醸造用ブドウの品質向上にスマート農業を活かす「信州ワインバレー構想」〜長野県高山村の例
ワインによる地域産業の振興を目指す「信州ワインバレー構想」が長野県で広がっている。大きな課題は醸造用ブドウを高品質かつ安定して生産すること。ワインバレーにおけるワインには県産の醸造用ブドウを使うことが前提となっているため、品質が劣化したり不作となったりすれば、醸造にそのまま影響するからだ。県内でいくつものワインバレ―構想が動くなか、高山村はスマート農業の力を借りて、この課題を乗り越えようとしている。
高山村がワインバレ―構想に乗り出した背景には、基幹産業である農業への危機感がある。2015年時点で全世帯数2,291のうち農家戸数は747戸(兼業642戸、専業105戸)なので、農家の割合は33%を占める。ただ、全国の農山村地帯と同じように、その従事者は高齢化とともに減りつつある。
そこで高山村が注目したのがブドウであった。古くからの特産品であるリンゴと比べて、ブドウは省力的に栽培できるので、高齢者でも長く取り組める。おまけにワイン用ブドウは付加価値を持たせられる。
ただし、ブドウづくりを広げていく中で障壁となるものが存在する。
栽培技術の習得と、その技術の継承である。農業従事者の高齢化とブドウの生産者が少ない高山村で、いかにして栽培技術を高め、定着させるのか。
フィールドサーバは農業ITベンチャーのベジタリア株式会社のグループに属する株式会社イーラボ・エクスペリエンスが開発した。オプションのセンサーで計測するのは気温と湿度、日射量、葉の濡れ具合など。収集したデータはパソコンやタブレットなどで確認できる。スマートフォンで日々の農作業を記録するアプリケーションサービス「アグリノート」でも閲覧可能だ。
同じくベジタリアグループのウォーターセル株式会社が開発したこのクラウド型の農業生産管理ツールでは、グーグルマップで農地ごとの作業を記録できる。農作業のマネージャーは誰がどの農地でどんな作業をするかをコンピューターで事前に入力しておけば、各従業員はスマートフォンを見るだけで一連の情報も把握しておける。地図上で現在地と作業現場を確認できるので、誤って他人の農地で農作業をすることだって防げる。
では、収集した一連のデータはどう使いこなすのか。
ひとつには病気がいつ発生するかを予測するのに使える。たとえば高湿で気温が20~24度の日が続けば、ブドウにとって厄介な病気の一つである「べと病」が発生しやすくなる。気温や湿度のデータを随時取っていれば、未然に殺菌剤をまいて予防できる。このほか収穫の適期だって事前に把握可能だ。
ただし、農家はデータを見ただけでは、具体的にどう対処していいか分からない場合が多い。だから作物にとって大事になりうる事態を回避できず、結果的に病気や虫による被害を招く。
質問に対する回答の根拠となるのは、国や都道府県の農業試験場は農作物の栽培に関してため込んだ膨大な知見。もう一つは気象に関する日々のデータである。センサーが随時収集する気象データと過去の知見を照らし合わせれば、「いつ、何が起きるか」「いつ、何をすればいいのか」などが自動的に導き出せる。
日本ではワインの原料として主に生食用ブドウを使ってきた関係で、醸造用ブドウの知見は少ない。そこで高山村では高低差に応じて気象観測機器を6台設置し、気象データと収穫物の出来をみながら、標高に応じてどの品種が適しているかも調べている。
信州ワインバレー構想の特徴は、ワインが地域の経済を盛り上げるうえで波及効果を持っている点だ。
高山村ではワインづくりが活況を呈すとともに、関連商品ともいえるチーズやハム、ピザなどをつくり出す会員が出てきた。それぞれが店を持ち、個別に売り始めている。おまけに村には8つの出湯があり、旅館もある。こうした旧来の観光資源とワインを中心とした食産業が結びつくことで、相乗効果をなしていくことが期待される。
<参考URL>
信州ワインバレー
フィールドサーバ
アグリノート
高山村がワインバレ―構想に乗り出した背景には、基幹産業である農業への危機感がある。2015年時点で全世帯数2,291のうち農家戸数は747戸(兼業642戸、専業105戸)なので、農家の割合は33%を占める。ただ、全国の農山村地帯と同じように、その従事者は高齢化とともに減りつつある。
そこで高山村が注目したのがブドウであった。古くからの特産品であるリンゴと比べて、ブドウは省力的に栽培できるので、高齢者でも長く取り組める。おまけにワイン用ブドウは付加価値を持たせられる。
ただし、ブドウづくりを広げていく中で障壁となるものが存在する。
栽培技術の習得と、その技術の継承である。農業従事者の高齢化とブドウの生産者が少ない高山村で、いかにして栽培技術を高め、定着させるのか。
病気の発生を予見して未然に防除
高山村は、ブドウづくりのベテランを講師とした勉強会を開くなどの「経験と勘」だけではなく、「技術とテクノロジー」に頼ることにした。さまざまなデータに基づいて学びながら、ブドウの品質を向上させる。同時に病害虫の予防や防除、品種に応じた栽培適地の選定も視野に入れている。これらの目的を達成するために導入したのが、センシング機能と通信機能を一体化したセンサーの「フィールドサーバ」。フィールドサーバは農業ITベンチャーのベジタリア株式会社のグループに属する株式会社イーラボ・エクスペリエンスが開発した。オプションのセンサーで計測するのは気温と湿度、日射量、葉の濡れ具合など。収集したデータはパソコンやタブレットなどで確認できる。スマートフォンで日々の農作業を記録するアプリケーションサービス「アグリノート」でも閲覧可能だ。
同じくベジタリアグループのウォーターセル株式会社が開発したこのクラウド型の農業生産管理ツールでは、グーグルマップで農地ごとの作業を記録できる。農作業のマネージャーは誰がどの農地でどんな作業をするかをコンピューターで事前に入力しておけば、各従業員はスマートフォンを見るだけで一連の情報も把握しておける。地図上で現在地と作業現場を確認できるので、誤って他人の農地で農作業をすることだって防げる。
では、収集した一連のデータはどう使いこなすのか。
ひとつには病気がいつ発生するかを予測するのに使える。たとえば高湿で気温が20~24度の日が続けば、ブドウにとって厄介な病気の一つである「べと病」が発生しやすくなる。気温や湿度のデータを随時取っていれば、未然に殺菌剤をまいて予防できる。このほか収穫の適期だって事前に把握可能だ。
ただし、農家はデータを見ただけでは、具体的にどう対処していいか分からない場合が多い。だから作物にとって大事になりうる事態を回避できず、結果的に病気や虫による被害を招く。
AIを活用したチャットボットの自動音声で問題解決
そこでベジタリアは人工知能(AI)を活用した自動チャットサービスを提供している。利用者はFacebook MessengerやLINEなどで、ベジタリアのサーバー上の人工会話プログラム「Bot」と対話する。たとえばBotに「べと病に感染しやすくなっているか?」と質問すれば、「感染しやすい」や「感染しにくい」といったように回答してくれる。あるいは感染しやくなったら、自動的にアラートのメッセージを送ってくれる。この場合は殺菌剤をまき、未然に防げばいい。質問に対する回答の根拠となるのは、国や都道府県の農業試験場は農作物の栽培に関してため込んだ膨大な知見。もう一つは気象に関する日々のデータである。センサーが随時収集する気象データと過去の知見を照らし合わせれば、「いつ、何が起きるか」「いつ、何をすればいいのか」などが自動的に導き出せる。
日本ではワインの原料として主に生食用ブドウを使ってきた関係で、醸造用ブドウの知見は少ない。そこで高山村では高低差に応じて気象観測機器を6台設置し、気象データと収穫物の出来をみながら、標高に応じてどの品種が適しているかも調べている。
ワインから広がる食産業の光明
信州ワインバレー構想の特徴は、ワインが地域の経済を盛り上げるうえで波及効果を持っている点だ。
高山村ではワインづくりが活況を呈すとともに、関連商品ともいえるチーズやハム、ピザなどをつくり出す会員が出てきた。それぞれが店を持ち、個別に売り始めている。おまけに村には8つの出湯があり、旅館もある。こうした旧来の観光資源とワインを中心とした食産業が結びつくことで、相乗効果をなしていくことが期待される。
<参考URL>
信州ワインバレー
フィールドサーバ
アグリノート
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