目視外補助者なしでのドローン飛行の現実度【オプティムの飛行実証事例レポート】

株式会社オプティムが2020年8月19日に実施したドローンによる「目視外補助者なし飛行」の飛行実証のレポートが、農林水産省のホームページにて公開された。

※飛行実証当日のレポート記事はこちら
300haの作付を1フライトで確認! 固定翼ドローン「OPTiM Hawk」目視外自動飛行実験レポート
https://smartagri-jp.com/smartagri/1729

目視外補助者なし飛行は、「空の産業革命に向けたロードマップ2020」に記載されている「レベル3」と呼ばれる飛行方法。現行の航空法では、操縦者の目視により見える範囲を超えてドローンを飛行させる際には、国土交通大臣の商人が必要とされており、目視外飛行には補助者による監視や双眼鏡などによる確認は含まれない。また、原則として補助者により自分のドローンおよび他者のドローンの監視と飛行区域への第三者の立入管理、気象状況の把握などが必要とされてきた。しかし、一定の用件を満たせば、これらの飛行が実現できるようになってきている。

この方法で飛行させるためには、安全上の理由などから、「機体」「操縦者」「安全確保体制」の3つの追加基準が必要とされている。

今回オプティムは、同社が開発したオリジナルドローン、固定翼型の「OPTiM Hawk V2」について、それぞれに「目視外」と「補助者なし」という2つの用件を満たす追加基準に対応することで、国土交通省からの承認を得た上で実証を行ったかたちだ。具体的には、担当者が電話や直接訪問によって年間をかけて調査する作付面積調査を、固定翼型ドローンによって代替することを目標としている。



目視外飛行のために、ドローン本体と操縦者に必要なこと


「目視外」への対応については、「機体」と「操縦者」の2点ついて対策を行っている。

「機体」については、自動操縦システムを装備し、飛行方向を映し出すFPV(First Person View)カメラと、水平尾翼に設置したカメラの2台で状況を監視する。地上から状況を把握するために、PCソフト「グランドコントロールステーション」で飛行経路や高度などをリアルタイムに把握し続けた。また、機体に不具合が発生した際に、ひとつのパーツに不具合があっても別のパーツで飛行が維持できるようにする危機回避機能も搭載しており、電波やGPSの断絶、バッテリーの異常などの際に作動する自動帰還機能なども搭載している。

また、操縦者については、搭載されたカメラの映像をモニター越しでみながら、遠隔操作により飛行航路の維持と安全な着陸を行うための訓練を実施。肉眼でドローンが確認できない位置にあっても、安全にコントロールできるように配慮している。



もうひとつの「補助者なし」への対応については、3つの追加基準すべてで対策を施した。

「機体」に関しては、容易に視認できるように灯火類を装備し、本体カラーも目立つやすい色を採用。ドローンの航路や速度などに影響を与える気象状況を把握するために、離発着場には気象センサーを配置した。さらにこれらを運用するために20時間以上のテストフライトを実施している。

「操縦者」に関しては、独自に作成した「緊急事態対応マニュアル」により、座学や教育訓練を10時間以上受けることを必須としている。

さらに、「安全確保体制」については、今回の実証においては第三者が存在する可能性が低い場所として農用地(干拓地)エリアを選択。万一の際に安全に着陸させられるように「緊急事態対応手順マニュアル」にのっとって、作業に関してはよりシンプルなフローチャートを作成。また、事前に「墜落範囲シミュレーション」を行い、その想定による「立入管理区画」を設定し、飛行中に第三者が立ち入らないよう、関係者への事前周知や現地への立て看板などでも対策した。


目視外補助者なし飛行の実現と普及に向けて



ドローンは使い方を誤らなければ非常に安全で便利な農機具だが、今後使用者が増えていくことで、より厳密な安全管理と危機管理が求められていくだろう。ドローンの操縦に関する資格や免許などの制度や、さらに、「目視外補助者なし飛行」というレベル3に対応するためには、現状では上記のような対応をすべて行った上で初めて実現可能となる。

今回のオプティムの実証は、将来の労力削減、限られた人員でのオペレーションを実現するために、あらゆる状況を想定した必須事項となっている。誰もが目視外補助者なし飛行を活用できるようになるまでにはまだまだ時間がかかるかもしれないが、このような実証を重ねることで、農業におけるドローンのさらなる活用や、従来のドローンの活用法とは異なる時間、場所、環境での活用に向けて、弾みがつくことを期待したい。


株式会社オプティムによる「目視外補助者なし飛行」(レベル3)基準への対応内容(詳細版)
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/drone-138.pdf
空の産業革命に向けたロードマップ2020
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/pdf/siryou14.pdf

【事例紹介】スマート農業の実践事例
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  1. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  2. 槇 紗加
    槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  3. 沖貴雄
    沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
  4. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  5. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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