小麦の品質評価基準はなぜ変わるのか

いまや日本人が主食の中で最も食べるようになったパン。そのパン用小麦を増産してもらうべく、農家に支払う交付金を算定する品質評価の基準が2020年産から見直されるという。

背景に何があるのか。



国産で少ない強力品種

小麦の食料自給率は毎年10%ほどとさみしい状況にある。この状況を打開するには、まずは消費量の多いパン用品種を増産したいところ。

ただ、国産小麦の年間流通量80トンのうち11トンと、全体の14%に過ぎない。パン用小麦は需要があるのになぜ供給は少ないのか。

小麦はグルテンの量に応じて強力粉、中力粉、薄力粉に分けられる。このうち国産で多いのはうどんやお好み焼きなどに向く中力品種。パンや中華麺に向く強力品種は春に種をまき、盆に刈り取る春まき小麦ばかり。一般に小麦は湿度に弱いため、蒸し暑い夏がある日本では栽培に適さないとされる。パン用小麦の自給率が低い理由はここにある。

出典:麦をめぐる最近の動向について|農林水産省



基準見直しで増産が期待される超強力品種

この状況に風穴を開けたのが農研機構・北海道農業研究センターが2007年に開発した「ゆめちから」という品種。北海道では秋に種をまけば、蒸し暑くなる前の7月に刈り取れることから、一気に広がり、品種別の作付面積は2017年産で1.4万haと6位につけている。

「ゆめちから」のもう一つの特徴は、「強力」以上の「超強力」であること。国産で多い中力品種の粉と混ぜて使うことで、中力粉の生地の弱さを改善し、パンに利用することができる。

それならもっと増産したいところだが、ひとつ課題があった。収量を高めるために肥料を多く撒くと、品質評価の基準の一つであり、グルテンの生成に大いに関係するたんぱく値の許容値(10.0~15.5%)を超えてしまう恐れがあること。

ただ、この許容値は超強力品種の誕生を想定していない中(平成18年。2006年)でつくられたもの。中力粉とブレンドして使うことを踏まえれば、許容値をもう少し上げてもいいはず。そこで、超強力品種に限って、許容値の上限を現状の15.5%から18%に引き上げることを決めた。

出典:経営所得安定対策実施要綱 麦の品質区分と品質評価基準 | 農林水産省

超強力品種は「ゆめちから」以外にも誕生しており、2020年産からこの見直しが適用されることで、農家は増産できるほか、パンや中華麺の製造業者は国産小麦を入手しやすくなることが期待できる。

【コラム】窪田新之助のスマート農業コラム
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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。