この手で農業のイメージを変える! 私が就農を目指すまで【農家見習い・さわちんの「リアルタイム新規就農日記」第1回】

「SMART AGRI」をご覧のみなさん、初めまして。

さわちんと申します。

現在37歳で、妻と小学生の子ども2人の4人家族です。

イラスト:ヤマハチ
私は新規就農を目指して、2020年3月に家族で千葉県千葉市中央区から徳島県阿南市に移住しました。

この4月から1年間、徳島県立農業大学校へ通いながら、就農するための農地を探す予定です。

といっても、これまで農業の経験は全くなく、ましてや就農をするなんて夢にも思っていませんでした。

もちろん移住するなんて構想もありませんでした。

家族に今のところの感想を聞いてみると、田舎生活はまずまずのスタートのようです。何をするにも車が必要だという不便さはありますが、ご近所さんから美味しい果物や野菜を頂けたり、広い家に住めたりと、メリットもたくさんあります。

何より、大自然!! 都会に比べて明らかにきれいな空気と、夜空の星の数は、これまでの生活では考えられませんでした。

子どもたちが成長するにつれ、もっと便利な所で暮らしたい! と言うのではないかとドキドキしていますが、ここで暮らしていく時間は、家族にとって財産になると確信しています。

さて、ここからの内容は、私が就農を目指すまでの経緯や、新しく農業者になっていく成長の過程で起こるさまざまな経験、体験を余すことなく皆様にお伝えしていく「リアルタイム就農日記」となります。


IT業界から徳島での就農を決めるまで

就農を目指す前の私は、IT企業の保守部門に15年ほど勤務していて、お客様の大切なアプリケーションを動かすシステムにおいて、故障に伴う停止をできるだけ短くするために、さまざまなIT技術を習得、駆使してきました。また、習得した技術を生かして、お客様システムの構築も行ってきました。

お客様と多くの対話をしていく中で、今度は会社を成長させるための部門で活躍したいと考え、サービス企画部門に異動し、新サービスを企画、実現するような業務を行っていました。

IT企業での仕事はとてもやりがいがあり、厳しい場面も多々ありながら、充実した日々を過ごしていました。

そんな日々を過ごしてたある日のこと、両親とその年の帰省スケジュールについて話をしていたとき、父と母が徳島県那賀郡那賀町の旧木頭地区にある祖父母の農地で、柚子の栽培をしていることを知りました。

祖父母の農地は、祖父が亡くなってからは祖母一人では維持が難しく、また他人に譲渡するわけでもなく、放置されていると思っていたのです。

最初聞いた時の感想は、「へぇ」くらいで、特に何も思いませんでした。父は定年を迎えており、老後の楽しみの一つとしてやっていくんだろうなぁと。

そこからまた時がながれ、通勤中にスマホでネットサーフィンをしていると、「木頭ゆず」がGI登録されたという記事を見つけました。

GI登録とは、「地理的表示保護制度」のことで、生産業者の利益の保護を図ると同時に、農林水産業や関連産業の発展、需要者の利益を図るような取り組みのことです。「神戸ビーフ」「夕張メロン」などが有名ですよね。

また、GI登録のほかにも、木頭ゆずがフランスなどのEU諸国への輸出を行い、高い評価を得ていることも知りました。


両親いわく、「農業なんて仕事、やっちゃいけない」

旧木頭地区はいわゆる「ど田舎」で、過疎化が進んでいることもあり、ゆず生産者が減ると、高い品質の維持が難しくなるかもしれません。それを打開するための施策が打てれば、村おこしも兼ねたビジネスにつながるのではと考えました。


そして、木頭ゆずの加工を手がける会社では、売り上げが2000万円近くにものぼったという情報もあり、挑戦してみる価値があるのではと思うようになりました。なにより、幼いころ大自然いっぱいの祖父母の家に泊まりに行くのが楽しみで、大人になった今、何か力になれればという思いもあったのです。

そこで2018年7月、家族で帰省した私は両親に、柚子の栽培を継ぎたいという話をしてみたのでした。GI登録におけるチャンス、過疎化する村をどうにかしたい、などいろんな話をしたと思います。

私自身、内心は喜んでもらえるものと思っていました。家業を継ぐ息子を温かく迎えてくれる両親。ドラマで見たような場面を想像していたのですが……。

結果は激しい反対でした。考えを変えないのなら、土地はすべて売るとまで。

柚子で得られる収入はスズメの涙ほど。今の設備や環境で家族を養っていけるほどの稼ぎが得られるはずがない。そもそもこんなつらい仕事、できるはずがない。農業やったことないでしょ? 子どももまだ小さくて、これからお金がかかっていくし……。当たり前といえば当たり前のことをのべつまくなしに……。

今思えば当然な気がします。収支の計算もせず「イケそう、面白そう」といった軽い気持ちで相談してしまったので。

ただ、両親に怒鳴られている中で、「農業なんていう仕事、やってはいけない」といった言葉をかけられたことに、ピクッときました。


農業のイメージを変えたい、そのために……


少し時間を遡りまして、帰省して両親に相談する前に、日本の農業を取り巻く現状について調べていました。そして驚きの連続でした。農業が“待ったなし”の厳しい状況にあることを知ったからです。

生産者の高齢化に伴う農業人口の減少、安価な輸入食材の台頭、農作物の価格の下落など、さまざまな暗いニュースが目に飛び込んできます。もちろん「AGRI×IT」といった明るい話題もたくさん見つけることができましたが。

このまま農業が衰退していって、それこそ輸入した食材がスーパーに溢れるようになると、自分の子どもに自分が納得したものを食べさせることができなくなるのでは、とおぼろげに考えつつ、なぜこんな現状になったんだろうな、と自分なりに答えを探していた矢先、両親から厳しい言葉を受けたのです。

この言葉は、私に火をつけました。

こんなふうに思われる農業のイメージを自分の手で変えたい。そのためにこれまでの経験を活かしたい。

そう思った私は、行動を開始します。

まず、リアルな農業界を知るために、足だけではなく体ごと農業界へ踏み入れる必要があると考えました。また、同じ思いを持った仲間が欲しいと考えました。

ITの世界でもそうでしたが、自分一人よりもチームで物事を進めたほうが、より高い成果を得られるからです。

ただ、両親の反対を受けたばかりで、いきなり自分が農家になるという選択肢は取れませんでした。何かいい方法はないか……。

悶々としながら電車通勤とネットサーフィンを繰り返していたところ、【農業専門の人材サービス】があることを知りました。

「これだ!! 」と勝手に思った私は、これまで勤めた会社を辞め、転職を決断するのです。

【農家コラム】さわちんの「リアルタイム新規就農日記」
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WRITER LIST

  1. 堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
  2. 大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  3. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 田中克樹
    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  5. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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