秋田県がスマート農業で実現する、コメから小菊への転換と生産規模拡大(後編)

秋田県は小菊の露地栽培で施肥から耕起、畝立て、播種を同時に行える機械や、移植する機械と同時に「収穫機」の実証を行った。

収穫機を開発したのはみのる産業株式会社(岡山県)。同試験場はこの機械を活用することで、慣行栽培における収穫にかかる時間と比べると41%の削減を実現することに成功した。

前編はこちら。
秋田県がスマート農業で実現する、コメから小菊への転換と生産規模拡大(前編)

後編では、自動化・省力化を目的として実証した切り花の調製ロボットや、鮮度保持資材について紹介したい。

収穫機(写真提供:秋田県)

一斉収穫機による収穫作業の機械化で作業時間は41%減


この収穫機は、2条か4条で畝の端から一斉に収穫することができる。刈り取る高さは9~25cmの幅で調製可能。また、畝幅は120cmまで対応できる。

慣行栽培では、人が圃場を歩きながら鎌などを使って1本ずつ収穫している。このため、収穫機を使うだけで作業時間を41%も減らすことができた。加えてこの機械は、収穫と同時にフラワーネットを回収する機能も付いており、収穫後に必須だった「片付け」の時間がなくせる。

この収穫機を使う場合、電照栽培で開花を調製することが大前提となる。それでも、ごく一部に早く開花してしまう花があるので、それらはあらかじめ摘み取っておく必要がある。そうすることでロスの割合を減らすことができ、実証実験では、計画本数に対してロス率は1%程度と低い値で済んだ。

一方で、いっせいに収穫することで、その後に待っている調製の作業が集中してしまうきらいがある。それを避けるために、「切り花調製ロボット」や冷蔵庫を活用して、省力化や出荷時期を分散化する必要が生じる。


茎と下葉の切断と重量別に仕分けするロボット


現地切り花調整ロボット(写真提供:秋田県)
切り花調整ロボット作業(写真提供:秋田県)

「切り花調製ロボット」は有限会社今村機械(佐賀県佐賀市)が販売している。花を一本ずつ機器の上に乗せていくだけで、出荷の規格に応じて茎と下葉を切断。さらに、重量別に分けて10本ずつを結束する。結束した花束は収納部に輸送されるので、箱詰めの作業が楽になる。

慣行栽培では、人が目視と感覚で規格別に仕分けた後、茎と下刃の切断や結束も人が行う。これらは、菊の生産に関する作業で最も時間がかかると言っていい。だが「切り花調製ロボット」を活用することで、作業時間を62%も減らすことができた。

さらに、これまで規格別の仕分けは「感覚」で行ってきたが、重量に基づいて行えるので「揃いが良くなる効果もある」という。


鮮度保持の資材で出荷期の分散へ


前編で紹介したとおり、今回の実証実験は秋田県が実施している「メガ団地等大規模園芸拠点育成事業」に基づいている。同事業は、原則的に販売額が1億円以上という大規模な「園芸メガ団地」を育成することを目的としている。

小菊の生産でそれだけの団地をつくるにあたり、「出荷作業の分散化」と「需要期に合わせた出荷量の増加」を無視できないことは言うまでもない。そこで、今回の実証プロジェクトでは鮮度を保持する技術についても検証した。

具体的には、それぞれ鮮度保持の機能がある液状のSTS剤「K-20C」と被覆資材「フレッシュライナー」を試した。8月出荷の作型で育てた小菊に「K-20C」を一晩吸わせた後、フレッシュライナーで被覆し、冷蔵状態(5度)で2週間保管した。

花き卸売業者に慣行の保管方法と比べ、鮮度に違いがあるか見てもらったところ、しおれや黄化といった品質の低下が少ないといった評価を得た。ただし、資材費が余計にかかることから、秋田県農業試験場は「使用するのは早期に開花した場合のみに制限する」と説明している。

また、収穫後の「鮮度」を重視する実需者もいることから、「導入に向けては市場や実需者との情報共有が欠かせない」としている。


50アールの経営では所得率が23%アップする試算


自動直進うね内施用機(写真提供:秋田県)

機械化一貫体系の導入で、10アール当たりの総労働時間は33%減少することができた。さらに、電照栽培の導入で需要期の出荷率は96%にまで高められた。

一連の技術を導入した際の経営評価を行った。機械やロボットを導入するにもスケールメリットが必要であることから、経営面積は50アールとして試算。結果、小菊の所得率は23%上がる見込みとなった。

これだけの結果を得られたのは、
  • 機械導入によって作業時間が削減されて雇用労賃が減ったこと
  • 需要期の出荷量が増加したこと
が効いている。なお、この試算の元となるデータは、実証プロジェクトの現場を提供した園芸メガ団地共同利用組合(男鹿市)の実績からだ。


実施した組合間で機械の共同利用を進める計画も


秋田県で菊の生産が盛んな男鹿・潟上地区では、先ほど紹介した県の「園芸メガ団地」に採択され、その団地内では露地5ヘクタールと施設20棟(70アール)で菊が栽培されている。

実施主体は、園芸メガ団地共同利用組合。組合を構成するのは、新規参入者を含む9人で、平均年齢は36歳である。同組合は今回の実証プロジェクトにも参加した。

県農業試験場によると、同組合がこれまで個別に実施してきた収穫や選別・調製などの作業は、今回の成果を受けて共同で利用することも検討していくという。選別と調製を一括して行う施設を建て、同組合のメンバーだけでなく地区のほかの農家の分も請け負うことを視野に入れている。

一方、秋田県としては今後、一連の技術を導入できる経営モデルを示しながら、普及を進める予定だ。


【コラム】窪田新之助のスマート農業コラム
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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。