移住して3カ月、家族の感想は……?【さわちんの「リアルタイム新規就農日記」第4回】

「SMART AGRI」をご覧のみなさん、こんにちは。

さわちんと申します。現在37歳で、妻と小学生の子ども2人の4人家族です。

前回、移住セミナーをきっかけに移住×就農に力を入れている徳島県阿南市の加茂谷地区の取り組みについて記載しました。

今回は、少し番外編を交えながらお届けします!

移住して3カ月、今の生活に家族は満足している?


移住して3カ月がたったわが家。妻と子どもたちに「今の生活、どう?」というアンケートをとってみたので、ご紹介していきます。移住を検討されているみなさんの参考になれば幸いです。


●食べ物について


妻・子ども「お野菜美味しい~! 果物もとっても美味しい~!!」

よくご近所さんから、とれたてのお野菜をおすそわけしてもらえるので、食卓にはたっぷりの野菜が並ぶようになりました。

移住する前と調理方法は変えていないのに、子どもたちの食いつきが違います(笑)。

イラスト:ヤマハチ
イチゴをしまいきれないくらいもらった時は、家の中が、甘いイチゴの香りでいっぱいでした。

そんな栄養たっぷりの食事のおかげで、家族全員のお通じの回数が増えております。

ただし、いただく野菜は旬のものばかりとなるので、毎日同じ食材が食卓に並ぶことになります。また、すべての食材を賄えるわけではないので、スーパーに必要な野菜は買いに行くこともあります。

もちろん、お肉やお魚、パンは畑ではとれませんから、こちらも買いに行きます。

それでも、わが家の食費は移住前と比べて半分くらいになりました。光熱費については、電気代はほぼ変わらず、ガス代は都市ガス→プロパンガスに変わったので、倍増。水道代は地下水が利用できるので、ほとんどタダです♪


●普段の買い物について


妻「車で片道10分とはいえ、前後の準備を含めるとあっという間に1時間。時間がもったいないな」

移住前は徒歩30秒でコンビニ、3分でスーパーといった立地でしたが、現在は車で5分でコンビニ、10分でスーパーという距離です。道路工事等で通行止めがあったりすると、倍の時間がかかることもしばしば。

子どもたちの「今日はヨーグルト食べたい~! 」といったリクエストは、あきらめてもらうことにしています……。


●子どもたちの学校生活について


妻「先生が毎日学校での様子を電話で教えてくれたりと、細やかなケアをしてくれるのはうれしい。でも、ママ友があんまりできなくて……気軽にいろいろ聞ける人が欲しいな」

私の妻は積極的に友達作りができるタイプではありませんので、挨拶をするくらいの関係で止まっているようです。また、コロナの影響で学校の行事が縮小していることも一因です。

ただ、1クラス30人→1学年10人に減ったので、先生の目が細かく行き届いていることには、ご満悦の様子。放課後、特に変わったことがなくてもお電話をくださり、その日の様子などを教えてもらったりしていました。

子どもたちも最初は緊張していましたが、すぐ学年全員の名前を覚え、楽しく学校に通っています。

何よりも、「給食がめちゃくちゃ美味しい!! 」とのこと。食い意地が凄いです(笑)。


●全体を通して


妻・子ども「引っ越してきて、良かったね! (今のところは……)」

との感想をもらえました。何より地域の方々がさわちん一家をとても大事にしてくれて、食べ物以外にも使わなくなった農業用の資材や機械を頂けたりと、毎日感謝することばかりです。

農地探しも、いろんな人がいろんな所で探してくれているようで、さっそく候補が見つかってきているところです。

都会に比べると、不便な部分が多くて苦労する場面もありますが、家族の笑顔は増えており、ますます頑張っていこうと思う今日この頃です。


農業を始める際の選択肢


さて、番外編の家族へのインタビューはここまでにして、前回の続きに戻りましょう。

NPO法人加茂谷げんきなまちづくり会の会長にお会いし、その人柄に触れ、空き家や農地を斡旋してくれる取り組みから、移住を決断しました。素敵な空き家が見つかったまではよかったのですが、農地は見つかりません。

そんなときに、補助金をもらいながら農業大学校に通って農業を勉強するという道を県の職員さんから聞いた私は、農業大学校や補助金の仕組みについて調べていきます。



「就農する」という思いは強く持っていましたが、実際に就農するとなると、いろいろ知らないことがたくさん出てきます。

まず、就農への道は大きく2パターンあります。

一つは、農系企業への就職(雇用就農)

農業を営む法人はたくさんあり、ノウハウも必要な資材もそろっているし、安定した収入を得ることができます。しかし、サラリーマンになるので、担当する作物や労働時間などは自分で選択できないことが多いという特徴があります。

もう一つが、独立就農

新しく農家になるという選択肢です。責任を負うのは自分しかいない状況になりますが、作りたい作物、労働時間などは、自由に設定することができます。

そのかわり、すべてイチから自分で手に入れる必要があります。
(※親元就農というパターンもありますが、移住×就農を考えている方の多くは、非農家出身でしょうから、当てはまらないかなと思います)

私は、自身がこれから就農を考える人たちのモデルになるなら、どちらを選ぶべきか悩んだ結果、「移住×就農」を考えている方の背中を押すためにも、独立就農するべきだと判断しました!

とにもかくにも、農業を始めるために必要なのは、農地。種を撒く場所がないと、なんにもできません。しかも今回、移住のタイミングと同時に農地を見つけることはできませんでした。

次に、技術。幸いに農地が見つかったとしても、栽培する技術がなければ収益を上げることができません。

そして、道具や資材。生まれつき丈夫な体は持っておりますが、それだけでは十分な量をつくることはできません。

当たり前といえば、当たり前なのですが、それらをしっかり見つめるタイミングになってきたのです。

農地は、加茂谷げんきなまちづくり会の会長も、町の皆さんも探してくれています。この状況で私に必要なのは、確かな技術と農地が見つかるまでの生活資金です。

そんなにたくさん貯金できているわけでもなく、その中でも前年の年収に合わせて税金はかかりますし、でも借金をするのは……、と考えているときに、徳島県の農業担当職員の方から、「農業大学校に通いながら、補助金をもらってはいかがですか? 」というアドバイスをいただきました。


農業大学校への入学と、就農補助金


就農にあたって現在私が準備しているのは、農業大学校での勉強と、就農補助金の申請です。


「農業大学校ってなに? 大学なの?」とギモンな方に簡単に説明すると、読んで字のごとく「農業を勉強する県の教育機関」のことです。近年では民間が運営する学校も出てきました。

何を教えてくれるんだろう? と気になって調べてみると、座学や研修農地での実技の他にも、マーケティング概論、農業簿記といった、農業経営を始める際に欠かせない、さまざまな知識を学ぶことができるようです。

補助金については、「就職氷河期世代の新規就農促進事業」という、申請時の年齢が30~49歳であれば、就農に向けた研修期間1年あたり150万円を交付(最長2年間)してくれる制度があるようです。

ただし、要件があり、

  1. 独立・自営就農、雇用就農または親元での就農を目指すこと
  2. 都道府県が認めた研修期間にて、概ね1年以上かつ概ね1200時間以上研修すること
  3. 常勤の雇用契約を締結していないこと
  4. 生活保護、求職者支援制度など、生活費を支給する国の他の事業の交付を受けていないこと
  5. 青年新規就農者ネットワーク(一農ネット)に加入すること
  6. 原則、前年の世帯(親子および配偶者の範囲)所得が600万円以下の者

これらを満たす必要があります。

私の場合、1はOK、2は農業大学校に通うことでOK、3はOK、4はOK、5はメールで登録可能なのでOK、6はOKということで、受給資格がありそう!

ただ、受給資格があっても、応募者が多数の場合は選考となるので、必ず交付されるとは限りません。

これだ! と思った私は、2020年4月より農業大学校へ入学するための手続きを進めていきました。入学選考には面接もあり、指定された日に徳島県の農業大学校へ赴きました。

面接とはいいながら穏やかな雰囲気の中で、就農のビジョンや、農業を営む覚悟、家族はほんとに大丈夫? というような質問に対し、一生懸命に想いを伝えたことを覚えています。

結果は……見事合格!! 現在も、農業大学校に通いながら執筆しております。

次回は、農業大学校の一日に沿って、実際のカリキュラムについてご紹介していきます。
【農家コラム】さわちんの「リアルタイム新規就農日記」
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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