日本のフェノミクス研究は「露地栽培」分野で【ゲノム編集研究の発展とフェノミクス(後編)】

頻繁に聞くようになった「フェノミクス」という言葉。いったいどういう意味で、これからの農業にとってどういう価値があるのか。

この分野の先駆者であり、東京大学国際フィールドフェノミクス研究拠点のリーダーである、東京大学大学院農学生命科学研究科の二宮正士特任教授(名誉教授)に再びインタビューした。

後編では、世界的に発展するフェノミクス分野で遅れをとる日本の状況と、その挽回策についてうかがった。

■前編はこちら
フェノミクスの意味と価値~東京大学・二宮正士特任教授(前編)

フェノミクス分野で出遅れる日本

――フェノミクスの分野での世界における日本の状況を教えてください。

二宮:残念ながら日本は出遅れています。10年ほど前から欧米諸国はこの分野に投資をするようになり、その中核機関として各国にプラント・フェノタイピング・センター(PPC)を設立してきました。

最も早かったのはオーストラリア、続いてドイツやフランス、英国、米国などです。各国では関連するベンチャー企業も登場しています。アジアでいえば中国が最近になって投資を始めました。

――日本でフェノミクスに関する常設の機関はないのでしょうか?

二宮:ありません。私がリーダーを務める東大国際フィールドフェノミクス研究拠点がほとんど唯一の研究機関ですが、これは常設ではなく、プロジェクト予算でつくりました。その予算がなくなれば消える可能性は高い。

水稲開花の自動認識による出穂日の自動推定(引用元:https://plantmethods.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13007-019-0457-1

日本が今後進むべき道は?

――日本が挽回できる余地はあるのでしょうか。

二宮:野外フィールドならその余地があると考えています。

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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