日本人の常識は当てはまらない「海外で売れる米商品」とは【田牧一郎の「世界と日本のコメ事情」vol.24】

海外には米を使った料理がたくさんあります。国によって地方によっても異なりますが、その土地で生産されている種類の米が、最も合理的で安価に必要な時に手に入る食材です。その要因もあって、それぞれの文化として米を使った料理があるのだと思います。

私は以前、実際に世界の米の生産現場を訪問したり、カリフォルニアから白米を輸出するために訪問したりした国で食べた米について、その特徴をまとめてみたことがあります。私たち日本人が持っている米の感覚とは若干違いがありますが、その好みの違いを知ることが日本産米の輸出を成功させる上では大切です。

今回は、私たち日本人の米の常識とはまったく異なる、海外での米の消費事情について、ご紹介したいと思います。


世界のコメ料理


まずは、世界で親しまれている米を使った料理を見ていきましょう。

①日本(日本産短粒種)──白米を炊飯してごはんとして、副食(おかず)と一緒に食べる食べ方


日本食の中の主食としてのごはんは短粒種、ジャポニカ米とも呼ばれる。
炊飯米の色は白く、光沢があるものが好まれる。炊飯した白米の粘りや弾力を楽しむため、硬すぎるご飯や柔らかすぎるご飯は嫌われる。ごはんの香りや食べた時に感じるかすかな甘さなど、強すぎる味や香りは嫌われる。


②中国(長粒種)──白米を煮たり炒めたりして肉や魚介類と一緒に調理する米料理


チャーハンなど、中華料理のメインディッシュとしての米料理。中国では、南部で生産されている長粒種を中心に、タイやベトナム産の長粒種も使われている。
煮ても炒めても米粒が崩れない、硬い白米を使用。カリフォルニア産中粒種も、粒が硬く煮たり炒めたりする料理に使われている。


③地中海(長粒種)──スパイスで味をつけて食べる米料理


地中海沿岸の国々や中南米は、煮崩れしにくい、硬い長粒種白米を使ったのパエリアが有名。
イタリアやスペインを代表する米料理では、米を地中海の魚介類の味に合わせて、スパイスで強い味をつけて食べる。


④アジア(中粒種)──中華粥などの炊き込みに使われる米料理


香港やシンガポールのホテルの朝食などで、「中華料理の粥」として好まれているのは中粒種。白く(白度を少し高くして仕上げた)精米した白米を好んで使っていた。
カリフォルニア産中粒種の中にも、粘りのある柔らかい粒の品種があったが、現在はほとんど栽培されていない。


⑤イタリア(イタリア産短粒種)──イタリア料理のリゾット


イタリア産の粒の大きめな短粒種は、粒の表面を柔らかくして、バターでからめて味をつけて食べられている。パスタと同様に、米粒の芯に残る硬さが良いと評価され、リゾット専用品種もある。
以前、カリフォルニア産コシヒカリ白米で、高級レストランのシェフに試食させてもらったことがあるが、粒全体が柔らかく調理されており、個人的には「専用品種のリゾット」より美味しく感じた。


⑥韓国(短粒種)──白米やビビンパなどの混ぜご飯


韓国系の方々には、日本人の好みと似た粘りの強い品種を白米にして炊飯したごはんが喜ばれる。
アメリカ国内の韓国系スーパーに白米を販売していた時には、小売店や卸売業者のコメントで、韓国系の方々に売れるコメの条件として説明を受けていた。


⑦東南アジア諸国(長粒種)──ナシゴレンやガパオライスなど


タイ・ベトナム・ミャンマーなどでは、長粒種の白米を蒸す、あるいは煮て柔らかくして、副食と一緒に食べている。
粘りのない粒のため、調理してもべたつかないことが米を食べやすくしている。


日本の米が受け入れられる地域・文化・料理はどれ?


以上、私が実際に南米や東南アジアで食べた米料理から、その米粒の特徴や栽培と収穫後の対応と精米処理の違いなどの調査を行ってきた、世界で売れていた米を紹介してみました。

各地方で代表的な品種を使っていたりしますので、日本品種で簡単に代替えできるかは疑問があります。ただ、日本には日本食である寿司用に適した米もありますし、チェーン化された回転寿司の全国展開によって、特徴のある米は逆に使いにくい食材になってしまったのかもしれません。


では、アメリカを中心にした海外の寿司屋さん(回る寿司もあります)が、どのような米を使っているかというと、カリフォルニア産中粒種が圧倒的に使われています。このマーケットに、日本から日本産短粒種の中で寿司に使われている「寿司用好適米」として売り込むのも面白いと思います。

ちなみに、アメリカで寿司を握っている職人さんに直接的・間接的に聞いた「握り寿司に適した米は、日本の米(短粒種)」との答えがほとんどでした。ただし、コシヒカリは「粘りすぎる」ということは言われていました。

日本でコシヒカリのように甘さ・粘り・弾力のある「おいしい米」を丹精込めて生産してきた農家の方々にとっては、海外での米の食べ方・調理のしかたは、いままでの米づくりの技術や販売を根底から覆されるようなものかもしれません。しかし、これが世界の米消費の現実です。

そして同時に、「特別おいしい、食味の高いコシヒカリ」を作り販売し続けるのも、大切なことだと思います。いい悪いではなく、ニーズに合うものをそれぞれが作ればいいのです。


これからの日本の米づくりのあり方を考えよう


私は、日本産米を海外で販売するために、「コシヒカリ」のようなうまさはなくとも、たくさん売れる=ニーズがある米を作って輸出するのも、これからの日本の米づくりの道のように思います。粘りのある日本産米も、海外で売れそうなさっぱりした日本産米も、それぞれ現状をよく見て学び納得して、これからの方向を選択することが大事です。

農林水産省や海外に日本産米を輸出している業者などから得られる米の輸出に関する情報については、「発信されている情報」が少なすぎるのかもしれません。輸出量が増えた、輸出額が増えたという情報は大切ですが、大事なのはどんな日本産米が売れて、それはどんな理由だったのかということ

日本でも海外の料理を提供してくれる店はたくさんあり、実際に食べてみることで海外の米食文化は学べます。海外の米産地を訪問して、現地の米料理を食べてみるだけでも、たくさん学ぶことができるでしょう。日本が誇る米の専門家である生産者も、もっともっと現地の生の様子を見て学ぶ必要があります。

そのような経験と勉強の中から、日本がきちんと世界の国々に買ってもらえるような輸出米を作っていく道が開けていくのだと思います。
【連載】田牧一郎の「世界と日本のコメ事情」
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  4. 大槻万須美
    大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  5. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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