ロボトラでの「協調作業」提案者の思いと大規模化に必要なこと 〜北海道・三浦農場

北海道音更町の株式会社三浦農場は、全国でもいち早く自動操舵とロボット機能を持つトラクターを導入した。

ロボットトラクターについては、北海道大学が開発している段階から研究者に、複数台が同時に走行する「協調作業」の企画書を持参したという。スマート農業にかける思いとその効果について聞いた。

前編:大規模畑作の経営者が“アナログなマニュアル化”を進める理由 〜北海道・三浦農場
https://smartagri-jp.com/smartagri/3397

三浦農場の三浦さん

規模拡大と相性が良かった、GPSガイダンスシステムと自動操舵装置


三浦農場の代表である三浦尚史さんはもともと、ディスクハローやサブソイラ―などの作業機を製造する東洋農機(帯広市)に勤めていた。この会社員時代に工場での作業改善やグループ活動をしていたことが現在の経営に生かされていることは、前回伝えた通りだ。

同社を辞して、家業である農業を始めたのは30歳。その時点で経営面積は86haだった。オペレーターは父と自分の2人だけ。

「忙しかったですね。午前4時から午後6時半までぶっ続けて働くような毎日でした」と振り返る。

転機となったのは2012年。経営面積が13ha増えて、99haになった。同時に大卒の女性を正社員として雇ったほか、普及が始まったばかりのGPSガイダンスシステムと自動操舵装置を導入した。

GPSガイダンスシステム
「これが相性が良かった」と三浦さん。その理由は、新人でもGPSガイダンスシステムと自動操舵装置で、整地作業ができるようになったことにある。

ロボットトラクターと有人で自動操舵するトラクター
「整地作業は春の種まきに必要で、多忙な時期にやらなければいけない作業の一つ。それが新人でもこなせるようになった。父と私は別の仕事にかかれるので、大助かりでしたね」

作物の生育初期に畝間に爪状の刃を立てて牽引するカルチベータ―も忙しい作業の一つ。これも新人に任せた。前回紹介した通り、当時から新人でもこなせるようにトラクターでの作業のマニュアルを作っていた。

「結果、面積を増やしても農作業が回るようになりました」(三浦さん)


北大・野口教授に「協調作業」の企画書を持参


時を同じくして、三浦さんは北海道大学大学院 農学研究院の野口伸教授に、開発段階にあったロボットトラクターによる「協調作業」の実現を目的とした企画書を持参したという。

野口教授は言わずと知れた、土地利用型作物における農業のロボット化で著名な研究者。三浦さんは業界の第一人者に、有人トラクターと無人トラクターが同時に異なる作業をすることで、農作業の効率化を図ることを提案した。それはなぜか。

「経営に行き詰っていたからです。規模の拡大に備えて200馬力のトラクターを入れるとなれば、作業機も含めて導入費が高額になっていくので厳しい。そこで思いついたのが『協調作業』のアイデアでした」

三浦さんは協調作業の利点として、整地と播種が同時にできる点を挙げる。

通常のトラクターであれば、整地が終わるのを待って播種をしなければならない。たとえば、5haの畑であれば5時間待つことになるという。

ところが協調作業であれば、有人機と無人機がそれぞれ整地と播種を同時に行うので、待ち時間がなくなる。三浦さんは「4割くらいの時間の削減になりますね」と語る。

そして協調作業のもう一つの利点は、適期に作業がこなせることだ。

三浦農場が作る秋まき小麦の面積は43ha。その播種は毎年おおむね9月22日に始まるが、10月3日を越えて播種すれば育ちが悪くなる。つまり、勝負の期間はわずか10日間ほど。だから、協調作業によって整地と播種を同時にこなせることは非常に大事なのだ。


ロボットトラクターの効果が高いのは2ha以上


三浦さんが待望のロボットトラクターを導入したのは、市場に出始めた直後の3年前。現在、まさに協調作業をして使いこなしている。とりわけ畑の面積が大きいほどに使う意味はあるという。

「大きい畑ほど待ち時間が長くなるので、それが削れる効果が高い。枕地を整地するのに時間をとられるからです。大きい畑なら枕地の面積は数パーセントですが、小さい畑なら2~3割にもなります」

三浦さんは過去の作業を踏まえて、「2ha未満の畑であれば、ロボットトラクターを使うメリットはない」と言い切る。三浦農場の経営面積は106ha。そのうち1枚の面積が2ha以上の畑は8割を超えるという。

「費用対効果で言えば、十分に使えていますね」

三浦農場の畑の8割は2ha以上

三浦さんによると、十勝地方のほとんどの農家は作業する畑の8割程度が2ha以上。このことから、ロボットトラクターを導入するメリットは三浦農場と同じようにあるとみている。

しかし、現時点ではロボットトラクターはそれほど普及していないようだ。その理由について三浦さんは、「農家がおっかなびっくりなのかな。あとは協調作業のメリットがうまく伝わっていないんじゃないか」と話す。

十勝地方でも離農が進んで、残る農家の経営面積が広がってきていると聞いている。三浦さんが言うようにメリットが認識されれば、遠からぬうちにロボットトラクターの導入が進むかもしれない。


三浦農場 | スマート農業を実践し北海道の未来をつくる農場
https://miura-farm.com/

【事例紹介】スマート農業の実践事例
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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。