農業大学校を卒業しました!【農家見習い・さわちんの「リアルタイム新規就農日記」第21回】

「SMART AGRI」をご覧のみなさん、こんにちは。さわちんと申します。

現在38歳で、妻と小学生の子ども2人の4人家族です。

前回は、私がオススメのおいしいかんきつをご紹介しました。“かんきつ”とひとことでいってしまえばそれまでですが、実にたくさんの種類があります。一つ一つ味や香りも違いますし、なによりその歴史が違います。野生からできたもの、突然変異からできたもの、研究者が交配を繰り返してできたもの……などなど、調べてみると結構おもしろいんです。

皆さんもぜひ、推しのかんきつを見つけていただければうれしいです!

さて、春といえば卒業の季節。さわちんも、1年通った徳島県立農業大学校「かんきつアカデミー」を卒業することとなりました。今回はかんきつアカデミーで過ごした日々を振り返りながら、独立就農のスタートをご報告できればと思います。



かんきつアカデミーの思い出 ~最初の難関・苗木の定植作業~

かんきつアカデミーに入学して、最初につらかった作業と言えば、苗木の定植作業。定植作業とは簡単にいうと「植える」ことです。

皆さんも小学校の時など、卒業記念として木を植えませんでしたか? 友達皆でスコップを交代で使って、丁寧に1本の木を植えたことがある人も多いのではと思います。

しかし、かんきつアカデミーではそうはいきません。同級生3人で十数本の苗木を植えていきます。幅1m・深さ50cmの穴を苗木の本数分スコップやツルハシでえっさほいさと掘っていきます。サラリーマンだったさわちんはとにかく体力がなくて、ぜぇぜぇ言いながら少し休んでいると、先生に「そんなんじゃ、農家になれないぞ~(笑)」と笑われたことを覚えています。

これからは、自分の圃場で自分1人で実践しなければなりません。くじけないようにしなければ……。写真は、習った知識を生かして庭に植えた記念樹です。



かんきつアカデミーの思い出 ~最大の難関・防除作業~

次につらかった作業といえば防除作業。以前の記事でも紹介しましたが、暑い中ゴーグル、マスク、カッパ、ゴム手袋、長靴の完全防備で圃場を動き回ります。大変すぎて、「かんきつアカデミー、やめてしまおう!」と本気で考えたものでした(笑)。

でもこの作業を行わないと、美しい果実を収穫することができません。汗でびしょびしょになりながら、ホースがこんがらがりながら、意識朦朧としながらやり遂げていました。先日、最後の防除作業を行ったとき、少し涙がこぼれたんだとさ。



かんきつアカデミーの思い出 ~たくさんのことを学んだ農家実習~

かんきつアカデミーのカリキュラムには、実際の農家さんのもとを訪れ、作業を手伝いながら学ぶ「農家実習」があり、計6軒の農家さんでお世話になりました。

それぞれの農家さんが成功談や失敗談を包み隠さず教えてくださり、大変参考になりました。が、作業はもちろん“しっかりめ”にやらなくてはいけません。そのおかげで、毎日くたくたになって帰宅したことを覚えています。

いまだにお世話になった農家さんとは繋がっていて、「今度遊びにおいでよ~! 」と言ってもらえるほど。もちろんおうかがいしたら、何かお手伝いはしないといけないと思いますけど(笑)。

写真は、ある農家さんのお宅から見える風景です。



かんきつアカデミーの思い出 ~大変だったけど美味しかった収穫作業~

基本、つらいことばっかりでしたが(笑)、待ちに待った収穫のシーズンは心が躍ったものです。

実際の収穫作業は結構大変だったのですが、収穫してすぐに食べるかんきつの甘酸っぱい味は例えようがない美味しさでした。それに、いろんな種類のかんきつの香りや味を確認できたのも良かったと思います。おかげで前回の記事をひねり出すことができましたから(笑)。

これからも収穫の季節にはアカデミーにお邪魔して、おすそ分けしてもらおうとたくらんでいます。



かんきつアカデミーの思い出 ~管理作業の総仕上げ剪定作業~

かんきつアカデミー最後の授業は「剪定」でした。剪定の大切さは以前の記事でもお伝えしましたが、さわちんの場合は自分の圃場でもさっそく実施しなければなりません。

しかしこの剪定、とっても難しいんです。

先生に何度も指摘されて、20~30本切った頃でしょうか、「日に日に良くなっていってますね」とのお言葉をいただきました。グッときたのは、言うまでもありません。

この言葉をもって、かんきつアカデミーのすべての授業を無事終了することができました。



かんきつアカデミーの思い出 ~さよなら! かんきつアカデミー 修了式~

去る3月25日、令和2年度かんきつアカデミーの修了式が執り行われました。

まずはプレゼンテーション。入学してすぐにテーマを決め、1年かけて取り組んできたのですが、この日はその成果を発表しました。

私のテーマはずばり「防除の省力化」について。昨今の農業者の減少と高齢化のためにも、重要な課題と考えて取り組みました。満足いく結果とまではいきませんでしたが、自分なりに一つの結論が出たと思っています。

プレゼンテーションが終わり、式も終盤にさしかかる頃、先生からのお言葉をいただいている最中、走馬灯のように思い出が駆け巡り泣きそうになりました。ぐっとこらえて無事修了証書をいただき、晴れて卒業生となったさわちんでした。

ここで得た知識、技術、経験、そして人との繋がりは、私のこれからの農家人生において糧になることは間違いありません。


ついに農業生活がスタート! その名は「コケチンファーム」

かんきつアカデミーを卒業し、2021年4月1日に開業届を提出しました。長い間構想し、家族を連れて徳島県へ移住し、たくさんの人に支えられて、ついに独立就農することができました。

屋号は「コケチンファーム」。大好きなコケチ(飼っている鶏)とチンゲンサイを掛け合わせました。イケてる名前と自負しています(笑)。ロゴは現在作成中……。

これからは、一人の農家として歩いていかなければなりません。しっかり気を引き締めて、体を壊さないように頑張っていきたいと思います。

次回は、ついに農家としてのデビューを果たしたさわちんの、1日の生活をお伝えしたいと思います。サラリーマン時代とは全く異なる生活に、バッタバタのさわちんの模様をお楽しみ!

【農家コラム】さわちんの「リアルタイム新規就農日記」
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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