「玄米には毒がある」というのは本当?

玄米にハマること数カ月。すっかり玄米を炊く生活に慣れた筆者ですが、ある日インターネットをみていたら、こんなウワサを目にしました。

「玄米って、食べ方に気をつけないと毒性があるらしいよ」

ええ、玄米って食物繊維やビタミンが豊富で体に良いでのは……いちど整理しておかなければいけないようです。

玄米毒のウワサとは……?


ためしに「玄米 毒」などのキーワードで検索してみると、出てくる出てくる……!  「玄米は毒?」「無毒化するには?」などの文字が並んでいました。

玄米の毒性に関して書かれているサイトで「毒の理由」として挙げられていた説は、主にこの2点。

「玄米のアブシシン酸が人の細胞内のミトコンドリアを傷つける」説
「玄米のフィチン酸でミネラル不足になる」説

さらに、それらを「無毒化」するには「玄米を長時間浸水して発芽モードにすれば良い」と書かれているサイトが多く見られました。

玄米のアブシシン酸・フィチン酸って何?

ザワつく心を抑え、いったん基礎的なことを確認しましょう。玄米毒の理由とされる2つの物質「アブシシン酸」と「フィチン酸」とは、一体何なのでしょうか。

・アブシシン酸とは
「アブシシン酸」は植物の生長や生理活性を調節する「植物ホルモン」として知られている化合物。植物全般に存在するほか、菌類や藻類、動物細胞からも検出されている。

植物中でのアブシシン酸は、植物が乾燥や低温などのストレスにさらされると合成される。葉の気孔を閉じることや、種の発芽を抑制すること、花の開花や果実の熟成などにも関わっている。

・フィチン酸とは
「フィチン酸(イノシトール6リン酸)」は、植物の三大栄養素のひとつであるリンの貯蔵をする役割のある物質で、特に種子に多く蓄積される。

フィチン酸は金属元素と結合しやすい性質を持ち、種子の中ではカルシウムや鉄などの金属元素と結合した状態で存在している。

どちらも植物にとって無くてはならない物質ですね。これらに毒性があるって、本当なのでしょうか?

本当に玄米は毒なのか?


玄米の毒性の原因としてウワサされている「アブシシン酸」や「フィチン酸」は、本当に人体にとって毒なのでしょうか?

「玄米のアブシシン酸が人の細胞内のミトコンドリアを傷つける」説について


まず、アブシシン酸について語られているこの説です。アブシシン酸は植物全般に含まれている化合物です。つまり、私たちは日常的にさまざまな植物からアブシシン酸を摂取しているということになるので、もしもアブシシン酸に毒性があるのであれば一大事です。

「毒性がある」説の妥当性を調べるため、まずはそのような情報を掲載しているサイトをいくつか読んでみました。しかし、その科学的根拠として信頼性の高そうな情報にまで言及しているサイトを見つけることはできませんでした。

次に、国の機関が発する情報に絞り込んで探すと、日本の食品安全委員会の「食品安全総合情報システム」に関連情報を見つけることができました。

それによると、2010年に米国環境保護庁が、植物調節剤(植物の成長を調節する作用のある農薬)として用いられるアブシシン酸の安全性に関して、「幼児や子供を含めた消費者に危害が生じる可能性はないという結論に至った」と公表したとのこと。

したがって、現時点では、アブシシン酸が人の健康に害を及ぼす可能性は、かなり低いと考えられます。

「玄米のフィチン酸でミネラル不足になる」説について


続いて、フィチン酸についての情報を探してみました。

国立健康・栄養研究所の「『健康食品』の素材情報データベース」によると、確かに、フィチン酸にはミネラルの吸収阻害作用があるそうです。

フィチン酸は金属元素と結合しやすい物質であり、サプリメントなどでフィチン酸を摂取した場合には、食事から摂取したミネラルがフィチン酸に捕らえられ、体内に吸収されずに排出されてしまうことも起き得るようです。

玄米に含まれるフィチン酸の場合は、すこし事情が異なります。

玄米の中のフィチン酸は、人の体内ではミネラルと強く結合した「フィチン酸塩」の状態となると考えられています。人の消化器官では、水に溶けにくいフィチン酸塩は消化できないため、人は玄米に含まれるミネラルの多くを吸収することができないという可能性があります。

したがって、玄米の中のフィチン酸は、人が玄米に含まれるミネラルを摂取したい場合に厄介な存在であることは確かなようです。

しかし、だからといって「玄米のフィチン酸でミネラル不足になる」と考えるのは、やや短絡的かと思います。先述したとおり、玄米のフィチン酸はすでにミネラルと結合した状態であるため、消化器官の中で他の食品由来のミネラルを大量に奪い去っていくとは考えにくいからです。

食事全体の栄養バランスが極端に主食に偏っている場合には注意をしたほうが良さそうですが、動物性食品や野菜や海藻などの副菜からミネラルを摂取できる限りは、玄米によるミネラル欠乏はそれほど心配することはないと思われます。

簡単には断定できない健康についての情報

今回調べたアブシシン酸とフィチン酸の他にも、インターネット上にはさまざまな健康に関するウワサが溢れています。その中には、正しいものも誤っているものもあるでしょうし、一部は正しく一部は誤っている場合もあります。

たとえば、「玄米には農薬が残留やすい」という説。お米に農薬が残留する場合、ぬか層に多く含まれている傾向があります。したがって、玄米は同じお米を精米して白米にした場合よりも多くの残留農薬が含まれる可能性が高いので、この説は正しいと言えます。

しかし、「だから玄米は農薬不使用で作られたものを買いましょう」と書かれていたとしたら、必ずしもそれは正しい考えとはいえません。なぜなら、栽培中に農薬を使用しなかった作物に農薬が残留している場合もあるからです。

残留農薬の摂取を避けることが目的であれば、「収穫後に残留農薬検査をして不検出の結果が得られたお米を買いましょう」とする方が適切といえます。

インターネットでも確かな情報を確認しよう

以上のように、食の安全や健康に関する情報は複雑で、正しいか間違っているかを瞬時に判断するのは、一般消費者にとってはとても難しいことです。筆者の場合、ネットで新しいウワサに出会ったときには以下の点を確認するようにしています。

  • 発信者が誰かが明確か
まずはその情報が掲載されているサイトの運営者を確認します。国などの行政機関、大学などの学術機関、新聞社やテレビ局、雑誌、個人ブログなど、さまざまな発信者が平等に情報発信できるのはインターネットの強みではありますが、運営者が明らかにされていないサイトも少なくありません。

  • 情報源が明確か
次に、その論の根拠となっている情報源を確認します。本文中に書かれている場合もあれば、本文とは別に示されている場合もあります。

  • その情報源の信頼性は
最後に、情報源そのものを確認しに行きます。省庁・研究機関や新聞社などの大手メディア、専門家による監修つきの出版物や教科書等を情報源としている場合、そのウワサは信頼性が高いといえるでしょう。

その他の情報源に関しては注意が必要で、できれば複数の情報源を探して総合的に判断することをおすすめします。

ポイントを簡単にまとめます。

・企業のホームページの場合:
企業の広告宣伝の意図が含まれている可能性があるという前提で読みます。
・研究論文の場合:研究論文があるというだけでは、その論文に書かれていることが信頼できるとは言えません。
・ソーシャルメディアや個人ブログの場合:食の安全や健康に関わる情報の根拠として採用するのは不適切と考えます。

正しく調べて、おいしく食べる

玄米に限らず、食べ物にまつわるウワサは数多くあります。「◯◯を食べると良い」「◯◯は体に悪い」などの情報を目にしたとき、まずは一呼吸置いて、情報の正しさについて確認する習慣をつけたいですね。


■あんしん・安全な玄米を選ぼう!


玄米を食べていると農薬の問題が気になる方も多いのではないでしょうか。

お米に残留農薬がある場合、農薬は油に溶けやすい性質があるため、7割〜8割は脂質が多いぬかや胚芽の部分にたまるとされています。ぬかや胚芽は精米すれば取り除かれる部分ですが、それらが残ったままの玄米で食べる時には少し気をつけたいところ。

玄米を選ぶ時には、「農薬残留検査」をしっかりした商品を選びたいものです。

全国各地のこだわりの農家さんとつくっている「スマート米」は、AI・ドローンなどを用いて農薬の使用量を抑えて育てたお米です。

スマート米は、玄米の状態で第三者機関の検査により「残留農薬不検出」と証明されたお米、農林水産省ガイドライン「節減対象農薬50%以下」のお米、そして「特別栽培米」もお選びいただくことができます。

●レンジで簡単に玄米生活! パックごはん「寝かせ玄米ごはん」


電子レンジで約2分温めるだけでもちもち食感のおいしい玄米が食べられるレトルトごはん「国産スマート米 寝かせ玄米ごはん」もご用意。

圧力釜で炊き上げた後、3~4日寝かせる「寝かせ玄米(R)」の製法で仕上げているので、玄米特有の食べにくさがありません。

忙しい方や、お弁当に持っていく方、家族の中で自分だけ玄米を食べるという方も、いつでも手軽にふっくら玄米をお召し上がりいだだけます。

お求めはスマート米オンラインショップ SMART AGRI FOODからどうぞ。



植物ホルモン・アブシシン酸の進化と機能
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/55/4/55_256/_pdf/-char/ja
アブシジン酸 - 光合成事典
https://photosyn.jp/pwiki/index.php?%E3%82%A2%E3%83%96%E3%82%B7%E3%82%B8%E3%83%B3%E9%85%B8
植物種子の金属蓄積に果たすリン貯蔵物質の役割を解明 | 東京大学大学院農学生命科学研究科
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2012/20121106-2.html
食品安全総合情報システム
http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu03090380108
「健康食品」の安全性・有効性情報(イノシトール)
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail607.html#2
フィチン酸について | みんなのひろば | 日本植物生理学会
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=473
米(玄米)に残留する農薬の調理による減少|愛知県衛生研究所
https://www.pref.aichi.jp/eiseiken/3f/kome.html
【コラム】今日から始める玄米生活
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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