カメラ女子が地方で農業体験「農村カメラガールズ」ってなんだ?

農林漁業の生産の場である農山漁村から、若者が離れていっている。高度経済成長を契機に都市部が発展し、進学、就職、そして結婚と、若者の生活の拠点が都市部に移行したまま、各地域に戻ってこないことが増えたからだ。地方での雇用が振るわないことも要因のひとつであるが、いずれにせよ、農山漁村で一次産業に従事する中高年の高齢化が進む一方、地方で生活を営む人口の減少が止まらない。全国的に進む少子高齢化は、こうした地域に顕著に見られる。それを食い止める道筋のひとつとして、カメラ女子たちが立ち上がった。



農山漁村の自立発展のために

豊かな緑にあふれる農村や、美しい海に囲まれた漁村。日本の食を支えるこれら農山漁村の人口が激減しており、事業継承を担う若者も思うように現れないという、少子高齢化の厳しい現実に直面している。社会問題として顕在化して久しい少子高齢化は、都市部に先行して地域経済の低迷を招いており、早急の対策が求められている。

こうした問題に農林水産省としても取り組んでいる。同省では地方の人口減少対策として、移住や定住を促せるよう生活の基盤や産業づくりのための農村整備を進めている。具体的な数値目標としては、2020年度までに都市と農山漁村の交流人口を1450万人まで増加させ、地方の自立発展を目指すとしている。

そのための施策のひとつが、「農泊」の推進とジビエの拡大だ。農泊とは、日本古来の古民家などに宿泊しながら農山漁村で営まれている一次産業を体験するというもの。農泊推進の狙いは、地域の過疎化や空き家対策といった点がある一方で、日本の自然美を体験したいというインバウンド需要も見込んでいる。

一方、ジビエの拡大については、国内で続発するシカやイノシシといった動物による農作物への被害が深刻化していることを受けてのものだ。そもそもジビエとはフランス語で野生鳥獣肉のこと。これら「害獣」を捕獲するだけでなく、より豊かな食文化を形成する食材の一つとしてとらえようというものだ。

日本最大の女子カメラサークルとの連携

農泊の推進やジビエの拡大などによって、各地域の特色ある資源を活かしながら農村の活性化に力を入れていこうと、農水省は情報発信にも力を入れている。同省の公式SNSである農村振興局フェイスブックには各地の事例や各種の施策などの情報がアップされ、日々、農村の魅力が紹介されている。

そんな同省の取り組みに新たな試みが発表されたのは2018年3月29日のこと。「さらなる情報発信に向けた取組の一環」として、「農村カメラガールズ」との連携が発表された。


農村カメラガールズとは、2014年3月31日に結成されたカメラ好き女子が集うサークル「カメラガールズ」のなかから派生したグループ。カメラガールズは、カメラや写真を撮ることが好きという共通の想いをもった女性たちで構成されたサークルで、結成当初はわずか5人であったが、今日では約5400人もの会員を擁する日本最大のカメラ女子サークルとなっている。

カメラガールズの活動内容は、主に同じ趣味をもつ友達を作るということのほかに、写真を上手に撮りたいという向上心を満たすことや、まだ見ぬフォトジェニックな撮影場所を探索することなどさまざま。彼女たちは日光や京都、沖縄など、全国津々浦々で、その土地の美しい景色やガイドブックには掲載されていないような知られざる風景をファインダーに収めてきた。

そんな活動を続けるうち、彼女たちのなかから高まってきた声が、「もっと日本農村の魅力を発掘・発信していきたい」というものだった。豊かな自然に囲まれた農村の風景に魅了されたカメラ女子たちの声を受けて結成されたのが、“農村カメラガールズ”である。

農水省とカメラ女子との連携

農水省の発表によれば、農村カメラガールズとは次の2点で連携していくという。1つは、農村振興に取り組む地域の情報提供と農村カメラガールズによる訪問企画。特色のある資源を活用することで地域振興を意欲的に進めている農村の情報を、同省が農村カメラガールズに提供する。それを受けた農村カメラガールズが農村への訪問イベントを企画する。

もう1つは、農村振興局フェイスブックと農村カメラガールズのホームページによる相互の情報発信。訪問企画によって農村カメラガールズが撮影した写真や動画を同サークルのホームページに掲載する一方、農村振興局フェイスブックも情報発信の一翼を担う。それぞれのウェブ媒体が、訪問した農村の魅力を伝えるために連携する。


女性の視点で映し出された農村の風景

農村カメラガールズは今回の連携を通じて3つの目標を掲げている。1つは農村を訪れたカメラ女子が農村の魅力に触れたり、現地の人々と交流したりすることで、地方創生の意識をもつこと。2つ目は農村の魅力を写真を通して発掘し、それを発信していくことで農村の魅力を広く世の中に認識してもらい、農村の元気につなげていくこと。さらに、多くの人が実際に農村へ訪れてみたくなるような農村訪問ツアーを考案し、農村カメラガールズ以外の人へも広く発信すること。以上の3つである。

双方の連携による初めての活動は、岩手県遠野市で行われた。同地での農泊体験である。農泊体験をした農村カメラガールズによる作品は、公式ホームページや同省フェイスブックにさっそくアップされている。

活動レポートには、宿泊した農家での温かなもてなしの様子や、農家の暮らしのなかにあるフォトジェニックな風景などが、彼女たちなりの視点で映し出されている。全国からの情報を集約する農水省と、女性ならではの発想や視点、行動力で農村の新たな魅力を発掘・発信していこうという農村カメラガールズ。双方の連携が農山漁村の発展にどう活かされるか、今後も注目される。

<参考URL>
農林水産省農村振興局-Facebook
https://www.facebook.com/nouson.maff/
農山漁村の活性化:農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/kasseika/
カメラガールズ|カメラ女子の毎日をHAPPYに。
https://www.camera-girls.net/
カメラガールズ(Camera Girls)-Facebook
https://www.facebook.com/camera.girls.net/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
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    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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