300haの作付を1フライトで確認! 固定翼ドローン「OPTiM Hawk」目視外自動飛行実験レポート
音もなく離陸した固定翼ドローン「OPTiM Hawk」は、佐賀県白石町の300haに及ぶ田畑の圃場上空を自動飛行しながら、作付状況確認のための画像を撮影していく──
8月19日の12:00〜13:00にかけて開催された、株式会社オプティムによる固定翼ドローンでの目視外飛行の実証実験は、約40分間のフライトを終えて、トラブルなく終了した。
この実証実験の模様は、YouTubeで生配信されており、アーカイブとして誰でも見ることができる。今回はその固定翼ドローン「OPTiM Hawk」に注目して、実証実験の模様をご紹介したい。
もともとオプティムは、今回飛行実験を行った佐賀県白石町のほか、北海道帯広市などでも、この固定翼ドローンを使用した広範囲にわたる圃場の撮影などを行ってきた実績がある。今回使用した「OPTiM Hawk」は、初代のグライダー型のものから進化を遂げ、尾翼が大型化し、安定度や航続距離を伸ばした第2世代だ。
固定翼ドローンの利点としては、マルチコプターと呼ばれる一般的なドローンと比較して飛行効率が非常に高く、通常のドローンの半分のバッテリーで1時間の飛行が可能な点が挙げられる。
これは、マルチコプターと比べてモーターが少なく、上昇してからは風の力を利用して飛行できることが大きい。今回の実験の冒頭では、上空でもしモーターがストップしてしまったら、と仮定した実験も披露されたが、飛行中であれば仮にモーターが故障してもそのまま安定して飛行できるという。
これらの特徴により、マルチコプターでは1フライトあたり約30haのところ、「OPTiM Hawk」の航続距離は10倍の約300haとなっている。
今回の実証実験の大きな目的の一つが、「目視外飛行」の検証だ。
通常は、補助者がパイロットとともに飛行状況を監視する必要があるが、「OPTiM Hawk」では尾翼の下にカメラを搭載しており、パイロットはこの画像をリアルタイムに確認しながら機体を監視する。
目視外の地域を飛行させるときには、目視できる範囲で飛行状態をチェックしたのち、自動飛行にてフライトプランに沿った飛行を続けることになる。
高度は航空法の制限以下の140m前後で、制御のための電波が届く約5km先まで直線的に飛行しターンすることを繰り返して300haを撮影していった。飛行速度は時速50km程度だ。
飛行させるためのスタッフとしては、離着陸や緊急時に対応するためのパイロット、機体の状態を監視する副操縦士、トラブルが発生した際に対応するスタッフなどが必要となる。
ただし、飛行中はトラブルさえなければ特にすることはない。フライトプランに沿って問題なく飛行できているかをチェックするだけで、コントローラーにも触れてさえいなかった。
また、補助者なし目視外飛行をさせる際には気象センサーも必須。風向や風速などの上空の状況は常にチェックしており、なにかあればすぐに飛行を中断させなければならない。それ以外にも、PC上ではドローンの現在位置、尾翼カメラからの映像もチェックできるので、安全面にも抜かりがなかった。
今回初めて「OPTiM Hawk」の飛行の様子を見た印象としては、ルートをずれるようなこともなく、非常に安定しており完成度が高いという印象だった。しかしそれは、これまで3年間にわたり、技術開発や実証調査などを行ってきたからこそのものだ。
現地を視察した、農林水産省九州農政局 佐賀県拠点地方参事官の茂木正史氏は、「非常に安定して飛行していました。バックでも(スタッフによって)コントロールされていますし、肉眼で見えないところを飛んでいますが、ここにいながらにして場所や飛行状況を映像で監視できているのは非常にすごい。行政や農業者にも活用してもらえるのではないかと思います」とコメント。
また、行政側の人員の問題、7月の大雨のような自然災害が起きた場合の対策などについても触れ、「いま行政もマンパワーが少なく、作付け状況調査などに人が割けなくなっています。こういうもので定点観測ができれば、有事の際にもすぐに対応できる。利用の可能性は非常に高いと感じました」と語っていた。
撮影したデータはこのあとPCに取り込み、1枚の画像につなぎ合わせた「オルソー画像」を作成。その画像をオプティムがAIにより解析し、作付状況を確認していくことになる。
すでに白石町全体の作付の確認に関しては、昨年の実績として、町内7315haを3日間で撮影し、作付確認にかかる時間を約118延べ時間程度からわずか5延べ時間まで短縮させることに成功している。
固定翼ドローンはまだまだ身近な存在とは言えないが、今回のように自治体レベルでの広範囲にわたる取り組みや、大規模農業法人などにとって、人的、時間的な労力軽減にとって大きな味方になってくれそうだ。
※本事業で紹介した「OPTiM Hawk」に関するお問い合わせはこちら
株式会社オプティム ビジネス統轄本部農業事業部 大澤淳
Mail: jun.osawa@optim.co.jp
固定翼ドローン「OPTiM Hawk」Webサイト
https://www.optim.co.jp/agriculture/services/robotics/
8月19日の12:00〜13:00にかけて開催された、株式会社オプティムによる固定翼ドローンでの目視外飛行の実証実験は、約40分間のフライトを終えて、トラブルなく終了した。
この実証実験の模様は、YouTubeで生配信されており、アーカイブとして誰でも見ることができる。今回はその固定翼ドローン「OPTiM Hawk」に注目して、実証実験の模様をご紹介したい。
1フライトで約300haを撮影可能
もともとオプティムは、今回飛行実験を行った佐賀県白石町のほか、北海道帯広市などでも、この固定翼ドローンを使用した広範囲にわたる圃場の撮影などを行ってきた実績がある。今回使用した「OPTiM Hawk」は、初代のグライダー型のものから進化を遂げ、尾翼が大型化し、安定度や航続距離を伸ばした第2世代だ。
固定翼ドローンの利点としては、マルチコプターと呼ばれる一般的なドローンと比較して飛行効率が非常に高く、通常のドローンの半分のバッテリーで1時間の飛行が可能な点が挙げられる。
これは、マルチコプターと比べてモーターが少なく、上昇してからは風の力を利用して飛行できることが大きい。今回の実験の冒頭では、上空でもしモーターがストップしてしまったら、と仮定した実験も披露されたが、飛行中であれば仮にモーターが故障してもそのまま安定して飛行できるという。
これらの特徴により、マルチコプターでは1フライトあたり約30haのところ、「OPTiM Hawk」の航続距離は10倍の約300haとなっている。
安全な目視外飛行を行うための装備
今回の実証実験の大きな目的の一つが、「目視外飛行」の検証だ。
通常は、補助者がパイロットとともに飛行状況を監視する必要があるが、「OPTiM Hawk」では尾翼の下にカメラを搭載しており、パイロットはこの画像をリアルタイムに確認しながら機体を監視する。
目視外の地域を飛行させるときには、目視できる範囲で飛行状態をチェックしたのち、自動飛行にてフライトプランに沿った飛行を続けることになる。
高度は航空法の制限以下の140m前後で、制御のための電波が届く約5km先まで直線的に飛行しターンすることを繰り返して300haを撮影していった。飛行速度は時速50km程度だ。
飛行させるためのスタッフとしては、離着陸や緊急時に対応するためのパイロット、機体の状態を監視する副操縦士、トラブルが発生した際に対応するスタッフなどが必要となる。
ただし、飛行中はトラブルさえなければ特にすることはない。フライトプランに沿って問題なく飛行できているかをチェックするだけで、コントローラーにも触れてさえいなかった。
また、補助者なし目視外飛行をさせる際には気象センサーも必須。風向や風速などの上空の状況は常にチェックしており、なにかあればすぐに飛行を中断させなければならない。それ以外にも、PC上ではドローンの現在位置、尾翼カメラからの映像もチェックできるので、安全面にも抜かりがなかった。
作付確認のマンパワー不足解決に期待
今回初めて「OPTiM Hawk」の飛行の様子を見た印象としては、ルートをずれるようなこともなく、非常に安定しており完成度が高いという印象だった。しかしそれは、これまで3年間にわたり、技術開発や実証調査などを行ってきたからこそのものだ。
現地を視察した、農林水産省九州農政局 佐賀県拠点地方参事官の茂木正史氏は、「非常に安定して飛行していました。バックでも(スタッフによって)コントロールされていますし、肉眼で見えないところを飛んでいますが、ここにいながらにして場所や飛行状況を映像で監視できているのは非常にすごい。行政や農業者にも活用してもらえるのではないかと思います」とコメント。
また、行政側の人員の問題、7月の大雨のような自然災害が起きた場合の対策などについても触れ、「いま行政もマンパワーが少なく、作付け状況調査などに人が割けなくなっています。こういうもので定点観測ができれば、有事の際にもすぐに対応できる。利用の可能性は非常に高いと感じました」と語っていた。
撮影したデータはこのあとPCに取り込み、1枚の画像につなぎ合わせた「オルソー画像」を作成。その画像をオプティムがAIにより解析し、作付状況を確認していくことになる。
すでに白石町全体の作付の確認に関しては、昨年の実績として、町内7315haを3日間で撮影し、作付確認にかかる時間を約118延べ時間程度からわずか5延べ時間まで短縮させることに成功している。
固定翼ドローンはまだまだ身近な存在とは言えないが、今回のように自治体レベルでの広範囲にわたる取り組みや、大規模農業法人などにとって、人的、時間的な労力軽減にとって大きな味方になってくれそうだ。
※本事業で紹介した「OPTiM Hawk」に関するお問い合わせはこちら
株式会社オプティム ビジネス統轄本部農業事業部 大澤淳
Mail: jun.osawa@optim.co.jp
固定翼ドローン「OPTiM Hawk」Webサイト
https://www.optim.co.jp/agriculture/services/robotics/
【事例紹介】スマート農業の実践事例
- きゅうりの国内最多反収を達成し、6年目を迎えた「ゆめファーム全農SAGA」が次に目指すこと
- 豪雨を乗り越えてキュウリの反収50トンを実現した、高軒高ハウスでの養液栽培メソッド
- 2024年度に市販化予定のJA阿蘇「いちごの選果ロボット」はどこまできたか
- リーフレタスを露地栽培比で80倍生産できる「ガラス温室」の革命 〜舞台ファーム(仙台市)
- ロボトラでの「協調作業」提案者の思いと大規模化に必要なこと 〜北海道・三浦農場
- 大規模畑作の経営者が“アナログなマニュアル化”を進める理由 〜北海道・三浦農場
- 女性だけのドローンチームが農薬散布を担う! 新潟県新発田市の「スマート米」生産者による新たな取り組み
- 野菜の「美味しさ」につなげるためのスマート農業の取り組み〜中池農園(前編)
- ドローン自動飛行&播種で打込条播! アシスト二十一&オプティムが挑む新栽培技術の現状
- 22haの果樹経営で「最も機械化を果たした」青森県のリンゴ農家(前編)
- 優れた農業経営者は産地に何をもたらすのか〜固形培地は規模拡大への備え(後編)
- 優れた農業経営者は産地に何をもたらすのか〜キュウリで反収44tを達成した佐賀の脱サラ農家(前編)
- 耕地面積の7割が中山間地の大分県で、なぜスマート農業がアツいのか
- 農業法人で穀粒判別器を導入した理由 〜新型は政府備蓄米で利あり
- 大分高専と組んで「芽かきロボット」を開発する菊農家
- スマホひとつで気孔の開度を見える化し灌水に活用する「Happy Quality」の技術
- 目視外補助者なしでのドローン飛行の現実度【オプティムの飛行実証事例レポート】
- 「自動飛行ドローン直播技術」をわずか2年で開発できた理由【石川県×オプティムの取り組み 後編】
- 自動飛行ドローンによる水稲直播 × AI解析ピンポイント農薬散布に世界で初めて成功!【石川県×オプティムの取り組み 前編】
- 300haの作付を1フライトで確認! 固定翼ドローン「OPTiM Hawk」目視外自動飛行実験レポート
- スマート米 玄米でクラフトビールを醸造!? 青森でのスマート農業×地産都消の取り組み
- 宇宙から稲の生育を監視し、可変施肥で最高品質の「山田錦」を目指す
- 農業関係者がスマート農業事例を交流するFacebookコミュニティ「明るく楽しく農業ICTを始めよう! スマート農業 事例集」とは?
- 日本のフェノミクス研究は「露地栽培」分野で【ゲノム編集研究の発展とフェノミクス(後編)】
- 農業における「フェノミクス」の意義とは? ゲノム編集研究の発展とフェノミクス(前編)
- 糖度と大きさのバランスを制御して“トマトの新基準”を打ち立てたい──AIでつくる高糖度トマト(後編)
- 「経験と勘」に頼らない安定的なトマトの生産を目指して──AIでつくる高糖度トマト(前編)
- 【スマート農業×ドローン】2機同時の自動航行で短時間で農薬散布──DJI×シンジェンタ実証実験レポート
- 画像認識とAIで柑橘の腐敗を選別、防止──愛媛県のスマート農業事例
- 農業ICTやロボットを取り入れるべき農家の規模とは──有限会社フクハラファーム
- ICTで大規模稲作経営の作業時間&効率を改善──有限会社フクハラファーム
- 農家のスマート農業導入を支援する全国組織を──株式会社ヤマザキライス(後編)
- 農家が求める水田センサーを農家自ら企画──株式会社ヤマザキライス(前編)
- inahoのアスパラガス自動収穫ロボットの仕組みとは?──inaho株式会社(前編)
- シニアでも使える農業IoTを実現するためには?──山梨市アグリイノベーションLabの取り組み
- 農業参入企業が共通課題を解決する、北杜市農業企業コンソーシアムの実践<下>
- 中玉トマトで国内トップの反収を上げる最先端園芸施設──北杜市農業企業コンソーシアムの実践<上>
- 農家がグーグルのAIエンジン「Tensor Flow」でキュウリの自動選果を実現
SHARE