食味の高い日本産米がなぜアメリカでは売れないのか?【田牧一郎の「世界と日本のコメ事情」vol.27】

これまで述べてきたように、日本で生産されているのはほとんどが短粒種で、「ごはん」にするコメの品質的な価値が高いことは間違いありません。

アメリカで生産・流通しているごはんにして食べるコメは、カリフォルニアで生産された中粒種と短粒種ですが、その品質はアメリカ国内で定められている「USグレード」です。日本とは異なり、どちらかと言えば粒の形や色、割れた粒砕米」の混入率でグレード(等級)を決めていますが、これは他の穀物と同様の基準となっています。


一方、日本産のコメは玄米や白米の外観と形に加えて、粒に入っているヒビ割れ(胴割れ米)まで品質評価に含めています。さらに、炊飯後の艶や味や香りなど、長年にわたって培われてきた食べるところまでの品質も重視しながら生産して、流通市場に提供してきました。この意味で、日本産米の方が品質が高いと言えるわけです。


しかし、このコメを商品として市場に出した時には、品質以外のいくつかの要素によって売れるかどうかが決まります。コメの品質は大きな決定要素ではあるものの、それだけで決まるわけではありません。


日本から輸入されたコメは安くても売れていない


では、高品質と言われる日本産米は、現在海外ではどのように扱われているのか。アメリカ西海岸の規模の大きなスーパーマーケットや、小規模の日本食小売店のコメ売り場を見学してきました。

アメリカのコメ売り場にたくさん置いてあるのは、当然のことながらカリフォルニアで生産され、生産地にある精米工場で精米・袋詰めされた商品です。カリフォルニアでも20年前頃から、日本で開発された「コシヒカリ」や「あきたこまち」が栽培され始め、コメ売り場の棚に並べられ、パレットに乗せられたままで販売されています。

その中で、日本産米は北海道産のブランド白米、東北の青森県・秋田県・岩手県・宮城県・山形県産米などが、2㎏や5㎏の袋に入って多くの小売り店で販売されていました。アメリカ市場に福島県産米が入ったのは1年前のこと。福島県産米はアメリカ政府の輸入禁止措置によって、ここしばらく輸出できませんでした。これから産地から本格的な輸出と、アメリカ国内での販売に力が入ることになります。


店の売り場で並んで販売されているカリフォルニア産米と比べると、「日本産米は売れているのか?」という疑問がわいてきました。当然、商品の販売価格は販売店が決めますが、カリフォルニア産コシヒカリの5㎏袋に入った白米の1kg当たりの単価と、日本産コシヒカリ5㎏袋(日本から輸出された白米)商品の単価を比べると、カリフォルニア産の「コシヒカリ」や「あきたこまち」の方が日本産のコシヒカリよりも高く販売されていました。

売り場に合った一般的な商品「7つの銘柄平均」で比較すると、1㎏当たり255円(1ドル=150円)も高くなっています。生産コストが高く、産地から港まで、さらに太平洋を越える輸送コストをかけて運ばれてきた日本産米が、大規模な水田で大型機械を使って低コストで栽培されたカリフォルニア産コシヒカリ白米より安価に販売されているのです。

ドルと円の為替相場が円安に大きく振れており、これだけの価格差がありながらも、日本産の輸入米が飛ぶように売れているようには見えませんでした。


売る側、買う側の日本産米への評価



販売店の棚に並んだ複数の商品の中から、消費者が日本産米を選ぶ理由は何かを考えれば、売れるコメの分析に役立ちます。ひいては、売れるコメ作りをするための重要なポイントを見つけることができるようになるでしょう。

一つは「味の良さ」です。
調理の仕方と食べ方によって、その味の感じ方は異なります。購入者のそれまでのコメを食べてきた経験から、自らの食事に適したコメの味があり、調理方法があります。そのうえで、最も良い味を感じることができるコメを選び、購入して調理し食べることになります。この点がアメリカの方にどう伝わるか。

二つ目は「価格の違い」です。
コメの購入を決める際、購入者はその価格も同時に考えています。同じように思えるコメとの比較をして、安価なものを選ぶようになるでしょう。

アメリカの小売り販売市場で日本産米と競合しているのは、カリフォルニアで生産された中粒種と短粒種(日本で開発された「コシヒカリ」や「あきたこまち」)です。これらが、福島県産のコメの直接的なライバルとなります。

※※※

カリフフォルニアでの日本産米が置かれている現状を3回に渡ってリサーチしてきました。円安の影響、カリフォルニア産の中粒種、短粒種の存在、そして日本人とは異なるアメリカでのコメの品質や味の評価などが見えてきました。

そして、これらの情報をもとに、いよいよ福島県産米の輸出をスタートさせていきます。日本産米の世界進出を成功させるために私が取り組んでいることとともに、今後の過程やその時に感じたことについてもレポートさせていただく予定です。
【連載】田牧一郎の「世界と日本のコメ事情」
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WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  4. 大槻万須美
    大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  5. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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