ユズの収穫は思ったよりも大変!【農家見習い・さわちんの「リアルタイム新規就農日記」第12回】

「SMART AGRI」をご覧のみなさん、こんにちは。さわちんと申します。

現在38歳で、妻と小学生の子ども2人の4人家族です。

前回は、ビニールハウスができるまでの作業について、お伝えしました。

骨が折れる作業が盛りだくさんで、農家さんは野菜作りだけでなく、大工さんのような作業も必要になるのだということを知りました。ますます農家さんへのリスペクトが止まらない今日この頃です。


いよいよ収穫の秋! ユズの収穫をご紹介します

さて、今回は収穫の秋! ということで、徳島県で盛んに栽培されているカンキツ「ユズ」の収穫について皆さんに知っていただこうと思います。

ユズといえば、鮮やかな黄色をした果実で、その独特な香りと爽やかな酸味が特徴です。冬至にはお風呂に入れて「柚子湯」を楽しむ方も多いのではないでしょうか。他にも果汁を搾ってお酒に入れたり(さわちん一番のオススメ! )、ゆず味噌を作って大根にあわせたりと、とっても美味しく食品としての魅力もたっぷり。

また、皮や種を利用したアロマオイルや、化粧品なども市販されており、「捨てる部分が無い果実」としても有名です。


そんなユズですが、皆さんの手にわたるまでにたくさんの苦労があることをご存知でしょうか。

さわちんの話は苦労話ばっかりだ! という方もいらっしゃるかもしれませんが、手に取ったときに、少しでいいので農家さんに「ありがとう」の気持ちを持ってもらえるとうれしいです。


スダチの比じゃない! ユズの鋭すぎるトゲ

まず、農家さんの共通認識として、ユズの苦労でぶっちぎりの第1位といえば、鋭いトゲ!  第7回の記事でスダチにはトゲがあって痛いとお伝えしましたが、ユズはその比じゃありません。実際にあった話で、ユズのトゲを踏んづけてしまい、ぶすっと刺さったトゲが足の中で折れ、病院で切開手術をした方もいるそう……。

それほどまでに鋭いトゲから自分の身を守るために、帽子をかぶり、溶接作業用の手袋と、釘の踏み抜き防止用に金属で作られた中敷きの靴で作業を行う方が多いです。

さらにこのトゲ、その鋭さゆえに果実を傷つけてしまうのです。

風で果実が揺れたときにブスッ、果実が大きくなるのを待ち構えていたようにブスッ。頑張って実らせた、自分の子どもである果実をトゲで串刺しにするなんて、ユズの木って何を考えてるんだろう……とつくづく思います。

果実に傷がついてしまうと、変色してしまったり、場合によっては腐ったりすることもあり、商品価値が著しく下がります。そのため、農家さんによっては、このトゲを一つずつ切ることで、果実に傷がつくことを防ぐという方も。ちなみにトゲは、大きい枝から小さい枝にいたるまでびっしりと生えていますので、自分がケガをしないように集中して作業を行います。


私も実家での収穫作業の際に、木に潜り込んで果実をとろうとしたときに、帽子にトゲがささったり、腕にとげがささったりして、イテッと思ったことが何度もあります。帰ってからお風呂の湯舟に浸かると、体中染みて痛かったことが思い出されます。


防除から収穫まで……手間がかかることを丁寧に

次の苦労といえば、防除作業ですね。写真のような鮮やかな黄色にするためには、黒点病、そうか病などの病気、サビダニ、チャノホコリダニ、訪花昆虫といった害虫から守ってあげる必要があります。そのため、収穫までの間に十数回の防除作業を行わなくてはいけません。

特に、梅雨明けから夏にかけての暑い時期に防除作業が集中します。防除作業の大変さについては、第6回の記事にてご紹介しましたが、それを十数回も!! 想像するだけで、汗が出てきます……。

最後の苦労はやっぱり収穫作業。先に記載したように鋭いトゲをよけながら、一つ一つハサミで収穫していきます。収穫の際にハサミで果実に傷をつけてしまうと、これまでの苦労が水の泡になってしまうので、まずは枝を長めに残して木から切りとります。


それから、ヘタの部分をできるだけ残さずに切りとります。


これを「2度切り」といいまして、ユズに限らずスダチやミカンといったカンキツの共通の切り方になります。

つまり果実の数の2倍ハサミを使うことになりますし、高い所は脚立に登ったり、それでも届かないところは高枝切りばさみを使ったり。ハサミで切り離したあと、収穫かごにしまうときも、できるだけ振動を与えないように、そっと置きます。果実を投げたり、高い所から落とすのは絶対にNG。

黄金色に染まるほど実っている木を見ると、うれしい反面、収穫を考えてげっそりするのだそう。

収穫後は、持ち帰って大きさと品質の選別を行います。選別が終わったものから箱やパックに詰めて出荷し、やっと農家さんの仕事は終わりになります。

いかがでしたか。どの作物でもそうですが、いろんな苦労が結びついて果実ができるんですよね。特にさわちんの実家でもユズを栽培しているので、少々熱がこもりすぎたかもしれません。

皆さん、ぜひユズを手に取って、食事や生活にいろどりを加えてもらえるとうれしいです。

そういえば、先日かんきつアカデミーにてドローンを利用した講義と実習がありました! 果樹栽培のスマート化はどこまで進んでいるのか!? 次回はそちらの模様をお伝えしようと思います、お楽しみに。

【農家コラム】さわちんの「リアルタイム新規就農日記」
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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