スマホひとつで気孔の開度を見える化し灌水に活用する「Happy Quality」の技術

スマートフォン(スマホ)一つで気孔の開度を「見える化」する技術が近いうちに実用化される見込みだ。

開発するのは、人工知能(AI)を使って高糖度トマトを安定して生産する技術を構築した静岡県浜松市の株式会社 Happy Quality(ハッピークオリティ)。

栽培している作物の葉で気孔がどれだけ開いているかを画像のデータとして把握することで、より適切なかん水につなげていく。

2つの機能性表示を取った「ハピトマ」 提供:ハッピークオリティ

農学と情報化学に精通した人材をそろえる

ハッピークオリティは青果市場業界で21年務めた宮地誠さんが2015年に創業した。

同社と事業で連携する農業法人のサンファーム中山(静岡県袋井市)は、葉のしおれや茎の太さの具合から作物がどれだけ水分ストレスを感じているかをAIで判定し、高糖度トマトを安定的に生産している。収穫物はハッピークオリティが一括して集荷。独自に選果した後、「Hapitoma(ハピトマ)」というブランド名で商品化している。

ハッピークオリティはデータとAIを活用した栽培技術の標準化を一層図るため、農学と情報科学に精通した研究者や農家らを役員として迎え入れた。彼らとともに開発中なのがスマホを使った気孔開度の「見える化」だ。

気孔とは植物の葉にある、一対の孔辺細胞とその周辺の細胞からなる構造のことだ。光合成が盛んなときには開き、葉から水を蒸散させ、根から水や養分を吸収。同時に光合成に必要な二酸化炭素を取り込み、酸素を放出する。栽培している作物の気孔の開度を簡便かつ安価に測定する方法は私の知りうる限りない。


開度を見える化して、多くの需要を集める商品を開発

ハッピークオリティが開発しているのは、スマートフォンに特殊な機具を取り付けてカメラを顕微鏡代わりにし、それで撮影した葉の画像をサーバーに送り、AIで解析して気孔の一つ一つの開度を見える化する技術だ。

気孔開度の画像 提供:ハッピークオリティ
サンファーム中山の代表・玉井大悟さんによれば、トマトの糖度を上げるために水を切り過ぎると、気孔は閉まる。開度を把握することで、閉まり過ぎていないかどうかを確認し、より適切なかん水につながるという。

サンファーム中山が作る品種はタキイ種苗の「フルティカ」。この品種は特性としてリコピンを豊富に含む。

AIと気孔の開度の見える化で、より適切なかん水ができるようになれば、精神的なストレスの疲労感を緩和する効果が認められているGABA(γ‐アミノ酪酸)の含有量を高めることにもつながる。

すでにハッピークオリティは9月、自社の商品「ハピトマ」についてリコピンとGABAを多く含むとして、消費者庁の機能性表示食品制度で機能性表示食品に認定された。機能としてはストレスの緩和と血中LDLコレステロールの低減である。生鮮トマトとして2つの機能成分で機能性表示食品に認定されるのは初めて。この商品は11月中に発売する予定だ。

初年度の生産量は150tが見込まれている。当面の目標は2000t。現在は需要に生産が追い付かない状態だ。そのため、ハッピークオリティとサンファーム中山はフランチャイズ農業を展開し、作り手を求めている。サンファーム中山のもとで2020年に1人が研修生として独立したほか、2人が新たに入ることが決まっている。

ハッピークオリティの新たな技術の開発とともに、その技術を使う作り手がどれだけ広がるのか。引き続き注視したい存在だ。


Happy Quality
https://happy-quality.jp/


【事例紹介】スマート農業の実践事例
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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。