初めてチンゲンサイが売れました! 【農家見習い・さわちんの「リアルタイム新規就農日記」第17回】

「SMART AGRI」をご覧のみなさん、こんにちは。さわちんと申します。

現在38歳で、妻と小学生の子ども2人の4人家族です。

前回は、私が借りているビニールハウスの改造計画第1弾、灌水設備工事についてお伝えしました。野菜を育てるうえで、水やりは絶対に必要で、かつ頻度がとても高い作業になります。こういった作業を効率よく行うことが、儲かる農業への近道になるのです。

さまざまな作業の効率化を目指して、ビニールハウスの改造計画をどんどん進めていきたいと思います。

さて今回は、記念すべき第1回のチンゲンサイの収穫と出荷の模様をお伝えしたいと思います。


喜んでもらいたいから……丁寧な収穫作業を心がけました!

ところで、皆さんチンゲンサイのことをご存じですか? 残念ながら、移住前の私の印象は、マイナー野菜のトップ選手……。調理方法もあまり浮かんできませんでした。

軽く紹介させてもらうと、原産地は中国で、1970年代に日本に入ってきたといわれる、比較的新しい葉物野菜です。シャキシャキを生かして炒め物にしてもよし、煮崩れしないので煮物にしてもよしと、いろんな場面で活躍してくれます。さわちん一家のオススメは、さっと湯がいてめんつゆと鰹節であえる、「チンゲンサイのおひたし」!

そんなチンゲンサイの収穫の方法をご説明します。

まずは、ビニールハウスの畝にびっしり生えたチンゲンサイを眺めます。

びっしり生えたチンゲンサイ
一本一本愛情込めて行った植え付け、苦労した水やり、謎の害虫の襲撃など、たくさん大変な思いをしてきましたが、やっとここまできたんだな……としみじみ。

そして、早く動いて! と妻に怒られます(笑)。

次に、根っこごと、地面から引っこ抜きます。

引っこ抜いたチンゲンサイ
写真は妻の手です(笑)。初めて栽培したチンゲンサイですが、しっかり根っこが張っており、引き抜くのにも一苦労でした。少量なら大丈夫ですが、大量になってくると手首が痛くなってきそうです。今後いろんな方法を試して、体への負担は最小限にしたいです。

引き抜いたチンゲンサイの根っこや、傷んでいる葉っぱなどを手やハサミで切り離して、スーパーに並ぶような状態にします。農家さんによって収穫のやり方は千差万別ですが、さわちんは、圃場である程度きれいにすることを心がけています。

加工したチンゲンサイ
コンテナに並べたチンゲンサイ
あとは、この作業をあらかじめ用意したコンテナがいっぱいになるまで、ひたすら繰り返します。大変だと思われがちですが、コンテナがチンゲンサイでいっぱいになっていく様子が楽しくて、意外と早く時間が過ぎていきます。

コンテナがいっぱいになったら、家に持って帰って、もう一度虫食いや汚れがないか、傷んでいる葉や茎はないか、などを一つ一つチェックします。さわちんの野菜を選んで買っていただいた消費者の方に喜んでもらいたいので、技術が未熟なかわりに手間暇をかけています。


ドキドキの出荷! 気になる売れ行きは……?

最終チェックが終わったら袋詰めして出荷場へ。今のところ出荷先は、地元スーパーの直売コーナーです。

ここでは品目や量などで決まりはなく、出品者の裁量で決めてよいことになっています。自由ではありますが、その分ライバルがたくさんいるので、逆に気を抜けません。今一度チンゲンサイを見つめて、値段を決めてラベルを貼ってできあがり!

袋詰めしたチンゲンサイ
これで120円。どうですか? 皆さん買っていただけますでしょうか……。

初めての出荷は、計16袋になりました。本当に売れるかな、とものすごくドキドキしながら出荷しました。

この直売コーナーでは、出品者はスマホを使って1時間ごとの売れ行きを確認することができるので、出荷した翌日、妻と2人で祈るようにスマホを見つめていたところ……。

さっそく売れたー!!

イラスト:ヤマハチ
妻と一緒に小躍りしたのを覚えています。数あるチンゲンサイの中で、“さわチンゲンサイ”を選んでくださったお客様、本当にありがとうございます! ちなみに、虫食いがあって出荷できなかったチンゲンサイを家で食べたところ、子どもたちが「美味しい! 」と太鼓判を押してくれたので、きっとおいしく召し上がっていただけると思います。

その後、あれよあれよといううちに、出荷した計16袋が完売したのです! やったー!

この日の売り上げは計1920円。そのうち、手数料が約30%なので、手取りは1344円。これまでかかったいろんな経費を考えれば、まだまだ全くの赤字です。ん~思い出したくない。

それでも、これからの長い農家としての人生を考えたときには、幸先の良いスタートを切れたような気がして、ほっと一息をつくことができました。

妻もほんとに売れるかドキドキしていたみたいで、同じくほっとしたような顔になっていましたとさ。

ただ、これはあくまでスタート。喜んでばかりもいられません。これからは種まき→植え付け→管理→収穫→出荷という流れをたくさん繰り返して、どんどん売り上げを作って、経営を安定させていきたいと思います。

そうすることで、これまでお世話になった方への恩返しと、どんどん大きくなる子どもたちへのご飯の用意、そして何より、就農を考えている人の安心材料になるはず。

「就農モデルになる」という目標がほんの少しだけ、前進したような気がします。

いかがでしたか。農家になると決意して移住してから丸1年、ついに自分で作った野菜を売る瞬間をお伝えしました。むしろこれからの方が大変になっていくと思われますが、引き続き「リアルタイム新規就農日記」として発信し続けていきます!

さて次回は、かんきつアカデミーの授業「果樹の剪定」についてお伝えしたいと思います。これまで講義で学んだこと、実習してきたことのすべてが、この剪定作業につながっていくのです。果樹の管理の中で、最も大事とも言われる剪定、どうぞお楽しみに。

【農家コラム】さわちんの「リアルタイム新規就農日記」
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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