特に、園芸施設共済に加入している場合、自己判断で被覆材を切断すると補償の対象外になる可能性もあります。この機会に、どんな状態であれば補償されるのか、どんな対策ならできるのか、事前に農業共済組合等にも確認しておくといいでしょう。
冬前に確認したいハウスのチェック項目
ハウスそのものの主なチェック項目もまとめてみました。問題が見つかったところがあれば、大雪や強風の予報が出てからではなく、播種や収穫がひと段落した9月〜11月くらいの時期に、できる範囲で対応しておきましょう。
冬支度の仕上げ|ハウスごとに「3つの弱点」を把握しよう
以上のように、最低限押さえておきたい4つのポイントをご紹介しましたが、事前に準備するというと、どこまで確認すればいいのか身構えてしまいます。
ですが、冬前の点検ポイントの重要な点は、完璧に準備することではなく、いざという時に困らない心構えができているかどうか。事前にチェックしておくだけで、気持ちの余裕が生まれます。
まずは、自分が管理している各ハウスについて最低限のチェックとして、
- ハウスの構造上の弱点はどこか
- 雪や水はどこへ逃がすか
- 電気・暖房・かん水が止まったらどうするか
この3点を書き出してみましょう。
同じ農場の中にあっても、ハウスの建設時期や構造、立地、暖房設備が違えば、それぞれの弱点も変わります。「大雪の予報が出てから」ではなく、冬前にハウスごとの弱点と対応を決めておくことが、降雪や強風への備えになります。
大きな損害に見舞われる前に、できることから準備しておきましょう。
参考資料
農林水産省「農業用ハウスの予防減災情報」
農林水産省「園芸用施設の風害・雪害対策」
農林水産省「園芸施設(ハウス)の融雪出水期の備え」
農研機構「寡雪(かせつ)地域における温室の雪害対策簡易手引き」
福岡県「寒害・雪害対策」
千葉県「農業用ハウス災害被害防止対策について」
【特集】野菜栽培のノウハウ集
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