想像以上に重労働! 初めてのビニールハウス【農家見習い・さわちんの「リアルタイム新規就農日記」第11回】

「SMART AGRI」をご覧のみなさん、こんにちは。

さわちんと申します。現在38歳で、妻と小学生の子ども2人の4人家族です。
※11月4日で38歳になりました。

前回は、私が移住前に思い描いていた理想と、現実とのギャップについて、自己採点を行ってみました。結果は「80点」。まずまずの点数だったと思います。

100点を目指して、努力を続けていきます!

さて、今回は施設栽培には欠かせない「ビニールハウス」の作業についてフォーカスしてみようと思います。

みなさんも一度は見たことがあるでしょうか。その名の通り全体をビニールで覆われた簡易的な建物で、保温・防風雨の効果があるため、年中野菜を育てることができます。また、栽培環境を自分で制御できることから、スマート農業との相性が良いという特徴があります。

さわちんも写真で確認したり、遠くから眺めたりといったことは何度もありましたが、実際に関わってみると、その苦労は想像を超えました! 私が改めて思い知ったビニールハウスを組み立てることの大変さを、ぜひともご紹介したいと思います。


大変だよ! ビニールハウス ~錆止めペンキ塗り編~

ビニールハウスを新築する際には必要ありませんが、さわちんがお借りするビニールハウスは築40年くらいのものなので、屋台骨となる鉄パイプに錆が目立ちます。

さびたままにしていると、耐久性が悪くなったり、ビニールを張った時に錆でこすれて、破れてしまうこともあるそう。そこで、できるだけビニールやビニールハウスそのものを長く利用するために、錆止めのペンキを塗らなくてはなりません。

お借りするハウスは長さが約50mあり、数えてないですが鉄パイプが200本以上ある計算になります。まっすぐな部分、湾曲している部分、他の鉄パイプと重なっている部分と、形状はさまざま。

もちろん天井部分はビニールハウスに登らないとペンキを塗れないので、高さ約3mの細い鉄パイプの上でのペンキ塗りが続きます。

しかも、さわちんは「かんきつアカデミー」に通っているため、通学前と帰宅後の時間しか対応できません。毎日毎日、100均で購入した刷毛を使って、少しずつ少しずつ進めていきました。

およそ2カ月かかりましたが、前回の記事の写真のように、大体ペンキを塗り終えることができました。

よ~く見ると、塗りが甘い部分が散見されますが(汗)、本職がペンキ屋さんというわけでないので、これでよしとしましょう(笑)。

この判断がビニールハウスの寿命を縮めてしまわないか……神様のみぞ知る、ですね。


大変だよ!ビニールハウス ~ビニペット取り付け編~

「ビニペット」。この言葉がわかる人は、おそらくビニールハウスを利用したことがある人ではないでしょうか。最初は私も何のことか、さっぱりわかりませんでした。

これが、ビニペットの写真です。


ビニールを固定するための資材で、骨組みとなる鉄パイプに取り付けます。ちょっとわかりづらいですが、このくぼみに、ビニールとスプリングと呼ばれる波型の金具をはめこんでビニールを固定していくのです。

お借りしたビニールハウスでは、もともとイチゴを作っていました。今回チンゲンサイを作るにあたって、ビニールハウスの構造を修正する必要があり、新しくビニペットを取り付けなくてはいけませんでした。

作物によって、ビニールハウスの構造が変わるって知ってました?

ビニペットの取り付け方は、専用の金具を使うか、ビスを使うかの2択になり、私はビスで止めることに。

電動ドライバーを利用して一本一本ビスを止めていくのですが、私はこれまで日曜大工の経験が一切ありませんでしたし、図工の成績は5段階中2だったので、とっても苦労しました。

なにしろビニペットの長さは基本6mあり、一人で運んだり、ビスを止める位置で固定したりと、これまでに全くやったことがない反復作業が、筋肉痛を誘います。

天井につけたり、背伸びしてぎりぎり届くところにつけたり、長すぎるためにビニペットをディスクグラインダーで切断したりと、まるで大工さんのお仕事。簡易なビニールハウスでこんなに苦労するのに、人が住む立派な家を建てることができるなんて! 大工さんへのリスペクトが止まりません(笑)。


大変だよ! ビニールハウス ~ビニール張り編~

ビニールハウス建設のうち、最も大変な作業がビニール張りです。

これまでの作業は、こつこつと一人でできたのですが、この作業だけは一人ではできません。ビニールハウスの広さにもよりますが、大体3~5人くらいで力を合わせて行います。

今回実施したビニール張り作業も、持ち主の方(リーダー役)、先輩農業者3人、さわちんの計5名で行いました。実は、皆さん加茂谷地域に移住就農した方で、「手伝って!」という声がけ一つで、快く集まってくれるナイスガイばかりです!

イラスト:ヤマハチ
さて準備万端で作業開始!写真のような骨組みにビニールをかぶせていきます。

これが……


こうなります!


みなさんの中に、ハウスにかけるビニールはテーブルクロスのように、一気に広げてばさっとかけることを想像している方はいらっしゃいませんか? 現実は、そう甘くはありません。

例えばさわちんのハウスの場合、長さ50m、幅10mくらいになるので、一人で広げることさえ難しいのです。しかも地上ではなく、高さ3m以上の骨組みの上で広げることになるので、3~4人で力を合わせて作業をする必要があります。

さらにビニールは厚さ1~1.5mmしかありません。そのため、とっても破れやすく、慎重に作業をする必要があります。もし破れてしまったら、そこから雨漏りしたり、害虫が侵入する入口となってしまいます。補修用のテープもありますが、補修作業も大変なので、破らないように破らないように、慎重に作業を進めていきます。

極めつけは、風。ビニールを広げているときに突風が吹こうものなら、ビニールと一緒に体ごと飛ばされそうになります。写真のビニールハウスのお手伝いに行った際、何度もヒヤッとする場面がありました。ビニールが飛ばされないように、引っ張った手を離さないようにしながら、ビニペットにビニールを止めていきます。

ちょこちょこ休憩をはさみながら、ときには用意してもらったおやつを食べながら、リーダーの指示を受けつつ、一生懸命作業を進めていきます。およそ3時間、ビニール張りが終わったときの、達成感といったら! みんなでワンチームになれた気がして、「お疲れ~」の声に笑顔がこぼれます。が、次の日の筋肉痛も半端ないです。

こうしてさまざまな苦労を重ねて、ビニールハウスで野菜を栽培できるようになります。野菜を作るだけが、農家さんの仕事ではなく、今回ご紹介したようなまるで大工仕事な下準備を含めて農業なのだということを、ぜひ知っておいていただきたいです!

そういえば、すっかり秋が深まってきましたね。秋はユズの収穫の季節。さわちんの両親のユズ畑でも収穫作業が始まっています。

かんきつアカデミーでもユズやミカンの収穫の実習がありますので、次回は、収穫作業についてお伝えしようと思います。

【農家コラム】さわちんの「リアルタイム新規就農日記」
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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