耕地面積の7割が中山間地の大分県で、なぜスマート農業がアツいのか
スマート農業といえば、北海道のような広々とした大地を大型農機が無人で走っているもの。
こんなイメージがあるかもしれないが、本稿で取り上げる大分県は耕地面積の実に7割が中山間地に位置する。スマート農業を推し進めていて、すでに普及段階に入った技術も少なくない。全国だと耕地に占める中山間地の割合は4割ほどで、大分は全国平均より山がちで起伏が多い。
中山間地を擁するからこそ、スマート農業に期待をかけているという。
「県内は中山間地が多く、無人トラクターなどより、地域の実情に応じた技術の導入を進めている」
大分県地域農業振興課の大隈恒さんはこう解説する。
「大分県で注目しているのは、リモコン式草刈り機。2019年から実証しており、45度までの傾斜であれば刈れる製品がある。価格は高いけれども、費用対効果が出る面積を割り出せるので、来年から普及を進めていく段階に入る」(大隈さん)
リモコン式草刈り機は、機種によっては傾斜がきつくなると斜面をずり落ち、最悪、下の田んぼにはまってしまうこともある。
山間になるほど、田畑の畦畔は広くなり、傾斜がきつくなる。多くの田畑を耕作するほど、付随する畦畔が増える。地権者が草刈りといった管理を担ってくれない限り、耕作者は除草作業にかなりの手間をとられることになってしまう。
畦畔の除草は、規模拡大する際にぶつかる壁なのだ。これまで人が刈払機で刈るしかなかったところを、大分県はロボットに担わせようと考えている。
すでに普及段階に入っている技術には、「アグリノート」「KSAS」といった圃場管理システムや、農機のGPSを使った直進アシストや自動操舵の技術、ドローンによる薬剤散布、畜産農家向けの牛の行動監視システムなどがある。
「スマート農業技術はさまざまあるけれども、水田、園芸、畜産といった分野ごとに推進方向を定めている。それぞれの経営体にあった技術を選択し、効果が分からないものについては実証し、効果が確認できたものについては県の事業などを活用して普及していく」(同)
「2015年農林業センサスデータでは、60歳以上は84%を占めていて、今後農業者のリタイアが進むと、残りの少ない担い手で農地を守っていかなければならない」(大隈さん)
すでに農地の集積は始まっている。2005年に5ha以上の経営体が持つ農地面積の合計は全体の19%(推計値)だったが、2015年は33%(同)まで増えた。
畜産も、肉用牛をみると、1戸当たりの飼養頭数が増えている。集積が進んで大規模になったとき、規模が小さかったときほど細やかな管理ができなくなるといったことも起こりがちだ。大規模になって収益が落ちるということも、往々にしてある。
「規模拡大が進む中で、県としても省力化や管理技術の導入などに対応しなければならない」(大隈さん)
県はスマート農業技術を導入する経営体数の目標を掲げていて、2017年度に130だったものを、2021年度に420まで増やすとしている。60歳以下の認定農業者(法人含む)の5人に1人の割合で、技術を導入する計算だ。
農林水産の担当課だけがスマート農業を進めているわけではない。県にはIoTやAIといった最新技術を使い、地域課題の解決や新ビジネスの創出を目指す「大分県IoT推進ラボ」が設置されている。
「地域課題をピックアップして、県内の先端技術やIoTをかけ合わせたり、システム開発をしたりして、地域課題を解決するようなプロジェクトを創出してもらう。そうすることで、県内産業をより高めていく支援をしている」
県先端技術挑戦室の小倉良介さんはこう話す。県内企業の先端的なプロジェクトの運営や製品開発を支援しようと、2017年度から計57件のプロジェクトを認定してきた。
認定を受けたもののうち、優れた取り組みに対しては資金面での支援もする。認定プロジェクトのその後の進展を県が伴走しながら支え、社会実装されるような製品、サービスを生み出すのが狙いだ。同室の室長を務める佐藤元彦さんは言う。
「県で課題解決の仕組みを作り、ニーズとシーズ(製品化や事業化の可能性のある技術やノウハウを指す)をマッチングさせて解決していこうとしている」
農林水産分野は、認定された57件のうち14件を占め、分野別でみると最も多い。ピーマンの自動収穫ロボットの開発、ワイン用ブドウ栽培でのデータ分析などが認定されている。地域の実情を反映した先端的な挑戦が、今後どうなっていくのか。注目される。
こんなイメージがあるかもしれないが、本稿で取り上げる大分県は耕地面積の実に7割が中山間地に位置する。スマート農業を推し進めていて、すでに普及段階に入った技術も少なくない。全国だと耕地に占める中山間地の割合は4割ほどで、大分は全国平均より山がちで起伏が多い。
中山間地を擁するからこそ、スマート農業に期待をかけているという。
中山間地に合ったこじんまりした技術を導入
「県内は中山間地が多く、無人トラクターなどより、地域の実情に応じた技術の導入を進めている」
大分県地域農業振興課の大隈恒さんはこう解説する。
「大分県で注目しているのは、リモコン式草刈り機。2019年から実証しており、45度までの傾斜であれば刈れる製品がある。価格は高いけれども、費用対効果が出る面積を割り出せるので、来年から普及を進めていく段階に入る」(大隈さん)
リモコン式草刈り機は、機種によっては傾斜がきつくなると斜面をずり落ち、最悪、下の田んぼにはまってしまうこともある。
山間になるほど、田畑の畦畔は広くなり、傾斜がきつくなる。多くの田畑を耕作するほど、付随する畦畔が増える。地権者が草刈りといった管理を担ってくれない限り、耕作者は除草作業にかなりの手間をとられることになってしまう。
畦畔の除草は、規模拡大する際にぶつかる壁なのだ。これまで人が刈払機で刈るしかなかったところを、大分県はロボットに担わせようと考えている。
すでに普及段階に入っている技術には、「アグリノート」「KSAS」といった圃場管理システムや、農機のGPSを使った直進アシストや自動操舵の技術、ドローンによる薬剤散布、畜産農家向けの牛の行動監視システムなどがある。
「スマート農業技術はさまざまあるけれども、水田、園芸、畜産といった分野ごとに推進方向を定めている。それぞれの経営体にあった技術を選択し、効果が分からないものについては実証し、効果が確認できたものについては県の事業などを活用して普及していく」(同)
進む規模拡大に対応
大分県はなぜスマート農業の推進に力を入れるのか。それは、今後20年ほどで農家の構成が様変わりするとみられているためである。2015年の農林業センサスで、大分県の農業就業人口は70歳以上が54%を占めた。「2015年農林業センサスデータでは、60歳以上は84%を占めていて、今後農業者のリタイアが進むと、残りの少ない担い手で農地を守っていかなければならない」(大隈さん)
すでに農地の集積は始まっている。2005年に5ha以上の経営体が持つ農地面積の合計は全体の19%(推計値)だったが、2015年は33%(同)まで増えた。
畜産も、肉用牛をみると、1戸当たりの飼養頭数が増えている。集積が進んで大規模になったとき、規模が小さかったときほど細やかな管理ができなくなるといったことも起こりがちだ。大規模になって収益が落ちるということも、往々にしてある。
「規模拡大が進む中で、県としても省力化や管理技術の導入などに対応しなければならない」(大隈さん)
県はスマート農業技術を導入する経営体数の目標を掲げていて、2017年度に130だったものを、2021年度に420まで増やすとしている。60歳以下の認定農業者(法人含む)の5人に1人の割合で、技術を導入する計算だ。
地域発の課題解決型IoT
農林水産の担当課だけがスマート農業を進めているわけではない。県にはIoTやAIといった最新技術を使い、地域課題の解決や新ビジネスの創出を目指す「大分県IoT推進ラボ」が設置されている。
「地域課題をピックアップして、県内の先端技術やIoTをかけ合わせたり、システム開発をしたりして、地域課題を解決するようなプロジェクトを創出してもらう。そうすることで、県内産業をより高めていく支援をしている」
県先端技術挑戦室の小倉良介さんはこう話す。県内企業の先端的なプロジェクトの運営や製品開発を支援しようと、2017年度から計57件のプロジェクトを認定してきた。
認定を受けたもののうち、優れた取り組みに対しては資金面での支援もする。認定プロジェクトのその後の進展を県が伴走しながら支え、社会実装されるような製品、サービスを生み出すのが狙いだ。同室の室長を務める佐藤元彦さんは言う。
「県で課題解決の仕組みを作り、ニーズとシーズ(製品化や事業化の可能性のある技術やノウハウを指す)をマッチングさせて解決していこうとしている」
農林水産分野は、認定された57件のうち14件を占め、分野別でみると最も多い。ピーマンの自動収穫ロボットの開発、ワイン用ブドウ栽培でのデータ分析などが認定されている。地域の実情を反映した先端的な挑戦が、今後どうなっていくのか。注目される。
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