「SDGs」(持続可能な開発目標)とは? 未来の農業にとって重要なキーワードを知ろう

世界の飢餓や貧困、地球温暖化対策などといったテーマが世界規模で語られるようになって久しい。しかし、その取り組みは今、果たして前進しているのだろうか。それとも後退しているのだろうか。

そんななか、日々、流れてくる国内外のニュースのなかに「SDGs」といったキーワードが立ち上ってきたのは、ここ数年の話だ。この「SDGs」とはいったいどういう意味の言葉なのか。

今回は「SDGs」について、農業との関わりから見てみることにする。


そもそも、SDGsとは?

2015年9月に国連サミットで採択されたのが「SDGs」(エス・ディー・ジーズ)という言葉だ。「Sustainable Development Goals」の略称で、「持続可能な開発目標」と訳されている。

内容としては、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のための、2030年を年限とする17の国際目標となっている。

17の国際目標とは次の通り。(参考:国際連合広報センター「持続可能な開発目標(SDGs)報告 2018」

(1)貧困「貧困をなくそう」
あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

(2)飢餓「飢餓をゼロに」
飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する

(3)保健「すべての人に健康と福祉を」
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

(4)教育「質の高い教育をみんなに」
すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

(5)ジェンダー「ジェンダー平等を実現しよう」
ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る

(6)水・衛生「安全な水とトイレを世界中に」
すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する

(7)エネルギー「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

(8)成長・雇用「働きがいも 経済成長も」
すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する

(9)イノベーション「産業と技術革新の基盤をつくろう」
強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る

(10)不平等「人や国の不平等をなくそう」
国内および国家間の不平等を是正する

(11)都市「住み続けられるまちづくりを」
都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする

(12)生産・消費「つくる責任 つかう責任」
持続可能な消費と生産のパターンを確保する

(13)気候変動「気候変動に具体的な対策を」
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る

(14)海洋資源「海の豊かさを守ろう」
海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する

(15)陸上資源「陸の豊かさも守ろう」
陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る

(16)平和「平和と公正をすべての人に」
持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

(17)実施手段「パートナーシップで目標を達成しよう」
持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

これら17の目標には、さらにその下に、より具体的にした169の「ターゲット」と呼ばれるものがある(ここでは割愛)。

日本の農業におけるSDGsの取り組み

SDGsは150カ国以上の加盟国首脳の全会一致で採択された。ここからもわかるように、先進国・途上国の区別なく、ほぼすべての国が対象となっており、経済・社会・環境の3つの側面のバランスがとれた社会を目指す世界共通の目標となっている。

これら17の国際目標に法的な拘束力はないものの、各国政府がそれぞれのやり方で、目標実現に向けて取り組むことが期待されている。

我が国においてもさまざまな場面でSDGsの取り組みが行われているが、ここでは農林水産省が発表している3つの取り組みについて見ていこう。

1つは「あらゆる人々の活躍の推進」。農水省のデータによれば、農業に従事する就業人口のうち、女性の割合は全体の46.8%(農林水産省「農林業センサス」2017年)。ところが、農業者団体の役員等に占める女性の割合は10%に満たない(2016年)。そこで、SDGsの17の国際目標のうち、(5)ジェンダーに照らし合わせ、この数字を2020年までに一定程度引き上げることを目標としている。また、農福連携対策として、障害者雇用への取り組みについても言及している。

2つ目は「地球温暖化対策」。農林水産業・食品産業における温室効果ガス排出削減対策や森林等吸収源対策の推進、農山漁村における再生可能エネルギーの導入の促進等を挙げている。これらはSDGsの国際目標のうち、(7)エネルギー、(9)イノベーション」、(12)生産・消費、(13)気候変動の分野にあたる。

3つ目は「食品ロスの削減・食品廃棄物のリサイクル」。食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられている食べ物のこと。消費者庁の「食品ロス削減関係参考資料」によれば、日本の食品ロスは年間で約646万トン(2015年度推計)におよぶ。このうち、事業で出た量は357万トン、家庭から出た量は289万トンとされているが、この数字は国民1人がおよそ茶碗1杯分のご飯を毎日捨てている量に等しい。この数字がいかに異常であるかは、世界中の飢餓に苦しむ人々への世界の食料援助量が年間約320万トン(2015年)であるという実態が浮き彫りにしている。

そのため、農水省では事業者向けの取り組みとして、再生利用等実施率目標あるいは発生抑制目標の設定などを掲げている。また、消費者向けには地方公共団体などを通じて周知を広げたり、学校における指導内容の提示などで食品ロス削減に向けた取り組みを展開している。


農業現場でのSDGsの取り組み

こうしたなか、農業の現場で見られるSDGsに向けた取り組みにはどういうものがあるだろうか。

例えば、世界有数の農業機械メーカーである株式会社クボタでは、アフリカで低燃費のトラクターを、ベトナムをはじめとした東南アジアでクリーンな水にアクセスすることのできる浄化槽を展開することで、(1)貧困、(2)飢餓、(3)保健、(6)水・衛生という目標に貢献している。
・クボタとSDGs

電機メーカーであるNEC(日本電気株式会社)も、各種センサーから得られるデータをもとに収穫量・収穫適期を予測するICT技術を用いて、土地に応じた営農アドバイスや、収穫量の最大化を実現するなど、社会課題解決に向けた取り組みを行っている。
・SDGs達成に貢献するNECの取り組み: 企業情報 | NEC

SDGsの掲げる(1)貧困、(2)飢餓などの目標は、農業と深い関わりのある内容といえるが、その一方で、「持続可能な開発目標」という広義の目線でとらえると、こうした技術革新ばかりでなく、さらに幅広い取り組みが必要になってくることが見えてくる。

SDGsと日本のこれから

日本では、「SDGsの推進を通じて、創業や雇用の創出を実現し、少子高齢化やグローバル化の中で実現できる『豊かで活力ある未来像』を、世界に先駆けて示していく」(外務省「『持続可能な開発目標』(SDGs)について」より引用)ために、日本版SDGsモデルの構築を進めている。

このモデルでは、企業への支援はもとより、自治体を巻き込んだ政府一体となった支援体制の構築や、SDGsを主導する次世代の育成の強化などが盛り込まれており、長期的視野のなかで手がけていくべきものとの認識を鮮明にしている。つまり、冒頭で述べた「経済・社会・環境の3つの側面のバランスがとれた社会を目指す」ためには、農業という一側面からのみではなく、科学技術の進歩や人々の考え方、行動規範、あるいは法整備などといったさまざまな角度からのアプローチが必要といえよう。

国内において当座の目標としては、東京オリンピック・パラリンピックの開催などを通じてSDGsの認知度を高めていくことも同時に語られている。

日本政府としては、こうした取り組みや発信を通じ、さらに全国的に認知度を高めていくことで、SDGsが創出する市場・雇用を取り込み、国内外のSDGsを同時に達成し、日本経済の持続的な成長につなげていくことが、今後目指すべきSDGsの将来像としている。具体的には、「拡大版SDGsアクションプラン2018」の策定や、SDGs達成に貢献する優れた取り組みを行っている企業・団体等を表彰する「ジャパンSDGsアワード」の創設など、さまざまな動きが始まっている。

・SDGs 取組事例 企業一覧(外務省)
・ジャパンSDGsアワード(外務省)

このなかにおいて農業の担う役割は決して少なくない。

そして、生産者、消費者ともに真正面から向き合うべき喫緊の国際的な目標といえるだろう。

<参考URL>
外務省「持続可能な開発のための2030アジェンダ」
農林水産省「SDGsとは?」
農林水産省「農林水産省におけるSDGsの取り組み」
NEC「SDGs達成に貢献するNECの取り組み」
株式会社クボタ
【コラム】これだけは知っておきたい農業用語
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WRITER LIST

  1. 川島礼二郎
    川島礼二郎(かわしまれいじろう)。1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  2. 蒼井ネコ
    農学系の兼業ライター。某大学農学部、某農業レストラン、某飲料会社商品企画を経て、現在は某マルシェアプリでwebマガジン編集として働きながら、猫様のお世話をしている。
  3. 杉山直生
    すぎやまなおき。1988年生まれ。愛知県で有機農業を本業として営む。「伝えられる農家」を目指して執筆業を勉強中。目標は、ひとりでも多くの人に「畑にあそびに行く」という選択肢を持ってもらうこと。「とるたべる」という屋号で、日々畑と奮闘中。
  4. 柴田真希
    管理栄養士。㈱エミッシュ代表取締役。Love Table Labo.代表。27年間悩み続けた便秘を3日で治した雑穀や米食の素晴らしさを広めるべく、雑穀のブランド「美穀小町」を立ち上げる。現在はお料理コーナーの番組出演をはじめ、各種出版・WEB媒体にレシピ・コラムを掲載する他、食品メー カーや飲食店のメニュー開発やプロデュースなどを手がける。『私は「炭水化物」を食べてキレイにやせました。』(世界文化社)、『はじめての酵素玄米』(キラジェンヌ)など著書多数。
  5. 大城実結
    おおしろ みゆう。フリーランス編集ライター、大城文筆事務所所長。一次産業ほか地域文化、アウトドアなどお天道様系分野を専門に編集・執筆している。自転車で鍛えた脚力を活かし、農家さんのお手伝いをしながらインタビュー取材を積極的に行う。玉掛け免許と床上式操作クレーン免許所持。